行政とともに地域猫活動を進めて10年。地域の理解を得ながら、猫に起因するトラブルを減らし、人と猫が共生できる街づくりを目指している団体が、東京都内にある。

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練馬区のボランティアとして活動

 地域猫対策の先進地として注目されている東京都練馬区。ここで、行政とともに地域猫活動に取り組んでいるのが特定非営利活動法人「ねりまねこ」だ。理事長は亀山知弘さん(59)、副理事長は妻の嘉代さん(54)が務める。

 地域猫活動とは、野良猫を捕獲し不妊去勢手術をして元の場所に戻す「TNR」をしながら、餌やりのマナーを守り、糞尿対策などを行って、猫に起因するトラブルを減らす活動のこと。外で暮らす猫の寿命は4〜5年といわれており、不妊去勢手術をして繁殖しないようにすれば、数が減っていく。

「ねりまねこ」の亀山嘉代さん

 練馬区は、2009年に「地域猫推進ボランティア」制度をスタート。公募に応募した市民ボランティアは、受け持ちの「管理地域」の野良猫をTNRし、地域猫にはID番号を付けて数を把握する取り組みだ。区によると今年9月時点で、66グループ210人、154の管理地域が登録されているという。ボランティアはほかに、地域猫活動を住民へPRしたり、猫トイレを設置したり、適切な餌やりのアドバイスをしたりもする。

猫1000匹を不妊去勢手術

 亀山さんたちも2010年から「地域猫推進ボランティア」を始め、これまでに区内の約35の管理地域を担当してきた。不妊去勢手術を施した猫は10年で約1000匹。活動を始めた当初に手術をした地域猫たちは、みな天寿をまっとうしたという。「定点ですべて不妊去勢手術をすれば、数を減らすことはできると思う」と話す。

 ねりまねこは、基本的に亀山さん夫婦2人で活動している。街の中でコーディネーターの役割を担っていて、猫の情報を寄せたり餌やりをしたりして亀山さんに協力してくれる市民が約100人いるほか、町会の協力もある。そのネットワークの中で情報をつないでいくと、どこで何が起きているのか見えてくるという。実際、見慣れない猫の目撃情報から、多頭飼育崩壊にたどり着いたこともあった。

野良猫を捕まえるための捕獲器(ねりまねこ提供)

 積極的な保護活動はしていないが、捕獲した猫が体重1キロ未満の場合は保護している。小さすぎて不妊去勢手術はできないが、元の場所に戻せば再び捕獲できず繁殖する恐れがあるからだ。こうした子猫たちは亀山さんの自宅の一室にある「シェルター部屋」で世話をし、不妊去勢手術をしてから譲渡する。これまでに約500匹を保護、譲渡してきたという。

地域社会を巻き込んでいくことが大切

 ねりまねこの最大の特徴は、「行政とつながり、協働しているところ」だと言う。個人やグループで猫を捕獲し、自分でお金を出して不妊去勢手術をする人もいるが、地域の理解を得ることが難しいことも多い。行政と連携することで、活動の信頼が増すし、地域からの理解を得やすくなる。「地域社会全体を巻き込んでいくと、地域猫対策はうまくいくと思う」と話す。

 活躍の場は広がっている。区の登録ボランティアのアドバイザーとして、後進の育成にもあたっている。ほかに全国で地域猫に関する講演を行っているほか、年に1回譲渡会やシンポジウムも開催。さらに行政担当者向けに飼い主のいない猫対策の勉強会も主催していて、毎回、関東一帯から行政担当者40〜50人が参加するという。奄美大島で捕獲されたノネコの譲渡認定団体にもなり、ノネコの譲渡にも取り組んでいる。

 情報発信も得意で、人気ブログ「ねりまねこ・地域猫」のアクセス数は、最盛期で月間60万。今も毎日、猫によるトラブルで悩む全国の人たちから、メールや電話で相談事が寄せられているという。

「世の中は優しさで満ちている」

 1年間にかかる活動費用は、医療費などで計約300万円。保護猫を譲渡する時に、不妊去勢手術代やワクチン代などとして譲渡先から1匹2万円を受け取るほか、オンライン寄付サイト「アニマル・ドネーション」からの寄付や、地域からのカンパ、動物病院に置いた募金箱への募金でまかなっている。

シェルター部屋ですごす猫

 アマゾンの「動物保護施設支援プログラム」からは、これまで約100件の支援が寄せられたという。これまでは遠慮もあり、寄付を募ることに躊躇していたが、このプログラムを利用することで「こういう物が欲しいよって言えるようになりました」と亀山さん。会ったことのない人からも支援が寄せられたといい、「変な遠慮する必要なかったのかなって。世の中が優しさで満ちていることを教えてもらいました」と話す。

 今後は「ボランティアの裾野を広げたい」という。「猫で困ったときに動物愛護団体に丸投げせずに、自分で対策はできるんです。みんな悩んでいるけど、猫ボランティアはやってみれば簡単で、できることは必ずある。自分のことは自分でやろう、をスタンダードにしたいと思っています」

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