大阪府高槻市で懸命に生きている野良の母猫と子猫がいた。もうこれ以上は自力で生きられないと思った保護主さんは3匹を捕獲。母猫は子猫を守ろうと、全力を尽くした。

(末尾に写真特集があります)

 大阪府高槻市の住宅地の一角。子猫を守りながら生きる母猫がいた。TNR活動をしているボランティアが、そのまま酷暑の夏を越すのは難しいと判断し、保護することを決めた。2016年7月のことだった。

親子で寄り添う3匹(左手前が母猫マリア、左奥がラッシー、右がキャンディ)

 捕獲器を設置し、母猫と子猫の捕獲に成功したが、母猫と子猫を別々のキャリーケースに入れたところ、母猫は子猫の身を案じ、必死で子猫のキャリーケースに手を伸ばし、鳴き続けていたという。

母子を引き離せない

 捕獲予定の段階で、SNSで発信。それを見たのが、奈良県でイタリアンレストラン「トラットリア前澤」を営む前澤さん夫妻だった。

「私たちは子供がいなかったので、仕事以外で命を懸けて守りたいものは何か自問自答していました。3匹の猫と出会った頃、それは、なぜだか分からないが、大好きな「猫」だ!!と思ったのです」

 前澤さんは子猫を引き取りたいと申し出た。母猫は不妊手術が終わったらリリースすると聞いていたが、「手術をされて、子猫とも引き離される母猫の心情を思うと、胸が締め付けられる思いがした」という。

とにかくいつも一緒

 ほどなくして保護主さんから「よかったら、母猫と子猫、3匹を引き受けてくれないか」と打診された。前澤さん夫妻は迷うことなく、引き取ることを決めた。

母猫が猫エイズ陽性と判明

 だが、まだ問題があった。母子で譲り受けると答えた後、再び保護主さんから連絡があった。「実は母猫が猫エイズ陽性でした。母猫を迎え入れるかどうかは、前澤さんに任せます」と言うのだった。

 その時、前澤さん宅には2匹の猫がいた。それでも妻の睦さんの気持ちは動かなかった。

「もし母猫を断れば、ひとりぼっちで野に放たれる。エイズを発症したら、孤独の中、苦しんで亡くなってしまう。考えるも何も、私の中に迷いはありませんでした。3匹とも引き取ることにしたんです」

子を守ろうと必死な母猫

 母子3匹を迎えたのは、2016年8月だった。母猫は「マリア」。サバトラの子猫は「ラッシー」、キジトラの子猫は「キャンディ」と名付けた。

少し毛がふんわりしている母猫マリア

 だが、3匹は直前まで野良で暮らしていた猫。以前から猫を飼っていても、戸惑うことが多かった。

「3匹とも警戒してイカ耳。怖がって触れないし、近づくとシャーシャー言うし、爪を立てるし……。大変でした」

 母猫マリアは、恐ろしいほどの気迫で子猫たちを守ろうとした。前澤さんがケージに近づくと、一時も目を離さず凝視した。普通に触らせるまで慣れるのに、1年かかったという。

 家に迎えて3年半。いまでは母猫マリアと前澤さんは完全に意思疎通ができるそうだ。子猫たちもすくすくと成長し、すっかり前澤家の一員になっている。