淡い毛の色の猫

 大きなブドウ園に野良猫がすみ着いた。野良猫はやがて子猫を産んだ。最初に産んだ子猫たちはカラスに襲われたり、エサを食べられなかったりして死んでしまった。2度目に出産した時、放置すると猫が増えてしまいかねないと、ブドウ園は野良猫を保護して譲渡することにした。もらわれた先は、遠く兵庫県だった。

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ブドウ園にいた人懐っこい野良猫

「はなちゃん」は島根県の奥出雲にある大きなブドウ園に住み着いていた野良猫だった。いつ産まれたかは分からないが、それまで3〜4年はブドウ園で暮らしていた。ブドウ園の人たちは、エサを与えるなど世話をするわけではなかったが、野良猫として可愛がり、はなちゃんの様子を見守っていた。

 ブドウ園はレストランなどもある複合施設の中にあった。はなちゃんは野良猫だが、人懐っこく、お店や農機具を入れている納屋にふらっと現れることもあった。冬になるとビニールハウスで暖を取っていたという。

 はなちゃんは、1歳にもならないうちに子猫を出産。だが、育児放棄をしてしまい、子猫たちはカラスに襲われたり、ごはんを食べられなかったりして死んでしまった。はなちゃんはカラスに襲われた子猫を悲し気に見つめていたという。

青い目の猫

再び出産、保護・譲渡先を探す

 やがてはなちゃんは2度目の出産をして、3匹の子猫が産まれた。ビニールハウスの中で出産したのが見つかり、このまま猫が増えるのは問題だということになった。かといって、捨てにいくこともできなかった。子猫を守ろうとカラスと戦ったようで、血だらけになっている姿も目撃されていた。

 ブドウ園のスタッフで、どうしたらいいか話し合った。ひとまず、子猫たちは保護したスタッフと友人が譲渡先を見つけて送り出した。はなちゃんについては、カンパを募って次の発情期までに不妊手術をすることになった。

 その一方で、ブドウ園のフェイスブックにはなちゃんを載せて、譲渡先を募集した。

「我が子」として迎える

 兵庫県に住む福島さんは、結婚後飼っていた兄弟猫を病気で亡くしていた。闘病で苦しんでいたので、もう猫を飼うことはないと思っていた。だが、2017年1月、たまたまフェイスブックで、はなちゃんの存在を知った。

 当時、福島さん自身が不妊治療を受けていて、今後も継続するかどうか医師と話し合っていた頃だった。

「自分の中で区切りをつけなければいけないと考えていたんです。そんな時、子猫が産まれては死んでしまうこと、子猫を失うたびに、悲しげな顔をするはなちゃんのことなどをつづった投稿を見て、猫たちの命と真摯に向き合うブドウ園の人たちに心を打たれ、この猫を我が子として迎えようと思ったんです」

座っている猫

 フェイスブックを見てから3日後、福島さんはブドウ園に連絡した。

 ブドウ園のスタッフが2月3日、苗の買い付けに行く用事もあると言って、島根県から兵庫県まで車で3時間かけてはなちゃんを運んで来てくれた。

 はなちゃんは福島さん宅に着くと、最初こそは物陰に隠れていたが、なれると膝の上に乗るようになった。

 今では家の中で、福島さんの行く所、行く所全部後をついてきて、べったり甘えてくる。福島さんの姿が見えないと、「ニャアニャア」と母猫を呼ぶように鳴くのだという。