キジトラ猫の「ごま」は、東京都で暮らすチャオコさんと母親、9匹の保護猫兄弟たちと暮らしている。体重8キロと、体が大きく風格たっぷりのごまだが、内面は穏やかで心優しく、他の猫たちに慕われる“父ちゃん”的存在だ。

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自販機のかげから飛び出してきた兄弟猫

 ごまはもともと、チャオコさん親子に保護された外猫だった。出会いは2014年11月、親子が外出先から帰宅中、近所の自動販売機に立ちよると、ゴミ箱の横から2匹の痩せた子猫が飛び出してきた。

「私たちをまったく警戒せず、『待ってたよ!』というように飛びついてきました。この地域では見かけたことのない猫たちで、親猫もそばにいない。人なれした様子から、もしかしたら捨て猫だったのかもしれません」と、チャオコさんは当時を振り返る。

 すでに数匹の保護猫と暮らしていた親子は、子猫たちを保護し、家族に迎えることを決意。茶トラはむぎ(雄)、キジトラはごま(雄)とそれぞれに名づけた。

2匹の猫

 2匹は1カ月ほど他の猫から隔離されて暮らしたのち、当時、チャオコさんの家で暮らしていた4匹の先住猫と対面。先輩たちは、新入りの存在に動じることなく年少の2匹を可愛がった。とくに、長男であり、猫たちのボスでもあるポン(雄)は、ごまに目をかけ弟分のように面倒を見たという。

みんなをまとめる新リーダーに

 ごまは兄貴分のポンの影響からか、面倒見がよく、他の猫から一目置かれる存在に成長していく。

「新入りがやってくると、なぜかみんなごまのところにいるんです。とくに4歳のモモ(雌)は、ごま父ちゃんが大好き。ごまの毛づくろいを目当てに、いつもふところに潜り込んでいます。自発的に世話をするというわけではないのですが、シャーと威嚇することもなく、『あ、きたの?』という感じで自然に受け入れるのがごま。おだやかで優しくて、包容力のある大きな体にみんな安心するのかも」

くっつく猫たち

 ごまには、みんなをまとめるリーダーの素質もある。

「ある時期から、兄貴分のポンが兄弟のスーと仲たがいしだして、しょっちゅうけんかをするようになりました。2匹が取っ組み合っているとごまが飛んできて、2匹の間に入って仲裁するんです。その様子をみていた他の子たちも、けんかはいけない!という空気に。ごまのおかげで猫同士のけんかが減りました」

 もともと、みんなのボスは世話焼きでうでっぷしのあるポンだったが、ごまが成長した現在は、世代交代しようとしている。猫たちのおだやかな空気は、ごまのリーダーシップや包容力によって保たれていると、チャオコさんは話す。

体重8キロの大きな体

 保護した当時はがりがりの子猫だったごまは、6歳半になる現在、体重8キロのビックな体に成長した。

 1日に食べる量は他の猫の倍。“猫一倍”食いしん坊ながら、争いごとを好まない穏やかなごまは、大好きなごはんも他の猫が食べ終わるまで待ってから、みんなの残り物をぺろりと平らげる。

「でっかくなりすぎて、猫じゃらしで遊ぶときもすぐにゴロンと倒れてしまいます。驚くのは、こんなに大きいのに肥満ではないということ。健康診断でも、いたって健康でどこにも問題がありません。もともと骨格が大きくて筋肉質。それにみんなからの愛情を体で吸収しているのかも(笑)」とチャオコさん。

2匹の猫

 一緒に保護された兄弟のむぎとは、今でも大の仲良しだ。

「むぎが脱走したときは、2匹の間の特別な絆を感じました。むぎは私や母の目の前で車の下にもぐってしまい、手を出せずにいたのですが、その様子を室内から見ていたごまが、むぎを呼び戻そうと『にゃーお!にゃーお!』と叫んた。車の下で震えていたむぎは、その声を聞くと我に返り、自分で家の中に戻ってきたんです」

ごまらしく長生きして欲しい

 現在、ごま、むぎをはじめ、10匹の保護猫たちと暮らすチャオコさん。

「うちに来た子はみんな、小さい頃から過酷な環境で頑張ってきた子たち。安全な家でごま父ちゃんをはじめ、優しい仲間たちと暮らし始めると、目つきや雰囲気が変化して、家族にしか見せないかわいい一面や優しい一面を見せてくれます。猫はしゃべらないけれど、そんな変化を見たときに、少しは幸せにしてあげられたのかなと感じます」と、保護猫たちと暮らす喜びを話してくれる。

上から見下ろす猫

「あの日、自販機での出会いがなければ、食いしん坊でマイペースなごまは、存在しなかったかもしれない。縁があって我が家に来てくれたのだから、これからもストレスなく、元気に長生きしてほしいですね」

 みんなの父ちゃんとして慕われる、大きくて心優しいごま。今日もその大きな体で、家族全員分の愛情を受け止めている。