動物と一緒に暮らしてみたいーー。

 羊毛作家のRicoさんは、幼いころからの夢を叶えるため、結婚を機にペット可の物件を選んだ。「犬も猫も好きでしたが、私が出無精で。ワンコがいればお散歩に出かけたりして私の健康面にもいいのかな。そんな思いで犬を探し始めました」

(末尾に写真特集があります)

 ネットやSNSを見る中で心をわしづかみにされたのが、ポメラニアン。ブリーダーを探し、すぐに足を運んだ。ちっちゃなパピーポメたちがわちゃわちゃする中、隅っこで寝ている子が。

「『僕は寝てるんで、みなさんはどうぞ楽しく遊んでください』みたいなマイペースな態度で(笑)。この子大丈夫かな?と目が離せなくなってしまいました」

子犬時代のポメラニアン「シオン」

 遊ぼう遊ぼうと寄ってくる子よりも、そのわが道を行くポメが気になって仕方なくなり、Ricoさんは「この子だ!」と心を決めたという。

 黒ポメのその子は「シオン」と名付けた。「見た目が子熊っぽかったので、いろんな国の言葉で『熊』を調べたところ、中国語の『シオン』という響きがかわいいなと。漢字の表記も考えたのですが、ネットの姓名判断で運勢がよかったカタカナの『シオン』にしました」

 月齢2カ月でおウチにやってきたシオンくんは、初日からごはんを完食し、トイレもほぼ完璧。吠えることもなく、ケージで寝かせても夜泣きしなかった。「拍子抜けするほど手がかかりませんでした。あのころは」とRicoさん。

「成長とともに甘えん坊になり、ヘタレなのに気が強くて、『ボクがボクが!』とわがままいっぱい。ザ・ポメな子に育ちました(笑)」

ポメラニアン「シオン」

「猫を投げ捨てた⁉︎」散歩中の衝撃体験

 シオンくん、2歳の夏。猛暑で日が暮れてから出かけたお散歩で、その日に限って近くを流れる川の土手へ行きたがった。

「明かりがなく真っ暗闇で怖いので避けていたのですが、なぜかその日はシオンが『行く!』と言って聞かなかったのです」

 河川敷に近づいた時、子猫の声が聞こえた気がした。目を凝らして見ると、暗闇のなかに女性が立っている。次の瞬間、バサッという音が。「あの人、猫を投げ捨てた⁉︎」。あまりの驚きにRicoさんは一瞬固まってしまったという。

「本当なら問い詰めるべきだったのかもしれないけど、突然のことに思考が止まってしまって……」

 すぐにシオンくんを抱きかかえ草むらをかき分けて進むと、1匹の子猫が。片手にシオンくん、片手に子猫を抱えて帰宅し、すぐに病院へ走った。子猫の体はノミだらけ、お腹には寄生虫もいた。

 Ricoさんは当時を振り返る。

「もしかしたら野良猫のお母さんが家の庭などで産んでしまったのかもしれない。それにしたって投げ捨てるなんてひどいーー。しばらくは怒りが収まりませんでした」

キジ猫「ノルン」

子猫を家族に迎えることを後押しした、夫のひと言

 幸い子猫はすぐに元気に。保護はしたものの、しかし、家に迎えるかは迷ったという。

「シオンと子猫が仲良くできるか不安だったのです。もし譲渡先を探すなら、早ければ早いほうがいいだろう……と」

 そんな悩めるRicoさんの気持ちを知ってか知らずか? 夫の一言が状況を一転させる。

「なんで子猫に名前つけないの? うちの子にするんじゃないの?」

 シオンくんが拒む様子を見せなかったことも後押しとなり、2012年の夏、子猫は正式に家族の一員に。名前は「ノルン」。北欧の神話に出てくる「運命の女神」の名前から授かった。

子猫時代のキジ猫「ノルン」

「シオンが運命的に見つけてくれて家族になった。まさに私たち家族にとって、ノルンは運命の女神のような子なのです」(Ricoさん)

2匹は「おバカな小学生男子としっかり者の女子高生?」

 思いがけず始まったワンニャン多頭飼い生活。最初のころ、シオンくんはノルンちゃんをよくなめてあげ、それがうれしかったのか、ノルンちゃんは「お兄ちゃんお兄ちゃん」と甘え、シオンくんのベッドで一緒に寝ることもあったという。成長した今は同じソファで寝ていることはあるが、「一定の距離感を保っている」とお母さん。

「ベタベタすることはないけれど、お互い『家族』という認識はあるみたい」

ポメラニアン「シオン」とキジ猫「ノルン」

 ノルンちゃんはしっかり者で優しい女の子に成長。Ricoさんが体調を崩すと、「早く寝なさい」とばかりに、2階の寝室に向かうRicoさんを後押しするようについてきて、Ricoさんが寝たのを見届けると、そっと寝室から出ていくという。

「まるでお母さん(笑)。すごく頼りになる存在です」

 一方のシオンくんは、「年々甘えん坊が加速(笑)。すきあらば『抱っこ、抱っこ!』と膝を狙ってきます」。Ricoさんは目を細めてこう続けた。

「おバカな小学生男子としっかり者の女子高生。それが今のシオンとノルン」

毎日ニコニコ暮らしてくれることが一番の願い

 Ricoさんが羊毛作家の活動を始めたのは、シオンくんのかわいい姿を形にして残そう思ったのがきっかけだ。ノルンちゃんがきて、創作の幅は広がった。以来、ワンコやニャンコをはじめとする動物やキノコなどの作品を生み出している。

「シオンとノルンがいなかったら羊毛作家にはなっていなかった。一歩を踏み出せたのも、新しいことに挑戦できたのも2匹のおかげ。人生を変えてくれた運命の子たちです」

Ricoさんのフェルト作品

 ワンコとニャンコがいる暮らし。Ricoさんはこう表現する。

「シオンは元気のもと。ノルンは癒しのもと」

 全力で愛情をぶつけてくるシオンくんの天真爛漫な姿に、家族は元気に。ツンデレながら穏やかに愛情を注いでくれるノルンちゃんに心から癒される。「それぞれが違う愛情表現で元気と癒しをくれる。私たちも2匹への愛情が毎日更新されて、今日が一番かわいい! と毎日思っています」とRicoさん。

 シオンくん10歳、ノルンちゃんは8歳。すでにシニア期を迎えているが、2匹とも大きな病気もなく元気いっぱい。

「体力底なしだったシオンがお散歩のときにトボトボ歩いたりすると、ちょっと寂しい半面、初めて見る姿が愛おしくてキュンとします。子犬や子猫時代はもちろん掛け値なしにかわいいのですが、年齢を重ねたからこそのかわいさを感じています」

 コロナ禍、自然災害……。私たちを取り巻く世界は何が起きるかわからない、何が起きてもおかしくない。「なにげない普通の生活に幸せを感じる」というRicoさん。愛するわが子への思いをこう語った。

「シオンとノルンが天寿を全うするその日までは、平和な世界が続いてほしい。2匹が毎日ニコニコと暮らしてくれることが、私たち家族の一番の願いです」

RicoさんのInstagram:
@rico_cb