柴犬の子犬に限らず、子犬はみんなやんちゃです。子犬との楽しい新生活と同時に困った問題も始まります。「柴犬の飼い主さんは悩みが深くなりやすいかもしれません」と、獣医師の山下國廣先生。しかも、しつけに悩む飼い主さんにはある共通点があるとか。

 今回は3つの子犬の悩み「甘がみ」「トイレの失敗」「いたずら」を解決する方法を紹介しましょう。

最初から何でも言うことを聞く子犬はいない

 柴犬の子犬の飼い主さんによく相談される悩みは、「甘がみ・じゃれがみ」「排泄(はいせつ)の失敗」「いたずら・破壊」です。これらの3大悩みほど多くはありませんが、「サークルからの脱走」も柴犬ではよく聞く問題です。じつは他の犬種の子犬と共通した悩みが多いのです。

 ところが柴犬の飼い主さんの中には、特に深く悩んでしまう方もいます。たとえば子犬を迎えるときに次のようなことを言われ、それを信じてしつけに試行錯誤している方です。

  • 柴犬はおとなしくてかわいい
  • 豆柴だから5kg以上にならない
  • 散歩がいらない
  • 家族の言うことをよく聞く
  • 生まれながらの忠犬

 これらはすべて柴犬の実像とはかけ離れています。忠犬の素質をもっていたとしても、無条件に従ってくれるわけではありません。「何も教えなくても言うことを聞く」と思っていたら大間違い。飼い主さんと犬の関係は一緒に暮らしながらつくっていくもので、将来も育て方次第で変わります。だからこそ子犬の時期に悩むよりも、楽しみながら犬を育ててほしいと思います。

豆柴
豆柴のちくわちゃん @mameshiba_chikuwa(インスタグラムの投稿写真より)

「甘がみ・じゃれがみ」をやめさせる方法

 子犬の甘がみ・じゃれがみは、どちらも「飼い主さんにかまってほしい」というプラスの感情によるコミュニケーションの一環ですが、人間にとっては痛いので問題になってしまいます。やめさせるには以下のA〜Cのような「人間をかんだらかまってもらえなくなる」と学習させることが大切。

 遊ぶときに子犬の歯があたらないように、大きめのサイズやパペットタイプのおもちゃを選びましょう。

A. 飼い主が動きを止める
 子犬が飼い主さんの手をかんだら目の前で動き止めるのが、最も犬が理解しやすい方法です。いわゆる「子犬がかんだら無視」という対応ですが、うまくいかないという話をよく聞きます。多くの場合、無視をするタイミングが遅いからです。以下の1〜3の手順を確認してみてください。タイミングがよければ数回で犬の行動が変わってきます。

  1. 子犬がかんできたら、その瞬間に腕組みをして直立不動になる。
  2. 目を合わせず、声もかけず、体も動かさない(相手が無反応になると子犬はつまらなくなってやめる)。
  3. かむのをやめたら再び遊ぶことを繰り返す。

B. 飼い主が別室へ移動する
 もし子犬にかまれたときに動きを止められない家族(しつけに慣れていない子どもなど)や、動きを止めても手足や服を子犬がかみ続ける場合は、次の方法を実践してみましょう。

  1. かみ続ける子犬と目を合わせず、声もかけず、素早く別室へ移動。
  2. 1分程度で再び子犬の部屋へ戻って遊ぶ。
  3. 再びかみついたら部屋を出て1分程度で戻ることを繰り返す。

C. 別のコミュニケーションを教える
 甘がみ・じゃれがみをやめさせるAとBの方法に加えて、人間が困らない別の遊び方を教えてあげることも必要です。子犬が退屈そうなときに「遊ぼう」と声をかけておもちゃを出し、「飼い主さんと激しい遊びをしたい」という子犬の気持ちに応えてあげてくださいね。

白柴
ほおばりすぎなポポちゃん @popo_saisan(インスタグラムの投稿写真より)

「トイレの失敗」を成功に導く方法

 柴犬は自分の居場所を汚したくないため、排泄の場所を決める性質が強い傾向があります。トイレトレーニングで大変なのは最初だけ。1〜2日つきっきりで教えればすぐ覚えてくれることも珍しくありません。

<最初の室内トイレトレーニング>
 子犬が部屋のあちらこちらで排泄することを覚えてしまうと、トイレトレーニングが難しくなります。なるべく失敗させず、成功させるのがコツです。

  1. メッシュ付きトイレトレーを購入する。
  2. サークルの端にトイレを置き、間をなるべく開けて反対側にクレート(ベッド)を置く。
  3. 排泄の前兆(においを嗅ぐ、うろうろする、くるくる回る)が見られたら、トイレトレーへ誘導。
  4. 排泄できたら、子犬がトイレトレーの上にいるときに静かな声でほめ、サークルから出して10分ほど遊ぶ。

<散歩デビュー後の室内トイレトレーニング>
 散歩を始めると柴犬は自分の居住スペースで排泄したがらなくなります。ここであきらめると室内トイレの習慣がなくなり、台風の日や老犬になってからも排泄のために連れ出すことに。子犬のころから使っているトイレトレーを外に近い玄関やベランダに置き、排泄させてから散歩に行きましょう。根気強く続ければ「排泄したら散歩に行ける」と学習します。

「いたずら・破壊」を防ぐ方法

 家具や壁をかじって破壊するいたずらは、好奇心旺盛で活発な子犬がみんなやること。いろいろなものを口に入れて調べているわけです。これは人間の赤ちゃんも同じです。「歯が生え変わるときにかゆいからかむ」という説もありますが、今のところ学術的根拠はありません。犬が好きなガムを与えても永久歯に生え替わっても家具をかじりますよね。

<家具や壁をかじらないことを教える>
 まずはサークルから子犬を出すときは床に物を置かないのが鉄則。ここでは移動が難しい家具や壁のいたずらを防ぐ方法をひとつだけ紹介します。

  1. 子犬がかじりそうなテーブルなどの家具1〜2個や壁1〜2面を入れてフェンスで部屋の一角を囲う。
  2. フェンスの中に子犬を離し、家具や壁をかじるのを待つ。
  3. 子犬が家具をかじった瞬間、子犬に見えないように家具や壁をたたき、びっくりさせて行動を止める。このとき、決してしからず事務的に行うこと。

<サークルから脱走させない>
 柴犬の子犬はサークルの隙間から脱走し、いたずらをすることもよくあります。サークルがいやだから出たいというより、ゲーム感覚で脱走にチャレンジする子犬が多いですね。1回成功すると出られることを学習してしまい、よりいっそうチャレンジするように。サークルの隙間や天井、ドアのロックを確認し、なるべく脱走の経験を積ませないことも重要です。

柴犬
破壊活動にいそしんだなっちゃん

飼い主を困らせる行動をしないほうが得と教える

 犬の困った行動をやめさせるには、犬自身が「その行動をやめたほうが得だな」「あきらめたほうがいいな」と判断するように教えることです。叱ってやめさせることではありません。叱ることを繰り返していると、叱られたときだけ反省するふりをしたり、隠れて排泄やいたずらをしたりするようになります。

 それ以上に飼い主さんとの関係にひびが入る危険があります。とくに犬をひっくり返して抑えたりマズルをつかんだりする持続的に拘束する叱り方はいけません。柴犬には最も強く心理的な嫌悪感を与えます。

「犬のしつけ」というと、どうしても不都合な行動にばかり意識が向かってしまいますよね。じつはつい見逃して放置してしまう好ましい行動(困らない行動も含む)に着目し、強化する(ほめ言葉をかけてごほうびを与える)ことのほうが重要です。

 柴犬も子犬のころは活発な犬種共通の問題が大半。決して異常なことではなく、むしろ健全な犬らしい行動なので、心に余裕をもって対処することも大切です。柴犬は思春期を越えると他の犬種とは違う問題が現れるので、犬の成長に応じて飼い主さんも犬への理解を深めていきましょう。


【前の回】

柴犬の社会化トレーニングは一生続く! 人、犬、動物病院に慣れる方法

監修:山下國廣(やました・くにひろ)
獣医師、
軽井沢ドッグビヘイビア
主宰。科学的なアプローチと犬の立場に立った発想で人と犬のコミュニケーションをサポート。家庭犬の問題行動治療、しつけ方指導、トレーニング指導のほか、里守り犬(モンキードッグ)など野生動物対策犬の育成指導も行う。愛犬のすぐり(甲斐犬)を日本犬初の救助犬に育てて多くの現場に出動した。

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