2001年、高崎山にて撮影。今、高崎山のサルがウルグアイの動物園に送られようとしている(写真:JAVA)

 大分県大分市が、高崎山に生息する野生のニホンザル(以下、「サル」とします)を捕獲し、南米ウルグアイのドゥラスノ県にある動物園に寄贈する計画が進められています。

 JAVAは、この計画について報道と大分市への問い合わせで確認をし、動物福祉の観点をはじめ、次のように多くの問題をはらんでいることから、5月23日、大分市長に対してこの寄贈計画の白紙撤回を求める文書を提出しました。また、大分県知事に対しては、大分市に対してサルの捕獲許可を出さないよう求めました。

サルの生態に反する状況に置くことに

 サルはメスと子どもを中心とした10数匹〜100匹程度の群れを成し、複雑で高度な社交性のある生活をする生き物です。とても知能が高く、記憶力・認知能力の優れた動物であることはよく知られています。今回の寄贈計画では、動物園側が飼育可能な数を送ることから、群れから一部を引き離すことになります。これはサルにとって大変な精神的苦痛、ストレスであり、心理的虐待行為ともいえるものです。

捕獲と感染症検査での拘束は過酷

 現在、検討されている捕獲と感染症の検査方法は、10メートル四方の檻で捕獲し、検査を行うために1匹ずつ個別の檻に移し、検査が終わるまで6週間は檻に入れた状態にする方法です。サルたちは山で自由に暮らしていたところ、突如、罠にかけられ、仲間から引き離されて、何をされるのか、殺されるのかもわからない恐怖の中、狭い檻に長期間閉じ込められるのです。これは多大な恐怖とストレスを味わわせることになり、サルたちにとっては非常に過酷なことです。

輸送もサルたちにとって相当過酷

 通常、動物の航空輸送においては、動物たちは荷物と一緒に貨物室に入れられます。大きなエンジン音が響き、照明はなく真っ暗で、夏場は高温に冬場は零度を下回る状況になり得る環境の中、狭いケージに閉じ込められ、自分たちの行く末もわからない恐怖にさいなまれながら、ウルグアイへの約30時間の輸送を耐えなければならないのです(船便の場合、約1カ月)。

 動物の輸送に関しては、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」、いわゆるワシントン条約の決議「

生きている動物の輸送
」や、日本も加盟している国際獣疫事務局(OIE)の「陸生動物衛生規約」の第5.5章「
輸出国の出国地から輸入国の到着地までの通過中に適用される動物衛生措置
」が定められています。また、国際航空運送協会(IATA)も民間航空会社による生きている動物の輸送に関する基準「
IATA Live Animals Regulations(LAR)
」を設けています。これらのことからも、輸送は、動物の心身に大きな負担をかける動物福祉の観点において非常に懸念される行為であることがわかります。

2011年撮影。高崎山に暮らす親子ザル。寄贈されるサルたちは群れや家族から引き離されることになる(写真:JAVA)

 海外への転居に伴い、一緒に暮らしている動物を航空輸送する、種の保存のために海外の施設に移送する等、輸送が必要な場合も時としてありますが、高崎山のサルたちに関しては、大分市がウルグアイへの寄贈を動物ではないものに変えさえすれば、動物たちに輸送による苦痛を与えることは回避できるのです。

動物園での飼育は動物福祉に反する

 高崎山のサルたちは自然の中でのびのびと暮らしているわけですが、動物園に寄贈された場合、サルたちは、当然のことながら飼育施設内に収容されることになります。

 日本の動物園でみられるようなコンクリート製のサル山、檻といった展示施設は、世界中から「劣悪」、「生態や習性に何ら配慮していない」と厳しい批判を浴びています。寄贈先であるドゥラスノ県の動物園「Bioparque Washington Rodriguez Piquinela」が「生態展示」を心がけた施設だったとしても、それでも生息地の高崎山の環境とは異なります。決まったねぐらを持たず、移動して暮らし、その行動範囲が数㎢から数 10㎢、広い場合は100㎢にも及ぶニホンザルにとっては、閉じ込められるのと変わりありません。

2001年撮影、高崎山の風景。豊かな自然は今も変わらず、多くのサルが暮らしている(写真:JAVA)

 野生の姿を記録した映像媒体が手軽に手に入るこの時代に、動物園での展示という方法は、時代遅れ以外のなにものでもなく、昨今、動物園や水族館そのものに疑問をもつ市民が増えています。そのような世論の高まりを受けて、ゾウやイルカといった大型で知能が高く社会性のある動物の飼育をやめた動物園・水族館は世界中に多数あります。コスタリカでは国立動物園そのものを廃止しました。

多額の税金の無駄遣いに

 大分市はすでに飼育用ケージの購入等の準備費用として700万円の予算を確保し、輸送費等はさらに来年度予算として確保するとのことですが、コロナ禍で大分市の市民も例外なく、大変な状況にある中でこれほど多額で無意味な無駄遣いはありません。

 同市の財政は「大分市の財政(令和3年度版)」によると、厳しい状況であることがわかります。その状況を鑑みたならば、サルの寄贈事業に充てる費用は直接市民のためになることに使うべきではないでしょうか。

 そもそも、ニホンザルは大分市だけに生息する生き物ではありません。それにもかかわらず大分市は、ウルグアイにおける大分市の知名度をあげたり、親交を深めたりしたいとして、率先して寄贈しようとしています。しかし、そんなことで効果があるでしょうか。知名度をあげ、親交を深めたいのであれば、大分市にしかない物や文化、自然等をアピールしたり、市民同士の交流の機会を設けたりしたらよいのではないでしょうか。

 このサルのウルグアイへの寄贈計画は、サルたちにとって不幸・災難であるばかりでなく、大分市民の方々にとってもデメリットです。

 以上のような理由から、JAVAは、大分市長に対して下記の事項を強く要望しました。

【要望事項】

  1. ウルグアイへのニホンザルの寄贈計画を白紙撤回すること
  2. 今後、動物の寄贈を行わないこと

 報道によると、大分市は1977年にも高崎山のサル30頭をイタリア・ローマの動物園に寄贈したことがあるとのことですが、動物の福祉の考えがまだ浸透していなかった45年も前と同じのことを繰り返すべきではありません。

 大分市は9月ごろ大分県に対して捕獲申請を行う考えであるとJAVAに回答しました。それまでにこの計画を撤回させるため、ぜひ皆さまからも「高崎山のサルをウルグアイに送らないで!」という声を市に届けてください。

(次回は9月12日公開予定です)

【前の回】

捕獲の様子は極めて残酷 研究用に輸出・繁殖させられるインドネシアのサルたち