寄り添っている姿をみると仲良さそうに見えますが……(イラスト:長崎訓子)

 一緒に暮らしているネコはお互いのことをどう思っているのでしょうか。ヒトと同じ言葉を話せないネコの本心はわかりません。しかし、ネコの行動やホルモンなどから、ネコ同士の関係を探ることはできます。そこで今回は、一緒に暮らすネコ同士の関係を調査した論文 " Correlations between behavior and hormone concentrations or gut microbiome imply that domestic cats (Felis silvestris catus) living in a group are not like ‘groupmates’ "を紹介します。

集団生活を送るネコの本音をホルモンで調査!

 もともとネコは単独性の動物です。しかし、最近では1匹だけでなく多頭飼いする飼い主さんも多く、またシェルターや猫カフェなどでも多くのネコたちが同じ部屋で集団生活をしているのを目にすることがあります。集団生活を送るというのは、寝床や食事などを共にするわけで、相手の行動が気に入らなくても、自分とは異なる価値観の相手を受け入れるということです。

 では、単独生活を送っていたネコが集団生活を送ることになり、どのような変化が起きたのでしょうか。その変化を解明するために、麻布大学の子安博士率いる研究チームは、一緒に暮らすネコたちのホルモンと腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)を調査しました。

 調査には、シェルターに保護されたオス10匹、メス5匹の合計15匹が参加し、それぞれ3つのグループにわかれて大学の1室で2週間過ごす様子を記録しました。もちろん、部屋にはネコが休むことのできるベッドやトイレ、ご飯が置いてあります。行動観察は、夜の方が活動的だったことから、夜21時から翌朝7時までの間を赤外線カメラで記録しました。

 さらに、採取した尿から3つのホルモンの値を調べました。攻撃行動に関連するテストステロンと攻撃性や恐怖反応に関連するコルチゾール、そして絆形成に関わるオキシトシンです。同じく採取した糞(ふん)からは、ホルモン分泌に関連する腸内細菌を調べました。

一緒に暮らしていても、仲間とは認めていない!?

 行動とホルモンを解析した結果、テストステロン値が低いネコは、他のネコから逃げる回数が少なく、より長い時間、同じ空間にいることがわかりました。またコルチゾール値が低いネコは、他のネコと一緒にご飯を食べる行動(フードシェア)が増えました。他のネコから逃げず、食べ物を一緒に食べることができるようになったことで、ネコは他のネコと関わりをもつ集団をつくることができるようになったと考えられます。

 また母子や協力して狩をおこなうような強い絆で結ばれた動物では、オキシトシン値が高いとグルーミング行動(毛づくろい)が増えます。しかし、今回調査したネコの場合、オキシトシン値が低いほうがグルーミング行動が多くみられました。

一緒に空間にいても、実は仲間だと思っていないのかも?(イラスト:長崎訓子)

 一見、グルーミング行動をするので仲良くみえるものの、オキシトシン値は低いので彼らの間には“強い絆”はみられないということが考えられます。また、腸内細菌叢については、よく接するネコ同士は腸内細菌叢が似ていて、さらにコルチゾール値や行動とも関連していることがわかりました。

 これらの結果から、ネコは同じ部屋で過ごし、同じ釜の飯を食べ、グルーミング行動をしていても、強い絆でむすばれた仲間ではないとみなしていると考えられるようです。ただ、今回参加したネコたちは2週間という短い期間だったため、子猫時代から何年も一緒に過ごしているネコ同士やオスとメスの構成次第では、また違う結果になる可能性もあるとのこと。

 一緒にいても仲間意識がないというのは、なんともネコらしい結果だと感じます。今後、長く一緒にいるネコ同士での調査も期待したいところです。

愛猫スカイ(右)と友猫のどんこ(左)。どんこの家にしばらく滞在してから帰宅するとよくしゃべるようになっていました

今回ご紹介した論文

" Correlations between behavior and hormone concentrations or gut microbiome imply that domestic cats (Felis silvestris catus) living in a group are not like ‘groupmates’ "

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ネコはなぜ頭部を回転させるの? 「猫ドリル」はエネルギー消費をおさえるためだった