ゴールデンウィークが終わったこの時期、春先に環境が変わった新入社員や新入生を中心に、無気力状態に陥る人が増えるといわれる。いわゆる「5月病」だ。

「5月病」はうつ病予備軍ともいわれており、専門家は深刻な症状に陥らないよう注意を呼びかけている。

美女トレーナーもうつ病を告白

実際、日本では近年、うつ病が増加している。厚生労働省は「2002年には71.1万人、2005年には92.4万人、2008年には104.1万人と、著しく増加」と伝えている。

うつ病が増えているのは、お隣・韓国も同様だ。

韓国の健康保険審査評価院によれば、2016年の患者数は前年比7%増の64万3102人に上るという。

韓国メディアをウォッチしていても、うつ病に関するニュースは連日のように目にするし、“脱アジア級スタイル”で知られるミスコリア出身トレーナーのレイヤンをはじめ、うつ病を経験したと告白する著名人も少なくない。

そんな韓国でうつ病を専門的に研究している機関が、韓国うつ病研究所だ。

同研究所は、「韓国型うつ病」の研究や治療プログラムの開発・普及など、うつ病の予防と治療のために様々な活動を行っている。

韓国のうつ病の実状を知りたくて、ソウルから地下鉄を乗り継いで水原(スウォン)市庁近くに位置するオフィスを訪ね、カン・ヨン所長に話を聞いた。

若者のうつが増加

「日本と同様に、韓国でもうつ病が増加しているのは間違いありません。近年、テレビ番組やインターネットの影響でうつ病に対する認知度が高まり、病院で治療を受ける患者が増えたことも統計には影響していますが、患者の絶対数が増加しているのも事実です」

開口一番に韓国のうつ病の現状についてこう話したカン・ヨン所長。特に多いのは、女性の患者だという。

「男性よりも女性にうつ病が多いのは世界共通ですが、韓国は特にそれが顕著。女性の方が2倍以上多いほどです。

月経や出産、更年期などでホルモンバランスが崩れることが原因の一つですが、韓国の家父長的な文化も一因になっています。子育てを押し付けられたり、姑にこき使われたりする中でストレスがたまり、うつ病を発症してしまうのです」

また、最近は若者のうつ病も増えているという。

「一昔前までは、若者のうつ病は多くありませんでした。しかし、近頃は就職や進学、複雑な人間関係に悩む若者が増え、ストレスをため込んでうつ病にかかるケースも珍しくなくなってきました。韓国の社会状況が反映されているといえるでしょう」

韓国では自国を“ヘル朝鮮”と揶揄し、社会に絶望する若者も少なくないが、そうしたストレスが積み重なってうつ病を発症しているというのだから、彼らが抱える悩みの深さが伝わってくる話だ。

自殺問題との密接な関係

ただ、さらに深刻なのは、うつ病の増加が自殺問題につながっていることだという。

韓国は先進国で最も自殺率が高い“自殺大国”でもあるが、うつ病と自殺は密接に関係しているとカン・ヨン所長は話す。

「もともと韓国人は、周囲の人々を積極的に手助けすることは得意ですが、逆に自ら助けを求めたり、悩みを打ち明けたりすることは苦手です。多くの人が“自分一人だけ耐えればいい”という歪んだ責任感を持っており、悩みを一人で抱え込んでしまう。

その結果、ストレスをため込んでしまい、うつ病になる。そして、発症した後も“自分一人が苦しめばいい”とふさぎ込んでしまい、ついには“自分が死ねばすべて解決する”とまで考え、自殺を選択してしまうのです」

悩みや苦しみを一人で抱え込んでしまうことは、症状を進行させることにもつながっているという。

「うつ病は早期に治療すれば回復も早いのですが、韓国では周囲や医者に頼ることをためらう人が多いため、大半は自力で生活が困難なほど症状が進行して初めて病院に行くんです。周りに連れて行かれてようやく診察を受ける患者も少なくありません。

欧米では、風邪をひいたときのようにすぐに病院で診察を受け、2〜3日薬を飲んで回復するのが一般的になってきていますが、韓国人は限界まで我慢してしまう。そのため、重症になってしまうことが多く、最悪の場合、自殺にまでつながってしまうのです」

そうした状況を食い止めようとしているのが、韓国自殺予防協会の対策でもあるのだが、女性と若者を中心にうつ病が増加し、重症患者も絶えないというのだから韓国の現実は厳しい。

カン・ヨン所長の話から深刻な状況が伝わってきたが、そもそもなぜ、うつ病が増えているのか。次回は韓国でうつ病が増えている背景について紹介したい。

(文=慎 武宏)