朝鮮王朝19代王・粛宗(スクチョン)が愛した女性の中に、淑嬪・崔氏(スクピン・チェシ)という人物がいた。ドラマ『トンイ』では、女優のハン・ヒョジュが彼女を演じていたが、史実ではどのような人物だったのだろうか。

淑嬪・崔氏と張禧嬪(チャン・ヒビン)は、粛宗から愛されたという意味ではライバル関係といえる。

張禧嬪は、粛宗に仁顕(イニョン)王后を廃妃にさせてまで王妃の座を手に入れた女性だが、幸せの絶頂に達した後に転落人生を歩んでいる。

王妃となった彼女が、贅沢な生活をしすぎていることを知った粛宗に相手にされなくなった。張禧嬪に対する粛宗の愛は完全に冷めてしまったのだ。

王宮の下働きだった女性

そのときに現れたのがドラマ『トンイ』の主人公で知られる淑嬪・崔氏だった。

もともと王宮の下働きとして水汲みをしていた彼女だが、粛宗が張禧嬪への関心を失ったことで、王の寵愛を受けることになった。

しかし張禧嬪からしてみれば、淑嬪・崔氏に自分の大切な人を奪われたという感じだろう。

「あんな女が王の寵愛を受けるなど絶対に許さない」と思っていたに違いない。それでも張禧嬪には粛宗の息子を産んでいるという強みがあった。

そんな張禧嬪に危機感を持たせる出来事が起きる。それは、粛宗が仁顕王后を王妃に復帰させた半年後(1694年)に、淑嬪・崔氏が後に21代王・英祖となる息子を産んだのだ。

張禧嬪と淑嬪・崔氏の対立

その後、王妃に復帰したばかりの仁顕王后が病気になり、1701年の夏に世を去ってしまう。

それについて淑嬪・崔氏は、張禧嬪が怪しげな祠を建てて、呪術を行なっていたことを粛宗に伝えた。

その罪によって張禧嬪は死罪となったが、そうなるきっかけを作ったのは間違いなく淑嬪・崔氏だ。

しかし、張禧嬪の呪詛(じゅそ)によって仁顕王后が亡くなったという確証はない。張禧嬪が本当に警戒すべき相手は、子供のいない仁顕王后ではなく、粛宗の息子を産んでいる淑嬪・崔氏だった。(つづく)

(文=康 大地/コウ・ダイチ)