いかなる状況でも冷静さを失わない。攻撃に参加したい場面でもグッと堪え、中盤の底でリスク管理を徹底する。プレーに華やかさはないかもしれない。青森山田を支えるMF宇野禅斗(3年)は、球際の強さや的確なポジショニングでチームのために汗をかいてきた。
 
 プレーぶりを一言で現わすなら、まさに“職人”。それは代表のユニホームに袖を通しても変わらない。U-18日本代表の一員として臨んだ11月17日の横浜F・マリノス戦。「青森山田の選手であると同時に、町田の選手でもある。その自覚が出てきた。そういう意味で今回の代表では『町田の選手としてプレーする』という心持ちがあり、良いメンタルで取り組めた」。宇野にとって、11月上旬に来季の町田入りが決まってから初の代表活動。“プロサッカー選手“としての自覚と責任が生まれた中で、ダブルボランチの一角で与えられた役割を全うした。

 チームのスケジュールなどを考慮した影響で、出場は後半終盤の15分弱。それでも中盤でスペースを埋めながらボールを回収し、チームに落ち着きを与えた。また、課題としていた攻撃面でも丁寧にパスを繋ぎ、ゲームをコントロール。代表活動を通じて成長を見せ、新たな可能性を示したのは間違いない。

 自身も手応えを得ており、今合宿を通じて収穫があったと話す。

「青森山田には青森山田のサッカーがある。ただ、今後は代表や町田で、ボールを動かすサッカーにもトライしないといけない。まだまだ戦術理解やアイデアは未熟だけど、周りの選手を使うプレーは今合宿で学べた」

 いつもと違う環境で思うようなプレーができない選手も少なくないが、普段通りのパフォーマンスを発揮した宇野。そうした働きを見せた背景には、常に“ブレない”メンタリティがある。

 10月下旬に開催されたU-23アジア選手権予選にチームメイトのMF松木玖生(3年/FC東京入団内定)が飛び級で招集された。しかし、宇野は積極的に関心を示すことはなく、松木から代表での話を一切聞かなかったという。

「玖生に聞いても意味がない。自分で感じた経験しか信用していないし、それが自分のためになる。だから聞かなかった」
 
 サッカー選手として、選外になった悔しさはある。だが、前に進まなければ成長はない。小学校6年生の時に「このまま県内でプレーしても、さらに成長できない」と感じて福島を離れ、青森山田中に進学した。その時と同じく、今やるべきことを考えて、周りの活躍には流されなかった。
 
 常に矢印を自分に向ける――。そうした考えは、冬の高校サッカー選手権への想いを聞かれた時にも現われていた。

「優勝候補としてのプレッシャーはあまりない。(インターハイ、U-18高円宮杯プレミアリーグ、選手権を制しての)三冠を掲げているのは周りではなく、自分たち。それに近づいているのは、自分たちが積み上げられてきたからこそ。周りからの期待や優勝候補という呼び声もあるけど、自分たちの強さや弱い部分は自分たちが一番分かっている。その上で相手を研究して、青森山田のサッカーをしたいと思う」

 言い訳をせず、自分と向き合い続ける作業は簡単ではない。しかし、夏の王者として挑む冬の檜舞台でも、目の前の試合に全力を尽くすことが優勝への最短ルートだと考えている。

 代表であっても、青森山田であっても、何も変わらない。地道に積み上げてきた職人肌のボランチは、自分が歩んできた道を信じて最後の冬に挑む。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)