マジョルカのような守備的なチームにとってカンプ・ノウでプレーするのは簡単なことではない。とりわけ攻撃陣は相当な覚悟を持って試合に臨まなければならない。大概はバルセロナが敵陣でパフォーマンスを続ける。

 つまりボールを握り、主導権を握られると、攻撃の選手はボールホルダーを追い回し、守備に奔走する時間が増える。このような展開では、ボールを保持しても、その大半は相手ゴールから遠く離れたエリアで、そこから攻撃に転じゴールを目指さなければならない。

 マジョルカは、ゴールを決めるため、危険なチャンスを作るために長い距離を走るカウンターを基本戦術にしている。しかしバルサ戦では、攻撃の選手は後ろのチームメイトを助けるため頻繁にいつもとは逆方向に走ることを余儀なくされた。

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 ハビエル・アギーレ監督が交代枠5人を前線と中盤の選手で全て使い切ったのは、後半にフレッシュな人材を投入することで90分間、このゲームプランを遂行する意図があったからに違いない。タケ・クボ(久保建英)がピッチに立ったのも、マジョルカが2点のビハインドを背負い、ポゼッションで明らかに劣勢に立たされていた58分だった。

 ポジションは、ワントップのアンヘル・ロドリゲスの後方であるトップ下。先述したようにチーム全体の重心が低く、ボールを収めて攻撃をクリエイトしようにも、周囲のサポートを得ることができなかった

 アギーレ監督はこのバルサ戦でも就任以来、定番になっている3バックを採用。しかし例えばバルサがヨーロッパリーグで対戦したアイントラハト・フランクフルトとは異なり、左右の両サイドバックがDFラインに吸収され、実質5バックと言ってもよかった。そんな中、タケに託された役割は、相手の戦術上のキーマン、セルヒオ・ブスケッツの前方に構え、その動きを制限することだった。

 しかし時間が経つにつれ、またアギーレ監督によるサルバ・セビージャとイ・ガンインの同時投入の効果もあり、マジョルカが徐々に攻勢を強めた。その流れの中でセットプレーから1点を返したが、反撃はそこまで。もっと前から圧力をかけ、敵陣深く攻め込むことができていれば、マルク=アンドレ・テア・シュテーゲンの守るゴールを脅かすシーンは増えていたはずだ。

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 それでもタケはフェル・ニーニョと並びチーム最多タイの2本のシュートを放つなど、途中出場の選手に求められるカンフル剤としての役割を果たした。ただ同時にアギーレ監督の戦術の中で、輝きを放つことの難しさを改めて露呈するパフォーマンスでもあった。

 タケは相手ペナルティエリア付近で仕掛けてこそ持ち味を発揮する。アギーレ監督が前線に好んで起用する守備に追われる中でも、繰り返し長い距離を駆け抜けることができるタイプの選手ではない。
 
 しかし同時に、マジョルカにとっては孤立無援の中でも、チャンスを創出することができるクオリティを持った数少ない選手でもある。つまり相反するパラドックスにタケは直面する格好になっている。

 アギーレ監督が守備重視の戦い方で残留を目指しているのは明らかだ。タケは周囲のサポートを得られない状況で、しかも途中出場が続く中で、チームをゴールに近づけるという難易度の高いミッションを課されている。

文●アルベルト・モレン
翻訳●下村正幸

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