レアル・マドリーは、本来あるべき姿以上の強さを押し付ける。パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティとの死闘を制し、決勝に進出した時点で、運命はもう決まっていた印象すらあった。何しろ今回のリバプール戦の勝利も含めて、目下チャンピオンズ・リーグ決勝8連勝中なのだ。驚異的としか言いようがない。

 キリアン・エムバペのようなビッグスターは周囲にまばゆい光を照らす。それは間違いない。しかし、「マドリーは特別なクラブだ。だから勝利するのは他のクラブより簡単なんだ」とカルロ・アンチェロッティが淡々と語ったように、マドリーには常勝の機運を高める風土がある。

 アルフレッド・ディステファノを皮切りにアマンシオ・アマロ、エミリオ・ブトラゲーニョ、ラウール・ゴンサレス、クリスチアーノ・ロナウドといった名選手がクラブの歴史に痕跡を残してきた。その伝説は永遠に生き続けているが、いつの時代も程度の差はあるにせよ、後継者が現われた。

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 マドリーにおいては、「昨日」は「明日」を意味する。勝利というパスワードが常時設定されている以上、一息つくことは許されない。だからサッカースタイルを巡る細かい論争も存在しない。勝利することが戦術なのだ。

 イケル・カシージャスがいなくなれば、ティボー・クルトワが君臨し、セルヒオ・ラモスとラファエル・ヴァランヌのCBコンビが揃って退団すれば、エデル・ミリトンとダビド・アラバがそのノスタルジーを払拭し、クリスチアーノ・ロナウドが苛立って出て行けば、カリム・ベンゼマがゴールを量産し、ガレス・ベイルとエデン・アザールが使い物にならないのであれば、ヴィニシウス・ジュニオールとロドリゴが台頭する。

 そしてカゼミーロ、ルカ・モドリッチ、トニ・クロースの中盤トリオが安穏としてしまわないように、フェデリコ・バルベルデとエドゥアルド・カマビンガが、バックアッパーの枠に収まらない働きを見せる。

 近年加入した選手たちは、到着時に“銀河色”の絨毯を敷かれて迎えられたわけではない。理由はサンティアゴ・ベルナベウの大聖堂級のリニューアルのため、緊縮財政を選択しているとアナウンスされた。エムバペの到来を待って、補強という時間が止まっているようにも見えた。しかしその間もジネディーヌ、ジダンとアンチェロッティのもとでCLの優勝回数を増やし続けた。
 マドリーは、伝統的に監督が長期政権を築くことが困難なクラブだ。影響力を持つのはいつも選手であり、会長だ。アンチェロッティもその犠牲となった1人で、デシマ(10度目のCL制覇)を達成した翌年、追われるように去っていった。だから昨夏、彼の帰還が発表された時も、周囲にはどこか冷ややかな空気が流れた。

 しかし、アンチェロッティはある稀有な資質を有していた。誰とでも打ち解けられる性格だ。敵も味方も、その中間的な立場を取る人間も、同じように魅了してしまう。その公明正大かつ偽りとは無縁の素朴さで、ドレッシングルームとスタジアムに仲間意識を醸成した。
 
 息子のダビデがコーチングスタッフに入閣したからといって変な憶測が飛び交うこともなかった。ベイルやアザールの取り巻きとの間に諍いも起こらなかった。今シーズンのマドリーの快進撃は、ベンゼマ、クルトワ、モドリッチ、ヴィニシウスらを抜きに語ることができないが、その彼らを掌握し、チームを1つにまとめ上げたのがアンチェロッティの手腕だ。

 ともあれそれも昨日の出来事だ。マドリーの歴史においてデシモクワルタ(14回目の優勝)はすでに旧石器時代に属している。すでに監督と選手のベクトルはデシモキンタ(15回目の優勝)に向かっている。なぜならそれがマドリーだからだ。

文●ホセ・サマノ(エル・パイス紙マドリー番記者)
翻訳●下村正幸

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