レアル・マドリーはパリで21−22シーズンのチャンピオンズ・リーグ(CL)における旅路を最も素晴らしい形で締めくくり、自分たちがフットボール界で唯一無二かつ他に比類のない存在であることを知らしめた。

 マドリーというオリジナルカクテルは、神がかり的なもの、人間的なもの、型破りなもの2要素をブレンドすることで生まれる。しかも他のクラブにとって厄介なことにその配分は未知な領域であり続けている。

 マドリーを簡潔に定義すると、効率性をこれ以上ない形で刷り込むことで成功を収めているチームとなる。フットボールを分析する際に使われる古典的な用語に当てはめれば、その特権的な地位を説明するためのあらゆる条件を満たしている。そしてクラブとしての伝統は、その名声に惹かれ、世界各地から集結したトッププレーヤーが、何世代にもわたり何十年もかけて集めた、多彩なタイトルのコレクションの上に築かれている。

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 マドリーが他を寄せ付けないほどの確固たる地位を築くに至ったのは、強力な経済力、質の高い経営、全世界的なファンの拡大によるところが大きい。ただ同時にフットボールにおいてはいずれもベーシックな要素であり、当然マドリー固有のものではない。現に同じように金満で成功する準備が完璧に整っているクラブは他にもある。しかしマドリーとは異なり、あらゆる状況に対応できる独自の個性を見出せないまま後塵を拝し続けている。

 では、そのマドリーを特徴づけるオリジナリティとは何なのだろうか? 私はフットボールの論理を変容させ、自分たちの目標にアジャストさせる力にあると考える。定説を覆すことで導き出した答えをコントラストと矛盾の中で露見させるような芸当も事も無げにやってのける。

 パリ・サンジェルマン、チェルシー、マンチェスター・シティ、リバプール戦での勝利の反響は、そのプロセスがスリリングだったことと無関係ではない。苦悩、ドラマ、歓喜など過去に記憶にないほどの感情の揺れは、劇的に次ぐ劇的な戦いぶりに凝縮されていた。そしてそうした数々の死闘を乗り越えて、マドリーはパリで王者に輝いた。
 マドリーは欧州最強チームなのか?おそらく答えは「ノー」だ。しかし周りからどう思われるかはマドリーにとっては二の次だ。それは今も昔も変わっていない。マドリーは画期的なフットボールを展開するわけでもないし、後世のために革新的な戦術を確立するわけでもない。専門家たちの探求心を掻き立てられるチームではない。

 マドリーがライバルクラブ(例えばバルセロナやリバプールやマンチェスター・ユナイテッドやマンチェスター・C)と異なる点は他にもある。監督はもちろん重要な存在ではあるが、主役になることがないこともその一つだ。

 実際、タイトルへの飽くなき欲望に加えて、いつの時代もマドリーをマドリーたらしめているのは、チームの顔役を担う選手たちであり、サンティアゴ・ベルナベウやフロレンティーノ・ペレスのようなクラブ史にその名を刻む豪腕会長である。
 
 クリスチアーノ・ロナウドとセルヒオ・ラモスが去り、ガレス・ベイルは隅に追いやられる。昨シーズン開幕当初、マドリーは過度期に直面していると思われていた。おまけにクラブの新たな顔になると目されていた選手(キリアン・エムバペのこと)は少なくとも今後3年間、やって来ることはない。

 しかし、マドリーの辞書に過度期という言葉は存在しなかった。見事にその概念を打ち砕いた。そう、またしてもマドリーはロジックの構築を他人に任せ、自分たちはタイトルを手にしたのだ。

文●サンティアゴ・セグロラ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

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