待ちに待ったA代表デビュー戦はほろ苦いモノとなった。

 7月19日に行なわれた E-1選手権の香港戦。6−0で快勝した一戦で、自身初の代表戦を戦った藤田譲瑠チマは厳しい表情を見せていた。

 結果だけを見れば、悪くなかったのかもしれない。4−2−3−1のダブルボランチで先発出場を果たすと、豊富な運動量を生かして積極的にボールに関与していく。味方の立ち位置や相手の状況に応じてポジショニングも修正。ビルドアップを助けるべく最終ラインに陣取ったかと思えば、高い位置に入ってゴールに近い場所でプレーする時間もあった。守備でも球際の強さを見せ、積極的にセカンドボールを拾いにいく。

 アグレッシブに攻守に関わっていくスタイルは、U-21日本代表の時と変わらなかった。だが、この日の藤田は“らしくない”プレーが多く、奪い切れないシーンやイージーなパスミスが散見。記者席から見ていても、いつもより技術的なミスが明らかに多かった。試合の翌日にオンライン取材に応じた藤田も、自身の出来に納得できない様子だった。

「球際のところであったり、セカンドボールを拾ったあとやボールを奪ったあとのパス、ファーストプレーのところで相手に奪われるシーンがあったし、(パスが)ラインを割ってしまうこともあった。そういうところは直していかないと、自分たちの攻撃の時間が減ってしまう。攻撃のところではもっと簡単に前に付けられるシーンがあったし、もっと自分のところでテンポを出して、正確なパスで相手を困らせるシーンはもっと増やせたと思う」

 6月のU-23アジアカップでは「自分の中でもまだプレーに余裕があるなと感じていた」と話していたが、カテゴリーが変わった途端に、なぜいつも通りのプレーができなかったのだろうか。

 理由のひとつが、周りの選手と呼吸が合わなかった点だ。藤田は言う。

「正直に言うと、今回の対戦相手よりはU-23アジアカップで戦った韓国やウズベキスタンのほうがレベルは高いと思ったけど、(今回のメンバーは)初めて一緒にサッカーをする選手が多く、(ゲームを)コントロールするのが難しかった。自分や味方の立ち位置も含め、U-21代表であれば大体の特徴が分かっていたので、どこに出すかを予測しながら先に自分が動き出し、余裕を持ってプレーすることができていたと思う。今回のように初めて一緒にサッカーをするメンバーが多いと、どこに出すか分からないシーンが増えてしまい、自分も後手を踏んでしまった。リアクションを見て、急いで動き出してしまうので、余裕がなくなってしまったと思う」
 
 もちろん、普段から一緒にやっているマリノス組が、スタメンに自身を含め5人いたとはいえ、ほとんどの選手が初対面。全員揃ってのトレーニングも前日練習のみで、特徴を把握しきれていなかった点が自身のプレーに影響を与えたのは否めない。

 だが、それは言い訳にはできない。いかなる状況下でもコミュニケーションを取りながら、最善の策をとっていかないといけないからだ。それは藤田自身も理解しているし、エクスキューズにするつもりもない。

「サッカー感が合わない場面や、距離感が合わないところもあったけど、球際やセカンドボールを拾ったあとのパスは自分の意識一つで変えられる。そこは自分自身の課題だと感じている」

 A代表経由パリ五輪――。U-21代表を率いる大岩剛監督は常日頃から、A代表に定着したうえで五輪を戦ってほしいと話してきた。その言葉通りに藤田は同世代の仲間たちよりも一足早く上のステージに足を踏み入れたからこそ、プレーで示さなければならない。今大会はあと2試合残っている。自分の価値を証明するためにも、このままでは終われない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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