Eー1選手権の中国戦、0-0で迎えた53分に細谷真大は絶好機を掴んだ。ペナルティエリア内で脇坂泰斗からパスを受け、巧みなコントロールでシュートまで持ち込む。ゴール至近距離で右足を振り抜いたが、ボールはバーの上に飛んだ。

 スコアレスドローに終わったこの一戦、中国の“べた引き”ディフェンスに大苦戦した日本にとっては、最大のチャンスだった。枠外に飛んだボールを見て悔しい表情を見せた細谷も、試合展開的にいかに重要な決定機だったかよく分かっているはずで、決めきれなかった責任は肩に重くのしかかっているだろう。

 細谷は正念場を迎えている。所属クラブの柏でも、20節の名古屋戦、21節の鳥栖戦でスタメンから外れた。22節の札幌戦で先発に復帰したものの、16節の清水戦を最後に約2か月、リーグ戦ではゴールから遠ざかっている。しかも、その間に武藤雄樹が貴重な得点を決めており、確固たるものにしていたFWの1番手の座が、揺らぎ始めている状態だ。

 U-21日本代表として臨んだ6月のU23アジアカップでは2ゴールを奪取。決して悪いパフォーマンスだったわけではないが、上り調子のまま大会に入っただけに、期待に見合う出来ではなかった。主役の座を奪った鈴木唯人ほどの活躍は、本来なら細谷にもできたはずである。
 
 もっとも、エクスキューズはある。どこか物足りないA&U-21代表での出来で言えば、1トップでプレーしづらかったはずだ。柏でも戦況に応じて1トップを任されると孤立しがちで、やはり細谷は2トップでこそ生きる。

 そして何より、細谷は疲労が相当に溜まっているはずである。ウズベキスタンで行なわれたU23アジアカップは6試合中5試合に出場。前線からのプレッシングや抜け出しのスプリントなど、プレースタイル的にも疲れやすいのは当然で、出国前と帰国後を比べるとプレー強度が落ちているように感じる。

 調子が良かった3月、インタビューで細谷に「FW陣のポジション争いは激しいので、決定力は競争を勝ち抜くポイントになりそうです」と投げかけると、4か月前はこうコメントしていた。

「そうですよね、だからこそ危機感持ってやらないといけません。今はドグ(ドウグラス)と2トップで先発できていますけど、僕だって調子を落としてしまう時がくるかもしれない。それでも一喜一憂せず、冷静にプレーし続けられるかが大事。競争を良い刺激にもっと頑張っていきたいです」

 今季、半端ないスピードで成長を遂げてきた細谷を見てきたので、中国戦の決定機逸は技術的な問題があったとは思わない。むしろ課題はメンタルで、今こそ4か月前の「一喜一憂せず、冷静にプレーし続けられるか」が大事になる。

 ここで燻るか、それとも奮起できるか。日の丸を背負い、ひとつのシュートミスがどれだけ重いか知った細谷が、決定機でさらに神経を研ぎ澄ませられるようになると信じたい。

取材・文●志水麗鑑(サッカーダイジェスト編集部)