日本代表が4大会ぶりの優勝を飾ったE-1選手権は、Jリーガーたちにとってカタール・ワールドカップのメンバー入りを懸けた文字通りの“ラストチャンス”だった。
 
 今大会は来たる新シーズンに向けた準備中の海外組、そしてW杯経験者の権田修一、長友佑都、酒井宏樹、大迫勇也らが選外。国内組のみ、しかも実に11人が初招集というフレッシュな顔触れで臨み、まずは7月19日に香港を6−0で撃破すると、24日こそ中国とスコアレスドローに終わったものの、27日には韓国から3−0の快勝を収めた。
 
 海外組と国内組の間には、クオリティーや経験値に大きな差があるのは事実。ただ、代表チームはいわば“生き物”であり、さらにW杯のようなメジャートーナメントでは勢いのある選手、または対戦相手を考慮して求められる選手が、土壇場でサプライズとして登録メンバー入りを勝ち取ったケースは古今東西で枚挙に暇がない。
 
 個人的にそんな目線を持って取材を続けてきた今大会。アジア最終予選で頼れる控えに成長した谷口彰悟と山根視来を除いても、「これはワンチャンあるのではないか」と思わせてくれたフレッシュな選手が3人いた。
 
 森保一監督は韓国戦後に、「選ぶかどうかは視察を重ね、選手の情報をさらに集めたい」と前向きしたうえで、「(E-1組で)W杯のメンバーとして候補に入る選手は何人もいた」と明言。最終選考の場となる9月のヨーロッパ遠征に連れていきたい選手もいると語っただけに、「E-1経由カタール行き」は夢物語ではないだろう。
 
 真っ先に推したいのが、U-21代表からの昇格でA代表初招集だったMFの藤田譲瑠チマだ。スタメン出場した香港戦と韓国戦で示したのは、攻守における貢献度の高さ。攻撃ではキープ力と柔軟なボール捌きでテンポを作り、韓国戦では見事なクロスでアシストを記録すれば、3点目の起点にもなった。
 
 その攻撃面よりも光っていたのが守備面だ。チェイシングが鋭く、読みからのパスカットも上手く、何よりも敵にグッと寄せてボール奪取してそのまま前に突き進む力強さは目を見張った。
 
 ドイツ、コスタリカ、スペインと同組に入ったW杯は、とりわけドイツやスペインとの試合でボールを握られ、守勢に回る展開になるだろう。森保ジャパンの中盤は、アンカーの遠藤航、インサイドハーフの田中碧と守田英正という3人が主力だが、彼らと同タイプの控えが実質不在。守備のインテンシティーが高く、アンカーとインサイドハーフの両方で機能する藤田は、その意味でも適材に見える。
 
 藤田はまだパスミスがあったり、ポジショニングが曖昧なシーンがあったり、まだまだ荒削りな印象は否めない。とはいえ、ミスからの切り替えが早く若手ながら周囲に積極的に指示を送るなどパーソナリティーは強い。しかも、20歳前後の若手はわずか数か月で別人のように見違えるケースがあるし、本人が「この大会をきっかけに自信はついた。Jリーグでもしっかり活躍したい」と貴重な経験を積んでいる。9月の欧州遠征で主力組と組ませてさらなる刺激を受ければ、大化けしてもなんら不思議はない。
 
 二番目に推したいのが、同じく初招集だったCFの町野修斗だ。香港戦で2得点、韓国戦で1得点を挙げ、目標に掲げていた3ゴールでトップスコアラーに輝いた。
 
 J1リーグでも得点王争いをする22歳のストライカーは、日本代表でもしっかり結果を出したのだ。もちろん相手のレベルを考慮する必要はあるものの、初の国際舞台でいきなりゴールを奪えるFWはそうそういない。町野が「持ってる男」なのは間違いないだろう。
 
 今大会はポストプレーも光っていた。185cmの大柄な身体を上手く使いながら敵DFのマークを剥がし、前後左右からくるボールを足や頭で上手く捌いてチャンスを演出。ある意味では、決定力以上にカタールW杯に向けた重要な能力に見えた。
 
 長く日本代表のエースを担ってきた大迫は、コンディションの問題で過去3回連続の招集外。その間のCFは浅野拓磨、上田綺世、古橋亨梧、前田大然などが担ってきたが、いずれもポストプレーが得意ではなく、森保ジャパンは攻撃の基準点作りに苦慮していた。大迫の代役候補としてタイプが近い町野は、少なくとも9月シリーズで試す価値があるはずだ。
 
 そもそもメジャー大会のFWは、調子や勢いで選考が最も変わりやすいポジション。ハリー・ケインやロベルト・レバンドフスキなら多少の不調でも簡単には外せないが、日本にそんな超ワールドクラスのCFはいない。メンバー固定化を指摘される森保監督も、2019年のコパ・アメリカでは当時大学生で初招集だった上田を初戦スタメンに大抜擢。東京五輪では上田と前田のコンディション不良という事情があったにせよ、大会前最後の強化試合で初めて試した林大地をレギュラーに据えて周囲を驚かせてもいる。
 
 ユース世代での代表歴が皆無で、J3から這い上がってきた叩き上げの町野は、ギラギラとした向上心も魅力。「明日の練習から全力でワールドカップへのアピールに向けて頑張っていきたいです。やらなければいけないこともたくさんE-1で見つかったので、トライしていきたいと思います」と燃えている。

【PHOTO】華麗な崩しから仕留め、忍者ポーズ炸裂!代表定着へアピールした町野修斗!
 
 その町野とE-1得点王の座を分け合い、計3ゴール・2アシストを記録して大会MVPもダブル受賞した相馬勇紀が3人目の推しだ。
 
 同じく国内組で構成された3年前のE-1選手権で初招集されてから一度も森保監督から声が掛からなかったものの、その悔しさをバネに成長。今大会では主役を演じて見せた。
 
 森保ジャパンの左ウイングには、ご存知の通り南野拓実と三笘薫が君臨。テクニックやスピードなど純粋なクオリティーで比較すれば、彼ら2人に相馬は遠く及ばない。韓国戦後に本人も、「まだ同じ土俵には立てていない。最終予選の敵の強さ、プレッシャーがかかった中というのは、今日のレベルより、もっともっと上のレベルなんだなと思っています。(2人に)追いつけたとは思っていません」と率直に認めている。
 
 その一方で相馬は、南野と三笘にはない武器も備えている。まず、プレースキックの精度だ。香港戦では美しい直接FKを決め、韓国戦ではCKからアシストを記録。アジア最終予選10試合でCKとFKからのゴールがなんとゼロと、頼れるキッカーの不在は森保ジャパンの致命的な弱点の1つだけに、この持ち味は無視できないだろう。
 
 見逃せないもう1個の特長が、ディフェンスやオフ・ザ・ボールの動きなど地味なタスクを献身的にこなすことだ。名古屋グランパスではより守備的かつ運動量が求められるウイングバックを担うほどで、本人も「守りのところで相手に食らいついていったり、逆サイドからのクロスに対しても必ず反応するところは自分の良さ」と胸を張る。ドイツとスペインとの試合はどうしても押し込まれるはずで、その献身性が生きる可能性は十二分にある。
 
 コロナ禍を受けてカタールW杯は、登録枠が通常の23人から26人まで拡大。23人のままならおそらく南野と三笘で入る余地がなかっただろうが、26人となれば左ウイングに3枠を使ってもいい。プレースキッカーとして有能かつ主力2人とはまた違った献身的なタイプで、さらに中国戦では途中出場で存在感を見せた通りスーパーサブにも向いている相馬は、とくに適材に見える。
 
 藤田、町野、相馬は「E-1経由カタール行き」を達成できる資質を備えていると個人的には考える。少なくとも、9月のヨーロッパ遠征でフルメンバーと融合させて真価を見定めるべきだ。
 
取材・文●白鳥大知(ワールドサッカーダイジェスト編集部)

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