来年3月に行なわれるU-20アジアカップ(U-20ワールドカップの最終予選)の出場を懸けた予選が、9月10日からラオスで開催される。残された準備期間は約1か月。最後の仕上げをするべくU-19日本代表は8月15日から3日間の日程でキャンプを実施。最終日となった17日は千葉県内でU-19ベトナム代表と40分×3本の形式でトレーニングマッチに臨み、トータルスコア5−0で勝利した。

 今回、招集された選手は25人。さらに今合宿に参加できなかった面々も数人おり、23人のメンバー入りを争う枠は熾烈を極める。冨樫剛一監督はアタッカー陣の組み合わせを試しながら、FWの選手に縦パスを入れる形で攻撃を展開するパターンを今合宿で試みてきた。

 また指揮官がもうひとつ試みていたのが、複数ポジションをこなせるかどうかだった。「サイドバックのところなど、想定されるとしたら現地に行ってコロナの影響で選手が1人減るとかは多分にあり得る」とは冨樫監督の言葉。現地に赴けば、選手の入れ替えはできないし、どんなアクシデントがあるか分からない。

 今はコロナ禍の真っ只中。中1日で4試合を戦うことを考えれば、感染者が出れば大会期間中に復帰できる見込みは小さい。実際に6月の U-23アジアカップでは複数の選手が離脱しており、U-19代表も5月下旬から参戦したモーリスレベロトーナメント(旧トゥーロン国際大会)では冨樫監督が初戦の前に離脱し、最終戦しか指揮が執れなかった。
 
 不測の事態は起こり得るし、予定していた選手がメンバー発表直前で離脱することも想定される。そうした意味で今合宿では選手層を拡充するためにも、個々でさらなるアピールが求められていた。

 その観点から見て、今回のトレーニングマッチで可能性を大きく示した選手が3人いる。1人目がCBの東廉太(FC東京U-18)だ。189センチの高さを生かした守りに定評があり、アルベル監督からの薫陶を受けて2種登録ながらすでにルヴァンカップに4試合出場。J1の舞台も1試合経験している。
 
 東の才能は折り紙付きで、将来性は十分。先月のU-18代表候補合宿でアピールに成功し、ひとつ上の世代の代表に合流を果たすと、今回のベトナム戦でも安定感のあるパフォーマンスを披露している。空中戦の強さはもちろん、ビルドアップでも強みを発揮。正確な縦パスを通すシーンも多々あり、攻撃の出発点としても機能した。

 思い返せば、鳴り物入りで高川学園中からやってきたが、高校1年次は怪我の影響で満足のいくプレーができなかった。だが、高校2年次からU-18で試合に絡み、今季はトップチームでプレーする機会を確保。日本代表の長友佑都からプロ意識などを学び、ひとつずつプロサッカー選手の階段を登ってきた。

「アルベル監督になって、キャンプに呼んでもらい、自分の力だけではなく周りの方々のサポートで代表のチャンスを得られた。怪我に気をつけながら、もっとパフォーマンスを上げて、上の代表を目ざしていきたい」とは東の言葉。メンバー入りを果たせば、さらなる成長の場になるはずで、東にとってまたとないチャンスになるだろう。

 2人目は明治大のMF熊取谷一星だ。大学2年生ながら早生まれのためメンバー入りの資格を持っているアタッカーは、技術力の高さを生かしたドリブル突破でチャンスを作り出した。
 
 世代別代表は高校2年次以来だが、テクニックはこの世代でも随一のレベル。ベトナム戦では2本目から左サイドハーフに入ると、カットインや縦への突破で存在感を示す。3本目では左足でネットを揺らし、クロスからアシストも決めた。

 相手は合宿を行なっていた影響で疲弊していたとはいえ、左サイドで個性を放っていたのは事実。ボールを晒しながら、ここぞというところでスピードを上げて相手を置き去りにする仕掛けは際立っていた。強度や守備面に課題はあるが、ラオスの地で見たいと思わせるプレーヤーのひとりだろう。

 3人目がボランチとCBでプレーできるDF吉田温紀(名古屋)だ。世代別代表の常連で、昨年はひとつ上の世代の代表に飛び級で参加した経験もある。クラブでもポテンシャルを高く評価されており、U-18に所属していた昨季はタイで一斉開催されたACLにも帯同した。
 
 迎えた今季はプロの壁にぶつかり、モーリスレベロトーナメントではメンバー外になった吉田。しかし、クラブで地道に積み上げながら、先輩たちから刺激を受けて成長した。

 とりわけ影響を受けたのが、夏のマーケットでチームを離れたMF阿部浩之(湘南)とMF齋藤学(水原三星)だ。阿部には多くのことを要求され、攻撃面で学びがあったという。

「阿部さんからは色々教えてもらった。自分は止まってボールを受けることが多いので、スペースに付けたり、良いポジションを取ることを常に意識するようにと教わりました」
 
 そうした学びを経て迎えた今回のベトナム戦。CBとボランチで起用されると、いずれのポジションでも強みを発揮。正確なパスを付けるだけではなく、常に足を動かしながらポジションを取る。視野を確保できる位置で受け、ボールを捌き、時に鋭い縦パスを前方に入れるシーンも少なくなかった。本来の力を考えれば、主力を担うべきタレントであるだけに、吉田の復活はチームにとって大きな力になるはずだ。

 今回の活動を経て、誰がラオス行きのチケットを手にするのか。来年のU-20ワールドカップ出場を目ざす若き才能たちの戦いから今後も目が離せない。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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