[U-20アジア杯予選]日本9−0グアム/9月14日/ナショナル・スタジアム(ラオス)

 9−0で快勝した一戦のヒーローは、キックオフ24時間前まで現地入りしていなかった男だ。

 ラオスで行なわれているU-20アジアカップ予選は、来年5月に開催されるU-20ワールドカップを本大会と考えれば、一次予選に相当する。開催国ラオスとの初戦で4−0の完勝を収めたU-19日本代表は、9月14日にグアムとの第2戦を9−0で制し、開幕2連勝とした。

 この一戦で輝きを放ったのが、前日に追加招集された千葉寛汰(FC今治)だった。

 千葉がラオスに到着したのは昨晩20時。ラオスとの初戦前日となる11日に内藤大和(甲府)がトレーニングで負傷した影響で、チームは初戦の6時間前までメンバー変更ができるレギュレーションに則して選手の入れ替えを決断する。

 千葉に連絡があったのは12日の14時。そこから3時間ほどで今治を出発し、ラオスに向けて飛び立った。

 結果を残す――。その一心で現地に向かったが、さすがにグアム戦で先発出場する想定はしていなかった。

「お前のことはずっと見ていたし、点取り屋としての能力は評価しているから、しっかりそれを示せ」と合流後に声を掛けた冨樫剛一監督から、スタメン起用を告げられたのはグアム戦の朝。仲間とのミーティングも試合当日の午前中にしただけで、ぶっつけ本番でピッチに立つ形となった。

 もう1人のストライカーである坂本一彩(G大阪)は初戦にフル出場しており、中1日の試合では起用が難しい。そうした状況下で巡ってきた出場機会に千葉は目をぎらつかせ、誰よりも結果にこだわっていた。
 
 キックオフ直後はでこぼこのピッチに慣れず、思うようにゲームに入れない。だが、ひとつのゴールで弾みがついた。2−0で迎えた30分。「あのゴールがやっぱり寛汰だなと思う」と冨樫監督は絶賛。ミドルシュートをGKが弾いたところに反応した。

「こぼれ球にしっかり反応するという意味ではストライカーらしいゴールだった」と胸を張った得意の形でネットを揺らした。

 その後は5バックで守りを固めてきた相手に屈せず、中央に陣取ってゴールを奪う作業に集中。45分には中村仁郎(G大阪)の右クロスをファーサイドで熊取谷一星(明治大)が頭で落とすと、そこに上手く反応して2点目を奪う。

 後半に入っても手を緩めず、56分には自らの仕掛けで得たPKを冷静に決めてハットトリックを達成。以降はペースダウンを余儀なくされたが、終盤に再び勢いを取り戻し、86分、88分、90分と立て続けにゴールを奪い、ダブルハットトリックを決め込んで試合を締め括った。

「練習もやらない状況下での試合だったので、すごく難しさがありました。でも(飛躍の)チャンスはそういう難しい局面が多いと思うし、そういうところでやれなければ意味がない」

 並々ならぬ意気込みで試合に臨んだ千葉は逆境を跳ね返し、自らの価値をゴールという結果で示した。
 
 ラオスの地でいきなり躍動した一方で、清水ユースからトップ昇格したルーキーイヤーの今季はプロの壁に直面。もがき続けながら、自分と戦う日々が続いていた。

 清水ユースでの昨季は圧倒的な得点力を誇示し、U-18高円宮杯プレミアリーグでは17試合で18ゴールを挙げ、1試合1得点以上の活躍で得点王に輝いている。

 その活躍が認められ、昨季はU-19代表の前身となるU-18代表だけではなく、ひとつ上のU-20代表にも招集された。だが、今季は開幕から出番を得られずに苦戦し、5月までに与えられた出場機会はルヴァンカップでの2試合のみ。

 実戦感覚を養えなかっただけではなく、プロで戦うためにゴール以外のタスクを考えすぎるがゆえに、本来の良さである“ゴールを奪う”というプレースタイルを見失いつつあった。

 U-19代表の活動からも4月下旬を最後に遠ざかり、自身が目標としていた5月下旬のモーリスレベロトーナメント(旧・トゥーロン国際大会)ではメンバー外。

「エスパルスで試合に出られていなかったので、モーリスレベロトーナメントをモチベーションにしていた部分があった。その大会で大きく飛躍しようという気持ちでいたので、選ばれなくて、どん底ではないですけど、メンタル的にはけっこう落ち込んで……」と本人が振り返るほど、ショッキングな出来事だった。

 だが、そこから這い上がるきっかけが突如として巡ってくる。招集外となった直後に今治からオファーが届いたのだ。当時を振り返り、千葉はこう話す。

「直感です。今治に行って人生を変えるんだなって感じたので。そこは他のチームからのオファーを待つとかはなく、すぐに決断しましたね」

 出場機会を掴むべく下した期限付き移籍の決断――。この武者修行が千葉を甦らせる。
 
 今治に合流すると、コンスタントに出番を得て13試合で3得点。「まだ3点しか取れていなくて、そこに対しての満足感はゼロに近い」と悔しさを滲ませるが、毎週のようにゲームに関わる経験は千葉に自信を取り戻させた。

「試合にしっかり出て、毎試合、良いところと悪いところの振り返りをする。成長するうえで試合に出ることは必要だし、本当に色々なところで学ぶことが多い。移籍は難しいと思いましたけど、1年目でこれだけの経験ができているのは非常に大きい」

 地道に積み重ねた結果、今予選で追加招集という形でチャンスが巡ってきた。そして、見事に6ゴールの大活躍。「大差がついたゲームなので評価はしづらい」と前置きしたうえで、「今日の結果で、次のチャンスを得られたと思うので、第一歩としては良かった」と視線を上げた千葉の表情に迷いはない。

「どん底から一歩だけ上った感じがするので、ここから一番上まで駆け抜けたい」

 苦しんだ先に見えてきた光を掴むべく、次戦以降も千葉はゴールだけを目ざして戦い続ける。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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