今季ドイツ・ブンデスリーガ1部には、9人の日本人選手がいる。このうち日本代表と所属クラブでキャプテンマークを巻いたことがあるのは、長谷部誠(フランクフルト)、吉田麻也(シャルケ)、遠藤航(シュツットガルト)の3人。名実ともに「統率者」と認められる面々の直接対決は、我々日本人にとっても興味深いものがある。

 現地時間9月17日のブンデスリーガ第7節、シュツットガルト対フランクフルト戦では、遠藤と長谷部が揃って腕章を巻く場面が見られた。

 遠藤はご存じの通り、昨季からリーダーの大役を担い、昨季最終節・ケルン戦では劇的ロスタイム弾で残留に導く大仕事を果たしている。そして今季もペレッグリーノ・マタラッツォ監督から絶大な信頼を寄せられているのだ。

「今のチームでは29歳の自分が一番上。途中から出てきている選手なんかは19とか20歳。若い選手が多い分、1つ崩れると一気に崩れちゃうところがあるので、うまくバランスを取らなきゃいけない」と、遠藤はリーダーとして強い自覚を持ちながら戦っているという。

 とはいえ、今季のシュツットガルトは開幕から未勝利。なかなか波に乗れていない。この日も開始早々の6分に鎌田大地のFKの流れからクリスティアン・ローデに押し込まれ、いきなりのビハインドを強いられる。「前半の入りをチームとしてしっかりやらなければいけない」と3バックの一角を占める伊藤洋輝も反省の弁を口にしていた。

 そのままチームを停滞させるわけにいかない遠藤は、3−5−2の右インサイドハーフで攻守両面に奮闘。隙あらば最前線まで飛び出してゴールを狙い、ボールを失うと鋭い切り替えから身体を投げ出して奪い返しに行く。まさに大黒柱として若い集団を全力で引っ張ろうと積極的にトライし続けた。
 
「監督は高い位置へ行け、と。代表とは違うやり方なので、難しさは感じながらやってますけど、常にトライはしてます」と遠藤は貪欲に得点への意欲を押し出した。

 そこに立ちはだかったのが、フランクフルトの最終ラインのリーダー・長谷部だ。今季リーグ初先発で3バックの中央に入った38歳は、要所で的確なカバーリングを見せ、ピンチを阻止。高度な戦術眼とインテリジェンス、落ち着きを遺憾なく発揮したのである。

「自分が出た時に何ができて、何ができないかは割り切ってやっているし、その中で自分の良さ、周りの良さを補いながらやっている。出ていなかった時も『自分が出たらこういうプレーをしよう』と考えて準備してきたし、そういうのも初めてではないので」

 常に冷静なベテランは、出番なしが続いた今季序盤のマイナス面を一切、感じさせなかった。
 
 実際、長谷部が3バックの中央に陣取った13日のチャンピオンズリーグ・マルセイユ戦以降、フランクフルトの守備は確実に安定感を増している。鎌田が55分に直接FKで2点目を挙げ、終盤に鎌田のCKからクリスティヤン・ヤキッチが3点目を奪えたのも、計算できる仕事をしてくれる人間が最後尾に陣取っていることが大きい。

 だからこそ、オリバー・グラスナー監督もセバスティアン・ローデが68分に退いた後、主将の大役を長谷部に託したのだろう。

 結局、1−3で苦杯を喫するとともに、大先輩にいぶし銀の働きを見せつけられた遠藤は試合後、しみじみとこう語っていた。

「そもそも、あの年齢でここ(ブンデス1部)でプレーしていること自体が全然、想像できない。出たら勝つし、パフォーマンスも良い。動きの量はそんなに多くないかもしれないけど、周りの選手をうまく活かしながら自分が最後はカバーする。その経験値の差が今日の試合では出たのかな。ハセさんの存在は僕ら日本人にとってすごく大きいし、見習うべき存在だと思います」

 遠藤は日本代表においても偉大な長谷部の背中を追いかけてきた。4年前のロシア・ワールドカップでは出番なしに終わった時も「代表引退したハセさんの後釜を誰がやるんだという話になって、自分がスタメンを勝ち取ればいいんだと思った」と改めて本音を吐露した。
 
「ロシアの後、シント=トロイデンへ行って、ここに来て、代表でも試合に出れてるっていうのは、自分が思い描いてきたこと。今、目標を達成しつつあるのは嬉しいけど、まだワールドカップに出たわけじゃない。そこでしっかり試合に出て、結果を残さなきゃいけない」と、今回の直接対決で遠藤の闘志に改めてスイッチが入った様子だ。

 常に向上心に満ち溢れる29歳の男にしてみれば、シュツットガルトの1部残留、日本代表のW杯8強の両方のけん引役になれてこそ、初めて長谷部を超えられるという感覚がどこかにあるのかもしれない。カタールW杯後には吉田からキャプテンを引き継ぐことが有力視されるだけに、それだけの実績を残してほしいところだ。

 さしあたって、今回のフランクフルト戦で得た貴重な経験を、9月の代表2連戦、そして2か月後の世界舞台に活かすことが肝要だ。長谷部から引き継いだリーダーシップの前向きな変化が楽しみである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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