今夏、フランス1部のスタッド・ドゥ・ランスに加入した伊東純也。8月14日のクレルモン戦で新天地デビューを飾り、続く21日のストラスブール戦以降は全試合スタメンと、今の彼は紛れもなくチームの攻撃の軸を担っている。

 その間、川島永嗣のストラスブール(1−1)、オナイウ阿道のトゥールーズ(0−1)との日本人対決があったが、前者は川島の出場がなく、後者は2人揃ってプレーしたのは16分程度しかなかった。しかも2戦ともに勝利ならず。S・ランスの伊東にとっては、やや悔しい結果となった。

 それだけに、日本代表の盟友・南野拓実とフランスで初めて激突した18日のモナコ戦は気合が入っていたはず。残念ながら南野はベンチスタートだったが、どこかで同じピッチに立つチャンスはあるだろうとモチベーションを高めていたのだろう。

 今季の伊東のポジションは、チーム事情で2トップの一角が多かったが、今回は5−4−1の右サイドでスタメン出場。本職の右ウイングで存在感を発揮できる環境が整ったのだ。
 
「(オスカル・ガルシア)監督からは、『ちょっと中気味にプレーしろ』とは言われましたけど、サイドで何回か受けれる場面はあった」と本人も言うように、序盤は悪くないスタートを見せていた。

 ところが、22分に早々と退場者が出てしまう。今季8戦中5戦でレッドカードが出ているチームの現状に、日頃、冷静な伊東も「ホント審判のレベルをどうにかしてほしい。マジで試合が壊れちゃうんで」と苦言を呈したが、一度下された判定は覆らないのがサッカーだ。S・ランスはいち早く4−4−1に布陣を変更し、10人の劣勢をしのぐしかなかった。

 そうなると、伊東はより強引に右サイドを突破していくしかない。その割り切りが良い方向に出て、確実にチャンスは増えていく。ただ、マッチアップするモナコの左SBカイオ・エンリケも的確な対応を披露。スコアレスで前半を折り返した。

 そして迎えた後半。モナコは一瞬の隙を逃さず、47分にロシア代表のアレクサンドル・ゴロビンがヘッドで先制点をゲット。S・ランスはさらなる苦境に追い込まれる。その後、伊東の右CKから、同点弾が生まれたかと思われたが、オフサイドで取り消されてしまった。

 一方のモナコはここで畳みかけるべく、フィリップ・クレマン監督はさらなる刺客を投入する。その1人が65分にゴロビンに代わって送り込まれた南野。現日本代表攻撃陣の主力同士の直接対決がついに実現したのである。
 
 2人はそれぞれ右サイドでプレー。伊東はスピード、南野は周囲との連係を生かしながら積極的な仕掛けを見せる。そんななか、大きな結果を残したのは南野。86分、スイス代表FWブレール・エムボロからのパスを右前方で受け、GKとの1対1を冷静に仕留め、新天地初ゴールを奪った。

「自分たちが攻撃的に行くことになり、ディフェンダーを1枚減らして左サイドバックがいなくなったんで、あそこのスペースを普通に使われた。拓実には『フリーすぎ。ラッキーでしょ』と話をしました」と伊東は試合後に語る。

 振り返ってみれば、ヘンクに在籍していた2019年11月27日のチャンピオンズリーグ(CL)のレッドブル・ザルツブルク戦でも、南野の一撃を食らっている。その過去も背番号39の脳裏をよぎったようで、「CLのときも拓実に決められましたし、ちょっと相性悪いですね。まあラッキーですけど、あいつの場合は…」ともコメントしていた。確かに、今の伊東にとって南野は「因縁の相手」になるのかもしれない。
 
 さらに伊東は、後半アディショナルタイムにフランス代表FWウィサム・ベン・ヤーデルの3点目をお膳立てした南野の好プレーも目の当たりにさせられた。となれば、「今日は完全に主役の座を持っていかれた」という思いが浮かんでも当然だ。

 それでも、同じリーグで結果を残し、存在感を強烈にアピールした代表の盟友には大きな刺激を受けたはず。2人がお互いのストロングを出し合う前向きな姿勢を示し合ったゲームは、19日から活動する日本代表にもプラスに働くはずだ。

 もう1つ付け加えると、伊東にしてみれば、柏レイソルからヘンクに赴いた際の指揮官だったクレマン監督と再会し、労いの言葉をかけられた。それもポジティブな出来事だったと言っていい。

「当時、私はディフェンダーの背後を抜け出すスピードを持った選手を探していて、純也を見つけた。最初から非常に良いフィーリングを持ったが、6か月後に一緒にリーグ王者を獲得した」と話す恩師も、快足アタッカーの成長を改めて実感した様子。南野とともに活躍を期すカタール・ワールドカップに向けても「日本が勝てるか分からないが、素晴らしい経験になる。ワールドカップ出場は一生の中での大きな出来事だ」と期待を寄せていた。

 0−3という苦い敗戦を受け、さまざまな感情が渦巻いたモナコ戦。これを機に伊東はさらなる飛躍を誓ったに違いない。自身の突破力と推進力に磨きをかけ、初参戦の欧州5大リーグで圧倒的なインパクトを残すべく、ここからさらにギアを上げること。そして、初のW杯で結果を残すこと。その実行を改めて強く願いたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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