2022年カタール・ワールドカップ(W杯)を2か月後に控える日本代表にとって、ドイツ・デュッセルドルフで9月19日から始まった合宿は事実上、最後の強化の場。23日のアメリカ戦、27日のエクアドル戦と、この2連戦を実りあるものにしなければ、本大会でドイツとスペインが同居するグループを突破するのは厳しくなる。そういう意味でも、今回は非常に重要な活動と言っていい。

 迎えた初日はデュッセルドルフ在住の子どもたちとの交流からスタート。長友佑都(FC東京)、権田修一(清水エスパルス)、相馬勇紀(名古屋グランパス)の国内組3人を除く27人の選手たちはリラックスした表情を見せていた。

 代表のエースナンバーを背負う南野拓実(モナコ)も笑顔で対応。前日18日のリーグ・アン第8節、スタッド・ドゥ・ランス戦で1ゴール・1アシストの大活躍を見せた直後だけに、気分良く代表に合流できたのではないか。

 今年2月のサウジアラビア戦での1得点にとどまったW杯アジア最終予選、4試合が組まれた6月シリーズでの停滞感、新天地・モナコ移籍後の出番の少なさなどから、最近の南野は代表において厳しい評価が続いていた。三笘薫(ブライトン)の台頭もあり、「控えに回したほうがいい」と指摘する代表OBや関係者も増え、本人も苦い思いを味わったに違いない。

 しかしながら、65分から途中出場したS・ランス戦を見る限り、確実にコンディションが上がってきた様子。そこはポジティブに捉えてよさそうだ。
 
「我々は非常にフィジカルを重視するチーム。昨季も欧州トップ5に入るレベルのフィジカル強化を行なった結果、全選手が強さを増した。そんな負荷の高さゆえに、タキも今夏の加入当初はかなり疲れていたが、今はフレッシュな状態になってきている。週ごとにコンディションが改善しているので、プレーの質も向上していたと思う」

 モナコのフィリップ・クレマン監督がこう説明した通り、南野の出番が少なかったのは、単なる不調というわけではなく、ハードメニューの影響による部分が大きかった模様。その負荷と強度に慣れた今、彼は1つのハードルを越えたと見ていいだろう。

 加えて言うと、新天地で優れたタレントたちと切磋琢磨し合えているのもポジティブな点。フランス代表FWでキャプテンのウィサム・ベン・ヤーデル、スイス代表FWブレール・エムボロ、ロシア代表MFアレクサンドル・ゴロビンらと共演できる環境はそうそうない。彼らと良好な関係性を築きつつあることも大きい。

 とりわけ、S・ランス戦のリーグ初得点をアシストしてくれたエムボロは、南野への親近感を覚えている様子。というのも、彼は柿谷曜一朗(名古屋)のバーゼル時代の同僚。柿谷と南野がセレッソ大阪で先輩後輩だったことをよく理解したうえで、接しているのだ。

「タキが大阪でヨウイチロウと一緒にプレーしていたことはよく知っている。彼はナイスガイで、ドイツ語が上手いし、良いコミュニケーションが取れている。時々、日本語も教えてくれる。しかもタキは高いクオリティを持った選手。モナコ初ゴールは、ものすごく嬉しいし、もっと得点を取ってほしい」とエールも送っていた。新たに生まれた信頼関係も南野の後押しになっているはずだ。
 
 クレマン監督が「2人は似たサッカーをする」と話すヤーデルとの連係強化も追い風だ。「スタッド・ドゥ・ランス戦でも興味深い2人のコンビネーションが随所に見られた。これは未来に向けて非常にポイントだ」と指揮官も期待を口にした。

 このように、今の南野には新天地で上昇気流に乗れそうな好材料が複数ある。シーズン序盤の停滞感を完全に打破するのも時間の問題ではないか。

 そんな状況だから、今回の代表活動も自信を持って挑めるはず。南野はここまでブレることなく自らの役割を貫き、チームの勝利のために身を粉にして戦ってきたし、地道なアプローチを森保一監督も把握していたが、どうしても結果だけが物足りなく映った。

 ゴールやアシストという目に見える数字を残せるようになれば、誰も文句を言わなくなる。日本を勝利へと導くダイレクトな結果を、今回の2連戦では是が非でも残したいところだ。
 
 そこで、森保監督には南野のポジション再考を試みてほしい。最近の主戦場である4−3−3の左サイドだと、彼は中央寄りの位置でプレーするため、運動量や守備負担が多くなり、ゴール前での迫力が低下する嫌いがあるからだ。献身的なハードワークは日本代表にとっての武器ではあるが、フィ二ッシュの精度というより大きなストロングが影をひそめるのは芳しいことではない。

 それを回避すべく、フォーメーションを4−3−3から4−4−2に変更し、最前線で南野を古橋亨梧(セルティック)や伊東純也らと組み合わせるのも一案。大迫勇也(ヴィッセル神戸)、浅野拓磨(ボーフム)という最終予選で1トップを担ってきたFW陣が不在の今は、新たなチャレンジに打って出やすいタイミング。S・ランス戦での右サイドも含め、南野の最適解を見出すこと。それが9月2連戦の重要テーマの1つとなるだろう。

 いずれにせよ、南野には「10番」にふさわしい輝きを取り戻してもらわなければ困る。本来のイキイキとしたプレーでカタール本大会に大きな希望をもたらしてくれることを切に望みたい。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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