カタール・ワールドカップ(W杯)のメンバー発表が11月1日に正式決定した。9月シリーズに参戦した面々も残り1か月間、所属クラブでパフォーマンスを最大限に引き上げ、結果を残し続けないといけない。今回のアメリカ・エクアドル2連戦の出来が全てというわけではないのだ。

 希望を抱く1人が、10番を背負う南野拓実(モナコ)ではないか。ご存じの通り、今回の9月シリーズでは4−2−3−1のトップ下でエクアドル戦のみに出場。先発し、67分間プレーしたが、相手のモイセス・カイセド(ブライトン)らの激しい寄せに潰され、クサビのボールを受けられなかったり、前を向けなかったりと苦労の連続だった。

 見せ場らしい見せ場というのは、左SBぺルビス・エストゥピニャン(ブライトン)にハイプレスを仕掛け、ミスパスを誘い、古橋亨梧(セルティック)のビッグチャンスをお膳立てした40分の場面と、三笘薫(ブライトン)の左サイドの崩しにニアサイドで呼応し左足ボレーを放った57分の決定機くらい。

 彼と代わった鎌田大地(フランクフルト)が良い形でボールに関わり、攻撃のギアを一段階アップさせたことを考えると、低評価を与えられるのも、やむを得ないところだろう。
 
「ピッチがあんまり良くなかったんで、ワンタッチからしっかり止めて前を向こうという意識だったり、ボランチとの関係性を良くして、前向きな選手を早く見つけて出したかったんですけど、距離感が良くなかった。でも、ああいうところでしっかり収めて前を向いていく力は課題だなと感じましたし、もっとシュートに関わっていきたいと思います」と本人も悔しさをにじませた。

 森保ジャパン発足当初から主戦場にしてきたトップ下に、約2年ぶりに陣取り、躍動感を取り戻せるという期待が大きかった分、南野自身も失望感を覚えたに違いない。

 それも所属クラブでの現状によるところが大だろう。今夏に赴いたモナコでは、欧州トップ5に入るほどのハードなフィジカル強化を強いられ、疲労が蓄積。キレを出せない状態が長く続いたうえ、ポジションが目まぐるしく変わっているのだ。

「モナコでは(18日のスタッド・ドゥ・ランス戦のように)右サイドに入ることもあるし、左サイドも4−4−2の前目もやっている。2トップのトップ下にも数回入ったりしているし、システムも頻繁に変わるので、かなり流動的な感じです。それでも、代表に来た時の頭の切り替えは大丈夫。このチームでは4年間やってますし、もうワールドカップ前なんで言い訳はできない」と本人は神妙な面持ちで語っていたが、新天地での適応のハードルは想像以上に高いようだ。
 
 鳴り物入りでフランスに渡り、多彩な役割を託され、それを頭で理解しながら、得点に直結するプレーをしなければいけない2か月間というのは、さすがの南野も負担が大きかったはず。頭がクリアにならず、混乱した時期もあったことだろう。そういった迷いが今回の代表でも垣間見えた印象だ。

 とはいえ、W杯は目前に迫っているし、一つひとつ、問題を解決して前進していくしかない。まずモナコで左右のサイド、あるいはFWに入った時に、自分が何をすべきかを今一度、整理し、ピッチ上で表現していくことから始めるべきだ。

 フランス初ゴールを決めたS・ランス戦は相手が10人に減り、しかも対面の左SBが攻撃参加して目の前のポジションがガラ空きだったため、得点を奪うことは比較的容易だった。けれども、今後も同じようにいくとは限らない。エクアドル戦のカイセドのようなハードマーカーに激しく寄せられ、真っ向からボール奪取に来る相手もいるだろう。

 そこで南野は冷静に敵を観察し、ボールを落ち着かせる余裕を取り戻さなければいけない。リバプールで2年半プレーした男には必ずそういう仕事ができる。確固たる自信を持つことが、完全復調への第一歩ではないか。

 そのうえで、ゴールという結果を貪欲に追い求めていく構えだ。
 
「やっぱりゴールは一番、選手にとって良い薬になる。良い流れをこのまま続けていければいいかなと思います」と彼は言う。モナコの日程を見ると、今週末の10月2日のナント戦からメンバー発表までの1か月間には、リーグ、ヨーロッパリーグ含めて8試合。浮上のチャンスはいくらでもある。この機を逃す手はないのだ。

 そうやってモナコで戦いながら、代表合流時のプレーのイメージを自分なりに明確化させておくことも重要だ。ご存じの通り、4−2−3−1ならトップ下、4−3−3なら左サイドというのが南野の基本的な定位置。

 エクアドル戦でのトップ下はかなり久しぶりで、周囲を取り巻いていた古橋、三笘、田中碧(デュッセルドルフ)らとの共演経験が浅く、良好な関係性を築きにくかっただろうが、ここで一度経験したことによって、次はやりやすさが増す。そこで「自分らしさ」を発揮できるように努力していくべきだろう。

 今は「鎌田より序列が下」「スタメン落ち濃厚」などと周囲から酷評されているが、本人はそこまで気にしていないはず。本当の勝負は2か月後だと割り切っているに違いない。

 実際、過去のW杯を見ても、松井大輔(Y.S.C.C.横浜)、乾貴士(清水)のように、直前まで本番に出られるかどうか微妙だったにもかかわらず、本大会で完璧にアジャストし、大活躍した面々は何人もいる。南野もここまでのネガティブな声を一蹴するような仕事を見せられる可能性は大いにある。一発逆転のチャンスを信じて、一目散に突き進むしかない。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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