オランダリーグ17位のカンブールが10月1日、首位PSVを3―0で下す一大センセーションを起こした。中盤を制圧したカンブールはPSVの「個」の力を封じ込んだばかりでなく、一人ひとりの選手が持てる力を出し切って、まさかのスコアで快勝した。

 左SBを務めたファン・ウェルメスケルケン際は90分、チームの3得点目となるシュートを決めて、スペクタルなショーを締めくくった。
 
 右サイドからのクロスのこぼれ球を右足で思い切って振り切ったシュートを、際は「もう打つしかなかった。あれだけいいボールが来ることはほとんどない。嬉しかったですね。17位のチームが首位に3―0で勝つことなんて、めったにない。僕がこういう試合でゴールを奪えたことは自信にもなります」と振り返った。

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 28歳のDFにとって、オランダリーグ通算3ゴール目だが、これまでの2点は2部時代のもの。1部では54試合目にして初のゴールだった。

「これだけ試合に出ていてやっと1点というのは、自分としては物足りない。ズウォーレ時代もシュートはたくさん打っていたし、練習試合ではユトレヒト相手に2得点決めたり、ゴールの感覚はあったんですが、やっと決まりました。今季は自身の評価を高めるシーズン。来シーズン、より自分のレベルを上げることができるように今季は数字も大事になってくる。そういった意味でまず1点取れたのは大きいです」
 
 PSVは、ストライカーを務めたシャビ・シモンズとトップ下のフース・ティルがプレスをかけてくるので、セントラルMFイブラヒム・サンガレ、ジョーイ・フェールマンに対し、カンブールは”3対2”の数的優位を作れる。そのことを見越した上で採った敵の積極策に、PSVは答えを出せないまま試合を終えた。

「中盤を掌握できて良かった。今日は本当にみんなが生き生きとしてプレーしてました。ノッてましたね」

 本来のポジションは右SB。しかし、前節のRKC戦で左SBのアレックス・バングラが退場したことから、左サイドを守ることになった。立ち上がりは相手の右ウインガー、イスマエル・サリバリに押され気味だったが、徐々に1対1のイニシアチブを握っていき60分で交代に追い込んだ。

「僕の出来はボチボチといったところでした。うちのチームの戦術としてセンターバックがドリブルインをして、サイドバックは逃げ道としてラインを下げている。センターバックからサイドバックへのパスは下がってくるボールなので、相手チームにとってはプレスをかけるタイミングになる。その結果、逆サイドのミッドフィルダーかゴールキーパーしか出せるところがない。

 しかし、(右利きなので)ボールを持ち直して逆サイドのミッドフィルダーに中々良いボールを供給できなかった。PSV戦では何回かドリブルしているうちに『こうやればいける』という方法をいくつか見つけられましたが、この試合ではリスクを負う必要もなかったので極力シンプルにプレーしました。次の試合も恐らく左サイドバックとしてプレーすると思いますが、今日のプレーで大体の感覚を得ることができました」
 
 名門相手に試合を支配し、大差を付けて勝利したチームが17位に沈んでいたとは驚きだ。

「ボールを握っている試合が多いので、やっているサッカーは良いんですが、今季はレッドカードが多く(3枚)、もったいない試合が多い」

 2期に渡ってカンブールを指揮するヘンク・デ・ヨング監督は、小クラブを魅力的なサッカーをするチームに育てたアイコン的存在で、前節の退席処分からスタンド観戦となったPSV戦では多くのファンと交流していた。そのオープンな指揮官のキャラクターは、カンブールのチームカラーになっている。

「チーム自体がとても明るい。もちろん、中には難しい試合もありますが、チームの雰囲気が変に崩れないですね。例えば(前節のように)2枚レッドカードを貰って負けたら、普通はギクシャクするじゃないですか。そういうことがあまりないので、みんな和気あいあいとやれている。そこはやっぱりヘンク監督の人柄とか、雰囲気の持って行き方があると思います」

 アウェーで負けた後のバスの雰囲気を尋ねると「まあ、さすがにそれは……」と言ってから際は続ける。

「しかし、次の週になればみんな切り替える。レッドカードを貰った選手もあまり落ち込むこと無く、みんなで普通に楽しく……。『楽しく』という言い方はプロとしてちょっと良くないですが、変な足の引っ張り合いもないですし、チームとしてひとつになっている。本当にいいチームです」
 
 前節、RKC戦を1―5で大敗しても、負傷者が多くベストメンバーから程遠くても、デ・ヨング監督の下、カンブールはしっかりいい雰囲気を作ってPSV戦に挑むことができ、クラブ史に残る試合をやってのけた。

 PSV戦で右SBを務めたベテランのドーク・シュミットは、相手チームのエース、コディ・ガクポと元気印のシモンズを抑え込んで高評価を得た。

「こういう高め合えるチームメイトがいるのはいいですね。試合に出てないときにもドークはしっかりやっていた。コツコツやっている人間が周りにいるのは大きい。投げ出すこと無くしっかりやっている選手が活躍するのは、僕も嬉しいですよね。彼は僕と同じ街に住んでいるので一緒にカンブールに来ることもあるんです。中々同じポジションのライバルとドライブしてクラブに来ることもないと思いますが、そういう意味でも良いチームメイトに恵まれたと思います」

 2部に降格したズウォーレを強い意志で退団し、今季も1部リーグで戦う際は「ますますサッカーが楽しくなってきました。見えなかったことがどんどん見えてきた」と充実した表情で語る。オランダに来て10年。1部、2部併せて189試合の経験を持つSBは「28歳になりましたが、これからです。まだまだ成長できる」とシーズンを通じてカンブールで活躍することを誓っていた。

取材・文●中田 徹

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