1年前までは無名の存在だった。世代別代表歴はなく、経験しているのは県選抜のみ。わずか1年足らずで日の丸を背負うまでに成長を遂げたレフティが、初の国際舞台で飛躍のきっかけを掴もうとしている。

 10月3日にAFC U-17アジアカップ予選の初戦を迎えるU-16日本代表。来秋のU-17ワールドカップの予選を兼ねた来年5月の本大会出場権を獲得するためには、5チームの総当たりで行なわれる予選を1位で勝ち抜けるか、各組2位の上位6チームに入らなければならない。

 グループAに組み込まれた森山佳郎監督が率いるU-16日本代表は予選が行なわれるヨルダンの首都・アンマンへ渡り、先月27日から現地で調整を続けてきた。その中で3日に行なわれるフィリピン戦に向けてモチベーションを高めているのが、神村学園でプレーするDF吉永夢希(2年)だ。

 早生まれの2年生のため、チームでは最年長。だが、1年前は代表でプレーしておらず、神村学園でもレギュラーではなかった。だが、今年に入って急成長を遂げる。インターハイ予選で森山監督の目に留まり、7月の代表候補合宿で初めて代表に招集された。合宿最終日に行なわれた市立船橋とのトレーニングマッチでは左SBとして出場。果敢に攻め上がってゴールも決めて評価を高め、森山監督も「面白い」と目を細めるパフォーマンスだった。
 
 その後は自チームに戻り、夏の全国舞台で左SBのレギュラーとしてプレー。惜しくも初戦敗退となったが、得意の攻撃参加と左足のキックは全国舞台でも際立っていた。

「前に上がっていく迫力に関しては相当能力を感じる」と指揮官から期待を寄せられており、本人も意欲は十分。初戦前日のトレーニング後には「今まで県選抜が最高。今回は日本を背負って戦う。気合が入っています」と初めての国際試合に胸を躍らせる。

 環境にも順応しており、中東らしい雰囲気も含めて楽しめているのもプラスの材料で、「コーランが聞こえてくるのも楽しい」という言葉からも異国の文化に戸惑っていないことが伺える。食事面でも神村学園の後輩のFW名和田我空(1年)から助言を受け、ふりかけや日本の白米などを持参。コンディションも上がっており、順調な仕上がりを見せている。
 
 攻撃力を買われて一列前で起用される可能性もあるが、そこも本人は意に介さない。「バチバチくるイメージがある」とアジア特有の戦いを警戒しつつ、吉永は言う。

「神村学園でもやったことがある。慣れないところもあるけど、自分の持ち味を出していければいい」

 AFC U—17アジアカップ予選は今までU-15世代で行っていたが、同大会の予選が今回からU-16世代の秋に移行された。もし往来のレギュレーション通りに開催されていれば、その時期はチームでレギュラーの座を掴んでいなかったため、代表の座は巡ってこなかったかもしれない。そうした巡り合わせも含め、今回は成長を遂げる上で大きなチャンスだ。
 
 神村学園で代表経験があるMF大迫塁(3年/C大阪入団内定)、FW福田師王(3年)からも「楽しんで頑張ってこい」とエールを贈られたレフティは、アジアの舞台を経てどのような進化を遂げるのか。「点を取ってチームを勝たせる」と言い切る成長株にとって、フィリピン戦は新たなスタートになるはずだ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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