タケ・クボ(久保建英)のレアル・ソシエダへの売却は、極めて正しい判断だった。レアル・マドリーは、権利の50パーセントを確保しつつ、見込みのある若手をレンタルではなく売却するのを常套手段にしている。理由は単純明快で、受け入れ先で正真正銘のチームの一員として扱ってもらうためだ。

 それは過去3シーズン、買い取りオプションなしで、レンタルでクラブを転々としてきたタケのキャリアを振り返れば、容易に理解できるはずだ。即戦力としての働きを見せることができなければ、現場を預かる監督は自前の若手選手を優先的に起用する。ビジャレアル時代はとりわけその傾向が顕著だった。

 一方、ソシエダでは、まったく別のことが起こっている。タケに対する期待は、出場機会という形だけでなく、その起用ポジションにも表れている。

 もちろんチームメイトの見方も変わる、完全移籍で迎え入れられたことで、人間関係の構築がよりスムーズに進み、中心選手のひとり人として受け入れられやすくなるというメリットがある。周囲から信頼を得ながら、主力の自覚を持ってハイレベルなパフォーマンスを発揮する。東京五輪に出場したU−24日本代表における状況と同じである。

 マドリーにとってはタケが活躍してくれることは歓迎すべきことだ。手放したのを後悔しているようなことは一切ない。実際、権利の50パーセントを確保しているのは、成長を遂げれば、呼び戻す可能性があるというメッセージに他ならない。
 
 交渉の末、合意に達した契約解除金は6000万ユーロ(約84億円)。マドリーは3000万ユーロ(約42億円)で呼び戻すことが可能で、この金額は、復帰を検討する際の適性価格として設定された。決して少ない額ではないが、実際にその事態に直面することになれば、マドリーは喜んで権利を行使することになるだろう。

 ソシエダは2年前から獲得を狙っていた選手を、希望していた通りの完全移籍という形で迎え入れた。マドリーは過去3シーズン、伸び悩んでいた若手をそのポテンシャルに見合ったクラブに武者修行に出した。そしてタケは、求めていた安定を、理想の環境で手に入れた。今回のオペレーションは三者にとってプラスとなった。

 裏を返せば、全てはタケ次第だ。マドリーが見込んでいる成長を遂げれば、復帰の話が持ち上がるだろうし、逆にレギュラークラスの実力がないと判断されれば、両者はこのまま袂を分かつことになる。

 タケに付けこむ余地があるとすれば、攻撃的なポジションで退団者が相次いでいることだ。今夏のイスコとガレス・ベイルに続いて、エデン・アザールとマルコ・アセンシオも来夏マドリーを離れる可能性がある。その場合、クラブは補強に動くことになるが、真っ先にターゲットとなるのがブラヒム・ディアス(ミランにレンタル移籍中)とタケだ。

 その意味でも、早々に新天地にフィットし、活躍を見せていることは大きなアピール材料になる。タケのマドリー復帰への扉はまだまだ大きく開いている。

文●セルヒオ・サントス(『Relevo』 レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸

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