『キャプテン翼』という飛び抜けた特徴を持つ南葛SC。しかし、チームの出色の特徴はほかの取り組みからも見て取れる。

 2022年シーズン、南葛SCに在籍した選手は37名。うち21名が自分たちのチームを運営する「株式会社南葛SC」の社員だ。プレーするチームで社員として働く。実際にそういう例はあるかもしれないが、ここまで多人数の選手を雇っているチームはないのではないか。

 この特徴ある現実のもと、選手の雇用を確保する以外にどのようなメリットがあるのか。
全2回にわたるこの企画、1回目は最も早くに選手社員になったうちのひとり、楠神順平に話を聞いた。

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 南葛SCを運営する株式会社南葛SCで、選手を社員として採用する「選手社員」が誕生したのは2020年のこと。石井謙伍、佐々木竜太、そして楠神順平の3人が“オリジナル3”だ。それから3年、最初3人だった選手社員は21人にまで増えた。

「1年目は手探りというか、3人で協力し合いながらという感じでしたが、2年目に5人になり、そして3年目の今年、一気に21人にまで増えて、組織になってきたかなと感じます」

 そう語る楠神が、この2年を振り返る。
「選手社員になって早々コロナ禍になって、緊急事態宣言などもありまったく外に出られない状況になりました。当時は仕事として読書をしていましたね。それこそ『キャプテン翼』とか、いろんな本を読んでは感想文をGMに送って。基本的に読書が好きなので楽しかったですけど」

 本来はパートナー営業などを行なう予定が、コロナ禍が長引き、なかなか外に出られない。
「最初にやった仕事は南葛SCのグッズデザインでした。アパレルにはもともと興味があったというのもありますが、コロナ禍でできる仕事がグッズ制作くらいしかなかったので」

 実際にパートナー営業に出るようになったのは2021年の夏あたりから。選手社員は5人に増えていた。そして2022年の今、4人ごとのチームが4つと5人のチームが1つ。計5つのチームがそれぞれの役割を担い、組織として動くようになった。

「昨年までに社員になっていた5人が各チームのリーダーになっています。楠神チームは僕のほかに村越(健太)と秋山(大地)と安羅(修雅)の4人。イベント企画面を担当しています」

 誰がどのチームに割り振られるかは、クラブによって決められたという。

 全チームは基本、パートナー営業を行なう。葛飾区、東京都、全国各単位で担当エリアが割り振られていて、各自で飛び込みやメールアポイントを駆使しながら営業に精を出す。加えてイベント企画、サッカー教室、グッズデザイン、広報といったようにチームごとの役割が割り振られている。

「選手社員が増えたというのはとても大きいことで、これまで一人では手の届かなかったところもみんなで補えますし、効率も良くなりましたし、なにより賑やかになりました」
 
 南葛SCでプレーして南葛SCで働く。そのメリットは大きいと感じている。

「自分の所属するチームを良くするための活動が仕事になっている。つまり、自分たちのサッカーを売り出すような感覚。なので熱も入りやすいです」

 営業、と聞くと難しさや厳しさの側面の方を想像しがちだが、決してネガティブな印象ではないようだ。
「結構飛び込みが多いんですが、自分たちで制作した南葛SCのポスターを貼っていただくお願いをしがてらお話をさせていただいています。強引にではなく、地元の方と談笑しながらもし興味があれば、というスタンスです。なので営業に対するハードルは高くはなかったです」

 訪問先で出会うサッカー好きの中には、自分のことを知っている人もいる。まさに自身が営業ツールだ。一方で、気づかされる点も少なくない。

「『キャプテン翼』はものすごく有名でも、南葛SC自体はまだまだ葛飾区に根付いていないなと。知っていただいている方もいますが、まだ『あ、本当にそういうチームがあるんですね』という反応も多いんです。南葛SCはSNSを積極的に活用していて、その反応だけで判断すれば認知が拡大している感覚に陥るんです。でも、SNSだけでは届いていない部分があります。やはり葛飾という下町でもっと認知してもらうには、どんどん足を使って生の人間が出ていかないといけません」

 実際に足を運び、顔を出し、人と直接触れ合う。その大切さは、もうひとつの仕事であるイベント企画でも感じるところだ。
「地元の図書館で選手が絵本の読み聞かせを行う『絵本 de キックオフ!!』というイベントを考えたりしました。もともと図書館の方からお誘いがあったのですが、なにをやるかというのはチームのみんなで話し合って決めました。絵本の読み聞かせは自分が川崎フロンターレにいた時に一度やったことがあって、すごくいい取り組みだと思っていたので。あとは図書館を訪れる人たちにパートナーさんの飲料水を配りながら、ホームゲームのチケットをプレゼントする企画をしたり。下町といえば銭湯だろう、ということで、YouTubeで『下町銭湯プロジェクト』と題して銭湯巡りを配信する企画もしました」

 地域の人々との触れ合いはプロの時もあった。しかし、自分で作り上げたイベントでの触れ合いとなると意味合いが変わる。自分たちで考え持ち込む企画もあるが、逆に人づてに紹介されたり誘ってもらえる案件もある。その時点から人と人との関わりは生まれる。

「プロの時はすべてが用意されていて、最後に自分がポンと出るだけでした。どういうイベントかも当日聞かされて。でも、今は自分たちで土台から作り上げていく。誰をいつ、どこに呼んで、といった段取りを全部決める。なので、イベントが形になったり参加してくれたりする人を見るとめちゃくちゃ嬉しいんです。サッカーとはまた違う喜びがあります。また、スタジアムやグラウンドでは聞けない直の声が聞けたり、応援してもらっている実感があるとすごくやりがいも出てきます」

 仕事ぶりを聞きイベントの様子を見るに、やっている仕事は、そして感じる喜びややりがいは、一般企業のそれと同じだ。
 
 自身、サッカーを続けながら働くためのスキルを身につけたくて南葛SCにやってきた。それから3年。

「南葛SCもカテゴリーが上がってきて、この先プロの集団になる段階に入るのでしょうけど、今、自分のスキルを上げながらサッカーもできるのは本当にありがたく思っています。これがサッカーに関わらない全く別の仕事だったら、おそらく戸惑いもあったかもしれませんが」

 今年から寮が整備され、仕事場となるオフィスも寮の1階に移った。仕事時間は11:00〜17:00で、その後練習に向かう日々。サッカーに集中できる環境とリズムが整ったことは間違いない。
「今は電車通勤をしています。駅においしいパン屋があるので、そこでパンを買う。始業時間より1時間くらい早く行って、パンを食べながら事務作業をするのがルーティンになっています(笑)」

 電車で通うのは高校以来だという。始業時間がほかの企業に比べ遅いぶん、ラッシュに巻き込まれないのもありがたい。選手のプレー環境に関して、課題がすべて解消されたわけではないが、ひとつずつ確実に整えられてきているのは間違いない。

「ほかの選手といっしょに仕事をしていると、グラウンドでは見えない人となりが分かったりするんですよ」

 自分がプレーするチームがある。そのチームのために仕事をする。仕事をすることでチームメイト同士の理解が深まる。理解はさらに、チームの周囲にまで及ぶ。

「イベント企画をすることで、その中で動く人たちの大変さが分かるようになりました。ホームゲームひとつとっても、それを運営するのにどれだけたくさんの人が動いていることか。どれだけの協力の上に成り立っているか。正直、プロ選手の時はそこまで分かっていませんでした。今は本当に感謝しかないです」

 苦労もある。いまだ慣れないこともあるだろう。でも、サッカーをしながら働いている今を「すごく恵まれている」「めちゃくちゃ楽しい」と言える。これは幸せなことだ。

「南葛SCほど多くの選手を社員として、自分たちの会社で雇っているチームはないかもしれません。仕事のスキルをプラスしながらサッカーに打ち込めるというのはなかなかできないことなので。3年前、いい選択をしたなって本当に思います」

 次回は“オリジナル3”とは反対に、今年から大卒1年目で新人選手社員になった立場から、株式会社南葛SCの仕事とサッカーを語ってもらう。
※後編に続く。次回は11月11日に掲載予定。

取材・文●伊藤 亮

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『NEXT DREAM』について
KLabが提供するスマートフォン向け対戦型サッカーシミュレーションゲーム『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム〜』のゲーム内で配信中の、作者の高橋陽一先生原案の新ストーリー。グランドジャンプ増刊『キャプテン翼マガジン』(集英社)で現在連載中の『キャプテン翼 ライジングサン』で描かれているマドリッドオリンピック後、おなじみのキャラクターたちがさらなる新天地で活躍する様子を、新キャラクターの登場とともに、ゲーム内で毎月新たなストーリーが公開されている。

『NEXT DREAM』特設サイト
https://www.tsubasa-dreamteam.com/next-dream/

<お知らせ>
 南葛SCをスポンサードするKLabが、今季もコラボレーションキャンペーンを開催中。南葛SCの公式戦の試合結果に応じて、同社が運営するスマートフォン向け対戦型サッカーシミュレーションゲーム『キャプテン翼 〜たたかえドリームチーム 〜』のゲーム内アイテムをプレイヤーにプレゼントする。

 プレゼント内容は、南葛SCが勝利すれば「夢球×5」、勝利以外であれば、「コイン×28,300」となっている。さらに、勝利の際は「夢球×5」に加え、南葛SCが入れた得点分の夢球も配布される。南葛SCを応援して、アイテムをゲットしよう。 
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