悲願となる初の日本一へ。神村学園が冬の大舞台に向け、順調な仕上がりを見せている。

 近年、激戦区である鹿児島で圧倒的な力を見せつけ、U-18高円宮杯プリンスリーグ九州でも毎年のように優勝争いを演じてきた。しかし――。肝心なところで勝ち切れない。それが長年の課題だった。

 昨季もそうだった。夏のインターハイでは自慢の攻撃力で勝ち上がった一方で、準々決勝では米子北に封じられて敗戦。12月のU-18高円宮杯プレミアリーグ参入プレーオフではエースのFW福田師王(3年)が怪我で欠場した影響もあり、最終盤に失点をして夢破れた。

 そのまま迎えた高校サッカー選手権も初戦となった2回戦では守備陣が崩壊。帝京長岡に2点を先行され、巻き返しを図ったものの2−3で軍門に降った。

 そうした過去を払拭すべく迎えた今季。C大阪への入団が内定しているMF大迫塁(3年)、卒業後はボルシアMG入りするFW福田といった超高校級のタレントを揃えている一方で、シーズン前は不安も大きかった。
 
 大迫が「去年のような上手さはない」と評した通り、先輩たちのような技術は持ち合わせていない。長年積み重ねてきたポールを動かしながら攻め込んでいくスタイルの構築にも時間が掛かり、スムーズにことは運ばなかった。

 シードとして2回戦から挑んだ夏のインターハイも期待されていたが、履正社に0−2で敗北。大会前に新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大会前に十分な活動ができなかったとはいえ、何もさせてもらえないまま大会を去った。

 だが、ここからチームは右肩上がりで調子を上げていく。興國、昌平、静岡学園が参加したユースワールドチャレンジ・プレ大会では夏の遠征で疲労が溜まっていた中で優勝。自信を深めて後半戦に向かうと、夏の間に控えメンバーが大きく成長して選手層がグッと増した。有村圭一郎監督は言う。

「今は誰が出ても遜色なくできる。日替わりで色々変えながら、いい感じでここまでは来ていると思う。夏までは(計算できたのは)12、13人。怪我人も戻ってきたし、そういう意味では良いポジション争いができている」
 11月4日に開催された高校サッカー選手権の準々決勝では鹿児島南に9−0で快勝。実力差があったとはいえ、力をつけてきた選手たちが活躍した。

 FW西丸道人(2年)がネットを揺らせば、途中出場のFW高倉太朗(3年)も終了間際にゴール。スタメンで起用されることが多かったU-16日本代表のFW名和田我空(1年)もベンチスタートに発奮し、きっちりと得点を奪って有村監督に存在をアピールした。

 また、J1清水エスパルスに籍を置く髙橋大悟の実弟・修斗(2年)も夏以降に力をつけ、この試合では右サイドハーフでプレー。「お兄ちゃんはゴールを決めることに長けていたけど、彼はまだそこが足りない。ゲームで経験を積ませて、そこの感覚を掴ませたい」と指揮官は課題を口にしたが、局面を打開するシーンがいくつもあった。そうした選手の台頭がチームの刺激となり、選手層の拡充にも繋がっているのは確かだろう。
 
 一方の守備陣も安定感を増しており、球際の勝負で戦えるようになったのは好材料。「守備の粘り強さや球際で戦うことは要求をしているので、徐々にできるようになってきた」と主将の大迫も話しており、最後の局面では身体を張れるようになったことでバランスが良いチームに仕上がってきた。

 12日の決勝では鹿児島実と対戦する。簡単には勝たせてくれない相手になるが、負けるわけにはいかない。準備は整った。充実の一途を辿る神村学園が県予選を勝ち抜き、全国舞台で新たな歴史を作れるか注目だ。

取材・文●松尾祐希(フリーライター)

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