勝利すれば自力でJ1残留が決まるはずだった最終節の鹿島戦。4試合連続の無失点を達成した守備陣の踏ん張りもあって最低限の勝点1を手にしたものの、ガンバ大阪のJ1残留はあくまでも他力によるものだった。

 遠路はるばるアウェーの地に駆けつけたサポーターは、どん底だったチーム状態を立て直した松田浩監督に「松田、オレ!」と盛大なコールを繰り返し、シーズンの最終盤に意地を見せた選手たちを称えたが、カタルシスを感じさせる光景だと美化するわけにはいかないだろう。

 今季もチームを支えた守護神、東口順昭は試合後、キッパリと言った。「今年に関しては自分たちの力不足だし、それをしっかりと受け入れたい」。

 コロナ禍による不運で残留争いを強いられた昨季と異なり、今季のG大阪はシーズンを通じて低空飛行を強いられた。リーグ戦のみならず、ルヴァンカップでは宿敵、C大阪との同組を勝ち上がれず、天皇杯もベスト16で敗退。7シーズン連続の無冠が続いている。

 今季のG大阪を象徴したのが、0−0で終わったアウェーの鹿島戦だった。

 10本のシュートを放った鹿島に対して、G大阪は後半終了間際に宇佐美貴史が苦し紛れに枠外に放ったシュート1本のみ。

 日韓の代表経験者を数多く擁し、その顔ぶれだけを見れば残留争いに身を投じるチームでないのは明らかではあるものの、得失点差は最下位の磐田に次ぐ、リーグワースト2位。
 
 松田監督の就任後、10試合で7試合が無失点という堅守によって救われたG大阪ではあるが、総得点は1試合平均1点に満たない33得点(34試合)。

 38試合を戦ってやはり33得点だった昨季よりは改善されているものの、もはや攻撃サッカーの表看板は下ろしたも同然の状態が続いている。

 常勝軍団復権の道のりが決して容易いものではないことをクラブも承知済み。昨季まで大分を率いた片野坂知宏前監督に白羽の矢を立てたのは、今季のタイトル争いではなく、チームの確固たる土台を作るのが目的だった。

「ガンバのスタイルという部分があるので、またガンバのスタイル、カラーを取り戻したい」。抽象的な概念ではあるものの、「ガンバのスタイル」と言えば、かつて西野朗監督が率いた時代の攻撃性を想起する人は多いだろう。

 西野体制と長谷川健太体制をコーチとして支えた、片野坂前監督はうってつけの人材だったはずだ。

 しかし、エースの宇佐美が3節の川崎戦でアキレス腱断裂の重傷を負い、戦線離脱。さらに東口も3月に右膝内側半月板損傷の手術でチームを離れ、片野坂前監督は攻守の軸を欠いたまま、シーズン序盤の指揮を執らざるを得なかったのは不運だった。
 
 もっとも、「カタノサッカー」で名を挙げた指揮官に非がないわけではない。8月の解任決定後、「リアクションが行けないとは決して思わないですし、前から守備に行くことがリアクションだとは思っていない」とGMの和田昌裕取締役は擁護したが、片野坂前監督はFWに対して過度の守備力を求めるがあまり、起用の顔ぶれが偏ったのは事実である。

 薄氷を踏む戦いが続いたものの、J1残留というミッションを達成した松田監督が今季の最大の殊勲者だったことは言うまでもない。指揮官への「オレ」コールを聞いた宇佐美も、「マツさんにああいうコールをしてくれたサポーターに、僕らが逆に声援を送りたい感謝の気持ちでいっぱいです」と話したが、14年ぶりにJ1で指揮を執った老練な監督にG大阪は救われたのだ。

 ただ、残留が決定した瞬間、すでに次なる戦いへのホイッスルは鳴っている。

 鹿島に次ぐタイトルホルダーで、過去何度も大一番で火花を散らしあってきた名門のJ1残留に対して、カシマスタジアムに集った鹿島サポーターからも拍手が送られた。

 スポーツの良さを示す美しい光景に宇佐美は「ありがたい対応でした」と素直に謝意を口にしたが、同時に「このハラハラ感を上位で味わいたい」と本音も口にした。

「もう来季に向けて明日から始まっている」。宇佐美が自らに言い聞かせるように口にした言葉は、クラブ幹部が噛み締める言葉でもあるはずだ。

 松田監督との契約は基本的には今季限り。和田取締役を中心に、フロント陣は早急に来季の指揮官を定めることになる。
 
「これだけの成果を出して頂いたので、候補の1人には間違いなく入る」と和田取締役は鹿島戦後にこう話したが、手堅い戦いをベースにした松田体制でさらなる上積みを目ざすのか、新監督のもとで新たなスタイルの再構築を図るのか、難しい二択を迫られる。

 そして、来季監督の選定と同時に鍵を握るのは、絶対的な得点源の確立だ。

 2012年以降、G大阪で二桁ゴーラーが不在だったのは2016年の長沢駿とアデミウソン(それぞれ9得点)、2020年のパトリック(9得点)のみ。もっとも、2016年のFW陣は今思えば、贅沢な数字であるのが寂しい限りだ。

 今季はパトリックがチーム最多の5得点で、レアンドロ・ペレイラが4得点。それに続くのが3得点のダワンと小野瀬康介という近年例を見ない低調な数字である。

 宇佐美とともに三冠獲得に貢献したパトリックは今季限りでクラブを去るが、新エースを誰に託すのか。

 クラブ史上2度目の悲劇は回避したが、G大阪は依然、その岐路に立たされている。

取材・文●下薗昌記(サッカーライター)

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