カタール・ワールドカップ開幕まで10日を切り、各国代表のメンバーが次々と発表されている。

 W杯の登録メンバーはこれまで23人だった。しかし今大会に限ってはその数が3人多い26人になっている。これはコロナに対する対策であるとFIFA(国際サッカー連盟)は説明。ほとんどのチームはこの増員を歓迎している。

 しかし、11月9日にメンバーを発表したフランス代表のリストには、25人の名前しかなかった。現時点で26人マックスを連れて行かないのはフランスだけである。これにはフランスのサポーターもメディアも驚いた。

 W杯は参加するだけでも大変なことだ。そのビッグトーナメントで、選手としても監督としても優勝するというのはとんでもない偉業であり、史上3人しか達成していない。ブラジルのマリオ・ザガロ、ドイツのフランツ・ベッケンバウアー、そして現フランス代表監督のディディエ・デシャンである。

 3大会連続で母国を率いるこの指揮官を、フランス人は非常にリスペクトしているし、彼の言うことには耳を貸す。しかし、今回の招集ばかりは納得がいかない。記者会見でデシャンは「25人いれば十分だから」と説明したが、それでは何も分からない。

【画像】ポグバやカンテが外れても豪華絢爛!フランス代表のW杯メンバー25人をチェック
 実をいうと、デシャンはFIFAが登録選手数を26人に増やしたその日から、この方針に反対の姿勢をとっている。コロナはその言い訳にはならない。26人は多すぎるというのだ。

 規律を重んじるこの指揮官は、小さなチームを率いるのが好きで、22人が最適の人数だと信じている。まあ23人でも良しとしよう。しかし26人は多すぎる。なぜならチームの人数が多ければ多いほど、それだけ一人にかける時間が少なくなるからだ。チームプレーも複雑化する。

 本来ならば、デシャンは23人だけでこのワールドカップを戦いたかった。しかし、信念を曲げて25人にしたのは、ひとえに怪我人のせいだ。ポール・ポグバとエヌゴロ・カンテが故障で招集外。そのうえ、ラファエル・ヴァランヌとプレスネル・キンペンベ、ジュル・クンデも故障を抱えているため、万全ではない彼らをメンバーに入れる代わりに、保険として2人多く選手を入れたのだ。
 
 フランスのメディアやファンは25人に納得できない。この1人の差がチームの足をひっぱるのではと不安に思っている。カタールに行ってから、怪我人が増えたらどうするのか、あと1人連れて行ってもさして変わりはないのではないか。ちなみにもう1人呼ぶとしたら、それはマルセイユのDFジョナタン・クロースだと言われている。

 SNS上では、誰もが25人の真意を探ろうとしている。なかには「彼を呼ぶとPSGから2人で、マルセイユから3人とバランスが悪くなるから、それを避けたんだ」「デシャンはワールドカップの後に代表を去るから結果はどうでもいいんだ」といった声もあった。
 
 どうしても納得できない記者が、会見の最後にもう一度尋ねた。

「26人連れて行けるなら、26人の方がいいんじゃないですか?」

 するとデシャンはこう答えた。

「それならうちの猫を連れていくよ。きっとチームの力にもなる」

 FIFAへの選手リストの最終提出日は14日だが、彼がそれまでに1人追加を決意するとは思えない。

文●リカルド・セティオン
翻訳●利根川晶子

【著者プロフィール】
リカルド・セティオン(Ricardo SETYON)/ブラジル・サンパウロ出身のフリージャーナリスト。8か国語を操り、世界のサッカーの生の現場を取材して回る。FIFAの役員も長らく勤め、ジーコ、ドゥンガ、カフーなど元選手の知己も多い。現在はスポーツ運営学、心理学の教授としても大学で教鞭をとる。

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