元J1指揮官、元JFA技術委員長、元W杯戦士…。多士済々の監督がしのぎを削るJ3新シーズンに要注目!ビッグネームが集まる理由は?
左から沼津の中山監督、松本の霜田監督、相模原の戸田監督、岐阜の上野監督。新シーズン、そうそうたる顔ぶれがJ3クラブの指揮を執る。(C)SOCCER DIGEST
2月17日のJリーグ開幕に向け、60クラブが本格始動している。J1・J2よりも開幕が2週間遅いJ3勢も1月中旬からチーム練習が始まり、新たなシーズンに向けて基盤作りを進めているところだ。
ご存じの通り、今季のJ3はJFLから奈良クラブとFC大阪が昇格して20チームに増加。上位2チームがJ2に自動昇格する。これまでなかった降格制度も新たに追加され、19位がJFLとの入替戦に回り、最下位はJFLに降格することになっている。過去にない熾烈な戦いが繰り広げられるのは間違いないだろう。
こうしたなか、目につくのが指揮官の顔ぶれだ。昨季の頭から続投するのは、福島ユナイテッドFCの服部年宏、AC長野パルセイロのシュタルフ悠紀リヒャルト、奈良クラブのフリアン・マリン・バサロ、ガイナーレ鳥取の金鍾成、愛媛FCの石丸清隆、鹿児島ユナイテッドFCの大嶽直人の各監督。昨季途中から率いているY.S.C.C.横浜の星川敬、カターレ富山の小田切道治の両監督を含めても、全体の約3分の1のみ。残りの3分の2は新たにチャレンジする面々なのである。
なかでも注目されるのは、日本代表としてワールドカップ出場経験のあるアスルクラロ沼津の中山雅史、SC相模原の戸田和幸の両監督の初采配だ。彼らがJの舞台でどんな戦いを披露するのかというのは、両クラブのサポーターでなくても気になるところだろう。
それ以外を見ても、2022年カタール・ワールドカップで代表コーチを務めたFC岐阜の上野優作監督や、J1で数々の実績を誇るテゲバジャーロ宮崎の松田浩監督、ヴァンラーレ八戸の石﨑信弘監督などビッグネームが少なくない。さまざまなキャリアを持つ指揮官が真正面からぶつかり合う今季J3は非常に興味深いリーグと言っていい。
「J1やJ2の場合、監督を選ぶ側の基準が実績や名前ありきになりがちで、新人監督や指導者経験の少ない人材を抜擢しづらい傾向にあります。が、J3はチャレンジしやすい環境にある。サガン鳥栖で結果を残している川井健太監督のように選手時代の経験値や知名度は乏しいものの、有能な指導者を抜擢したクラブにはそれなりのリターンがあるということだと思います」
こう語るのは、今季から松本山雅FCに赴いた霜田正浩監督。彼もまた2010〜2016年に日本サッカー協会の技術委員長を務め、その後、レノファ山口FC、サイゴンFC(ベトナム)、大宮アルディージャで指揮を執った実績ある人材だ。その霜田監督がJ3に参戦するというのは多少なりとも驚きに値するが、本人は躊躇なくオファーを受け入れたという。
「どのディビジョンでも『自分のサッカーで勝ち抜く』というのは一緒。資金不足や選手集めの苦労といったJ3のマイナス面を気にして『やっぱりJ1じゃないと難しい』と考える人もいるかもしれないけど、僕は代表に携わった経験もあって『こうじゃなきゃダメ』という考え方は持っていない。他の監督も同じだと思います。こうしてJ3に多士済々が集まるようになったのも、リーグ30年の成果の1つ。その意義は大きいですね」と前向きにコメントしていた。
中山、戸田、いわてグルージャ盛岡の松原良香といった知名度のある指揮官たちがあえて同カテゴリーからスタートしようと思うのも、「ゼロから自分の色を出しながらチーム作りができる」というメリットがあるからだろう。野心ある指導者が個性ある多種多彩なサッカーを構築し、魅力的な戦いを見せてくれれば、J3は盛り上がるし、Jリーグ自体も活性化する。
2016年に当時J3の大分トリニータの監督に就任し、3年でJ1まで引き上げた片野坂知宏監督のようなサクセスストーリーも期待できる。片野坂監督は2018年にJ1優秀監督賞を受賞。2021年には天皇杯準優勝まで達成している。
2022年のガンバ大阪では、途中解任の憂き目に遭ったが、現在は第2次森保ジャパンのコーチ就任も噂されるほどの存在になっている。そういった成功ロードを歩みたいと考える指揮官も皆無ではないだろう。
とはいえ、このリーグで勝てなければ、指導者としての成功が遠のくリスクも否定できない。特にW杯レジェンドの中山、戸田の両監督はここから最高峰リーグに駆け上がりたいという思いもあるはず。W杯経験者の指導者がJの舞台で成功した例がまだ少ないだけに、彼らには目覚ましい成果を残し、近い将来には代表を担ってほしいと願う人々も少なくない。そういった人々の期待に応えられるのか。そこは注視していくべきだ。
ただ、予算規模ではJ2上位同等だった松本が足踏み状態を強いられ、J2から降格した相模原や愛媛、ギラヴァンツ北九州が下位に沈み、逆にJFLから昇格したばかりのいわきFCがJ3優勝・J2昇格を果たした昨季を見ても、このリーグは本当に一筋縄ではいかない。
先読みの難しいJ3をリードするのは一体、どの監督なのか。3月4日、5日の開幕が今から待ち遠しい限りだ。
取材・文●元川悦子(フリーライター)
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