J2初参戦の藤枝、なぜ強い? 盤石の開幕2連勝、観れば納得の超攻撃的エンターテインメントサッカー
J3からの昇格初年度ながら開幕2連勝と最高のスタートを切り、J2界隈をザワつかせている藤枝MYFC。
だが、「自分たちがやるべきこと、当たり前のことをやっているだけで、それに結果がついてきているだけなので、全然まぐれとは思っていません」とキャプテンの杉田真彦が言う通り、チームの誰一人この結果をフロックとは思っていない。
一昨年の夏から1年半で今のサッカーを作り上げてきた須藤大輔監督も、まったく同じ考えだ。
「結果は当たり前ではないですが、自分たちのサッカーをすればJ2でもこれぐらいできるという目線でJ3の頃から積み上げてきました。今は、J1でも通用するようになるために、このサッカーにもっともっと磨きかけて、個の力も組織力も伸ばしていこうと選手たちに言っています」(須藤監督)
藤枝に関する予備知識がない人が聞けば、相当なビッグマウスに聞こえるだろうが、須藤監督は就任当初から「超攻撃的エンターテインメントサッカー」という高い理想を口にしてきた。そこに一切妥協することなく、「ボール保持を放棄しない」「相手を見て、立ち位置をとる」「ハイライン・ハイプレス」「ボールを失ったら即時奪回」など数々のキャッチーな“須藤用語”を駆使しながら、理想主義的にチーム作りを進めてきた。
目ざすサッカーは、相手をアタッキングサードまで押し込んで、奪われてもすぐに奪い返し、ほぼ相手側ハーフコートでゲームを進めること。そのうえで「1点、2点では満足せず、3点、4点、5点と取っていく」ことだ。
実際、須藤監督が指揮を執り始めてからすぐに藤枝のボール支配率は格段に上がり、得点力も大きく向上した。ただ、きれいなサッカーだけでは現実的に結果を出すことはできないことも承知しており、「ハードワークや球際のバトルで勝つこともエンターテインメントのひとつ」と、昨年はインテンシティや走力の強化にも注力してきた。
さらに藤枝のスタイルにマッチする新戦力も獲得し、それらの各要素がひとつにまとまり始めた昨年の半ばからは、勝負強さやタフさも備えるチームへと大きく成長。それが悲願のJ2昇格に結実したという経緯がある。
そしてJ2初挑戦となる今季は、開幕スタメンに名を連ねた大曽根広汰、新井泰貴、上田智輝らをはじめ藤枝スタイルにはまる即戦力を補強し、「個の力を高める」ことを大きなテーマとしながら始動からハードな練習を重ね、さらにサッカーのクオリティを高めてきた。
開幕のいわきFC戦で見せたのは、藤枝スタイルそのものでありながら、昨年よりも数段進化を遂げた姿だった。その戦いぶりを見ながら筆者はしみじみと感動を覚え、「これならV・ファーレン長崎にも勝てる」と確信できた。
初めての既存J2チームとの対戦でも、J1昇格候補の長崎を上回る部分は多かった。組織としてパスをつなぐ力やボール支配力、走力などは明らかに藤枝のほうが勝り、個の力がJ2屈指と言われる長崎の攻撃陣にも球際で引けをとらず、無失点に抑え切った。
前半は押し込みながらも長崎の堅守をなかなか崩せなかったが、「それでも焦れずにやれていました。自分たちがこう動いたらここが空くというのも前半で分かったし、それを試合の中で修正できて、完璧な形で(後半の先制点を)決められました」(杉田)という大きな収穫もあった。
2戦連発で3得点を挙げているエースの渡邉りょうも「長崎の選手のコメントを読んでも、うちが前半からやっていたジャブみたいなのが結果的に効いてきたと言っていたので、そこはJ2でも通用することがわかりました」と手応えを口にする。
相手が藤枝対策を練って守りを固めてきたとしても、それを攻略する力を着実につけつつある。「相手の出方を見て、後出しジャンケンをすればいい」というのは、今年よく聞く須藤用語の一つだ。
攻撃面でさらに強化したいところについて、杉田は次のように語る。
「たとえば自分が縦パスを当てるときに(渡邉)りょうしか見えてないことがあるんですけど、そこが閉じられた時に、実はヨコ(横山暁之)が空いていたみたいなシーンが多いんですよ。それはどの場所でもあるので、みんなでそこを逃さないようにしていきたいです。今はずっと一つ飛ばしたパスを入れるという練習をやっていて、それを増やせればもっと良い攻撃ができると思います」
話している中身のレベルも、まさにJ1目線と言える。藤枝が勝つべくして勝っているということは、一度試合を観てもらえればわかるだろう。
ただ、次節で戦うブラウブリッツ秋田も、クセ者と言っては失礼だが非常にやりにくい相手だ。その難敵に対しても「当たり前のことをやって勝つ」ことができれば、藤枝はより生き生きと自分たちのサッカーを表現できるようになるはずだ。
取材・文●前島芳雄(スポーツライター)
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