走ることもヘディングすることも、相手ボールを奪うこともできないウォーキングサッカーは、名称通り歩きながらプレーする競技だ。日本サッカー協会が誰にでも気軽に楽しめる生涯スポーツとして普及に努めたこともあり、ここ数年で国内の愛好者、競技者は増えつつある。

 日本協会によるとイングランド発祥のウォーキングサッカーは2011年7月、55歳以上の高齢者を対象にした健康増進のための催しが原点という。イングランドでは6万人以上に親しまれる人気スポーツに発展した。

 国内初となる歩くサッカーの全国大会「ペンギンズカップ」が18年2月に日本ウォーキング・フットボール連盟によって開催され、その第6回大会が3月11日、さいたま市の田中電気グラウンドで行なわれた。これまでの会場は体育館や人工芝グラウンドだったが、今回初めて天然芝のピッチを使用した。

 日本協会技術委員会は歩くサッカーの認知と普及のため、①サッカー経験や障がいの有無に関係なく誰でも参加できる、②全員がプレーを楽しめる、③怪我をしない、させないことに最大限配慮する、という三本柱をベースに昨年4月、独自の推奨ルールを設けた。

 主な禁止事項は走る、ヘディングする、相手にスライディングやチャージを仕掛ける、敵の保持するボールを奪う、1,2メートルを超える高さでボールを扱う、といったものだ。高齢者でも障がい者でも安心、安全に楽しめるスポーツとして普及させたい思いから、相手と接触しないことを最優先に考えたルール作りに苦心した。

 ピッチは縦30メートル、横20メール。6人制の10分ハーフで争い、再入場を含めて交代は自由だ。オフサイドはない。

 6分ハーフで行なわれた今大会には11チームが参加し、タイトルを争うコンペティション部門は、予選リーグ2位のロクO−40が同1位の浦和JYを0−0からのPK戦の末、2−1で破って初優勝した。
 
 メンバーは全員40歳以上で、普段はシニアリーグに所属。歩くサッカーはこの日が初体験だったそうで、主将の松倉慎吾さん(50歳)は「想像していた以上に楽しくて、ずっと続けたくなりました。相手ボールを奪えないので、周りが動かないとパスがつながりませんね。来年は連覇を狙いたい」と笑顔で話した。

 競技歴4年目、女性で最年長参加の尾花美代子さん(65歳)は「天気も良くて終日楽しめました。少しずつですが、パスをもらうにはどう動けばいいのか分かってきた。もっと上手くなりたいですね」と語る。

 まもなく80歳になる藤井淸永さんは、浦和高校サッカー部で犬飼基昭・日本サッカー協会元会長の1学年後輩だ。日常的に歩くサッカーと普通のサッカーを並行して楽しんでいるそうで、「勝負にこだわらず和やかにボールを親しめるのが、ウォーキングサッカーの最大の魅力ですね」と述べ、現在80歳以上のリーグ創設の準備をしているという。
 日本ウォーキング・フットボール連盟は、桑田丹理事長が読売クラブ(現東京ヴェルディ)時代の友人、知人を誘って17年4月に設立。河野慎二会長はヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)の副社長などを務め、柴田宗宏副会長は創設時から選手と指導者を兼任し、後に日本リーグの一大勢力となる読売クラブの黎明期を支えた。
 
 昨年2月には、日本協会指導普及部グラスルーツ推進グループ長として、ウォーキングサッカーの普及に中心的な役割を担ってきた松田薫二さんも理事に就任。この日はプレーのほか、決勝などで試合進行役のピッチマネジャーも務めた。
 
 桑田理事長は「体験会などを通じ、この競技の存在と魅力をもっと広めていきたい」と話し、「全国各地で開催中の大会にペンギンズカップの名称を使ってもらい、ペンギンズカップと言えばウォーキングサッカーと認識してもらえるよう、さらに普及活動に力を注いでいきたい」と抱負を述べた。

取材・文●河野 正

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