Jリーグ30周年の特別企画。歴代ベストイレブンを選ぶならどんな顔触れになるか。そしてMVPは? 芸能界屈指のサッカー通で、J1からJ3まで幅広く試合を観戦。Jリーグウォッチャーとしておなじみの平畠啓史氏にセレクトしてもらった。

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 選択肢が多すぎて、悩みだしたらきりがないベストイレブン。たぶん、明日になったら変わっていると思う。

 GKは楢﨑正剛。J1、631試合出場。長年、Jリーグのピッチに立ち続け、ベストイレブン6回、そしてゴールキーパーでは唯一MVPも獲得。安定感抜群かつビッグセーブでチームを救った。

 川口能活とのライバル関係は良い意味で緊張感があり、見ている側もドキドキ。凄い選手にもかかわらず、選手からはいじられるようなパーソナリティも個人的には好きなポイント。Jリーグのレジェンドの一人で、語り継がれてほしい選手である。
 
 ディフェンスは中澤佑二、田中マルクス闘莉王、松田直樹。フィールドプレーヤーとしてはトップの178試合連続フルタイム出場の記録を持つ中澤佑二。出場停止や怪我の可能性が高いディフェンダーながら、試合に出続けるのは並大抵のことではなく、まさにプロの鑑。守備での対応力やセットプレーでの迫力は他の追随を許さなかった。

 闘うことを体現し続けた田中マルクス闘莉王。対人の強さはもちろん攻撃力も魅力。競り合いながらの胸トラップは見事で、ディフェンダー登録の選手ながらJ通算100ゴール以上というのは素晴らしい記録である。

 数字やパフォーマンス以上にプロとして観客の心をつかみ続けた松田直樹。足もとの技術や守備力はもちろん、闘うことの素晴らしさとサッカーの面白さをプレーで表現できる稀有なディフェンダーだった。立ち居振る舞いや言動、プレーの一つひとつがとにかくかっこよかった。

 中盤は右からドラガン・ストイコビッチ、小笠原満男、遠藤保仁、中村俊輔。トップレベルのプレーをJのピッチで披露してくれたストイコビッチ。プレーに華があり、サッカーの楽しさや可能性を感じさせてくれた。スタジアムの全員が逆を取られるような切り返し。雨中のリフティング。革靴でのシュート。Jの歴史を語るうえで欠かせない選手である。

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 中村俊輔の左足は特別。シルエットであっても、ボールを蹴るフォームで「中村俊輔」だと分かるほど、フォームもボールの軌道も美しかった。

 タイトルを獲得し続けた小笠原満男。勝利すること、タイトルを獲得することにこだわり、そのこだわりを徹底し続けた。東日本大震災を受けて、東北のために先頭に立って活動を続けた姿も忘れることができない。

 そして、長年Jのピッチに立ち続け、今もなおプレーを続ける遠藤保仁。超絶の技術で中盤に美しい模様を描き出す。Jリーグが世界に誇れるミッドフィルダーの一人である。
 
 前線は佐藤寿人、中山雅史、三浦知良。Jリーグ最多得点、220ゴールの佐藤寿人。ゴールから逆算された動きは抜け目なく、警戒していてもディフェンダーは佐藤寿人のゴールを防ぐことはできなかった。

 1シーズンで36ゴールのゴンこと中山雅史は、記録にも記憶にも残る選手。4試合連続ハットトリックの記録が語るように、勢いに乗ると誰も止められなかった。プレーだけでなく、愛される明るいキャラクターで、言葉やパフォーマンスでもスタジアムを盛り上げる、いろんな意味でプロのストライカーだった。

 そして、もう一人のフォワードでMVPはカズこと三浦知良。Jリーグ開幕から常に輝き続ける、まさにキング。サッカーが好きとか嫌いとかに関わらず、多くの人に夢や希望を与え続けるカズ。スター性もカリスマ性も持つ、カズの存在自体がサッカーの楽しさであり喜びである。

 カズに憧れJリーガーになった選手。カズと同じピッチに立てたことを心から喜ぶ選手。JリーガーになれなくともJリーグを目ざした選手。そして、カズに憧れシザースやカズダンスを真似た多くの子どもたち。それだけでも、カズのJリーグへの貢献度は計り知れない。

文●平畠啓史

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