[J1第13節]FC東京2−1川崎/5月12日/国立競技場

 試合終了のホイッスルが鳴った直後、森重真人はその場にひざまづいた。多摩川クラシコでの勝利は実に5年ぶり、2018年5月5日のアウェーゲーム以来のことで、ベテランCBはその喜びを国立競技場のピッチの上で噛み締めていたのだ。

「悔しい思いをしてきましたし、なんとかチームとして勝ちたかったので。(札幌戦から川崎戦までの)数日間、皆ですごく悩んで、もう一度戦うんだという気持ちを取り戻せたことが今日の勝利に繋がったと思います」

 5月3日の福岡戦で完封負けを喫し、続く札幌戦に1−5と惨敗。リーグ戦で2連敗した後の多摩川クラシコだっただけに、相当なプレッシャーを感じていたはずだ。それでも、その重圧に押し潰されることなく最後まで果敢にプレーした。だから──。

「勝てたことが何より嬉しいです。言葉にならないです」
 
 この勝利がチームに勇気を与えてくれるとも話した森重は、こう言葉を継いだ。

「チームとしてどうすべきか迷っているなかで、今日、皆で腹を括ってやるべきことに集中できた。それで勝点を獲れたのは大きいです」

 腹を括った、そのプレーがまさに90+4分の“魂のクリア”だった。自陣ゴール前にフワッと浮いたボールに対し、川崎の大南拓磨が突っ込んできているにもかかわらず、そこへ果敢にヘッドで飛び込んでいったスタンスはファイター森重の真骨頂だった。

「本当にそう。あれは腹を括ったプレーです。とにかく勝ちたかったんで」

 今季は怪我もあり、ミックスゾーンで見かける森重の顔色が冴えなかった時が多い印象だった。でも、この日は違う。実に穏やかな、良い表情をしている。「今日は本当に穏やかな表情をしていますね」と著者が問いかけると、本人はこう返した。

「勝ったら穏やかで、負けたら穏やかじゃない。ただ、それだけです(笑)」

 その笑顔がこの日の充実ぶりを物語っていた。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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