[WEリーグ第18節]I神戸1−2浦和L/5月14日/ノエビアスタジアム神戸

 5月14日、WEリーグ連覇を狙うINAC神戸レオネッサは、ホームのノエビアスタジアム神戸で、首位を走る三菱重工浦和レッズレディースを迎え撃った。

 ゴールデンウイークの3連戦で、リーグで2位につけるI神戸はアウェーのアルビレックス新潟レディース戦で今季初黒星を喫し、浦和Lは3連戦最後の日テレ・東京ヴェルディベレーザ戦でドロー、連勝が9で止まった。それぞれ勝点を落としたわけだが、その差は3から4と開き、浦和にわずかな余裕が残って、この日を迎えた。

 この両チームは、今季、ここまで2回対戦している。リーグ戦では12月11日に行なわれた浦和Lのホームゲームで、試合終了間際に髙瀬愛実のゴールでI神戸が勝ち越し、2−1で制した。

 そこから約1か月後の皇后杯全日本女子サッカー選手権の準々決勝でも、守屋都弥から成宮唯というラインで2点を奪ったI神戸が、浦和Lの追撃を安藤梢の1点に抑えて、2−1で勝っている。

 逆転優勝を目ざすI神戸にとってはもちろん、今季2連敗中の浦和Lにとっても負けられないゲームだ。
 
 入場時には、大一番を楽しもうという想いからか、両チームの選手からは、笑顔も見られた。しかし、キックオフからボールホルダーへプレッシャーをかけあう、激しい展開が続き、表情も険しさを増していく。

 開始10分、腕を取られるなど厳しいマークにあっていた猶本光が、審判に激しくアピールすると、その直後には石川璃音との競り合いでファールを取られた田中美南も、ボールを蹴り出して不満を表わす。この一戦にかかっているもの、かけている想いの大きさが、序盤から垣間見えた。

 緊迫した展開のなか、徐々に浦和Lが主導権を握り始める。皇后杯決勝のベレーザ戦と同様に、浦和Lは前線をI神戸の最終ラインと同数にした。トップの菅澤優衣香が三宅史織と中央で対峙し、右の清家貴子が竹重杏歌理、左の島田芽依が土光真代の動きに目を光らす。

 浦和Lの楠瀬直木監督は「相手の3バックと両ワイドが出てくると厄介。そこを突いていこうとした。清家が突いてくれた。島田のほうは、なかなか突くことはできなかったが、タイトなディフェンスをしてくれた」と振り返る。

 ベレーザ戦に続いて、相手から自由を奪ったハイプレスに、指揮官は「後ろも安藤と石川が良い守りをしてくれるのですが、全体で前から行かないと耐え切れない。コンパクトにできている、連動できているという印象はあります」と評価した。

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 浦和Lに先制点が生まれたのは、32分。塩越柚歩のスルーパスに、スピードのある清家が右から抜け出してクロスを送ると、防ごうとしたI神戸のディフェンダーの足に当たりながらコースを変えていき、山下杏也加の裏へ。ここへ走りこんでいた島田が、無人となっているI神戸のゴールへ、気持ちを込めるようにボールを思い切り、蹴りこんだ。

 相手のハイプレスに手を焼いていたI神戸は、徐々に縦のボールを増やして対抗する。三宅は「本当はもっと自分たちが練習して、つないでいけるようになれればいいんですが」と言いながらも、この試合に勝つため、最も現実的な方法を選んだ。

 朴康造監督は、両サイドにやや低めの位置を取らせて、相手のプレスからの逃げ場を作らせる。そしてハーフタイムには、中盤でゲームも作れる阪口萌乃に代えて、最前線でのポストプレーに長けた髙瀬愛実を投入した。

「(交代に際して)特に指示はなかった」(髙瀬)が、髙瀬をターゲットにしたボールがチームとしてのファーストチョイスになり、浦和Lの中盤が最終ラインのサポートを気にし始める。最前線で安藤と石川に挟み撃たれていた田中も、徐々に自由を取り戻した。

「(髙瀬は)フィジカルがある選手ですし、そこでしっかり収めることができる。自分としても、もうひとつ高い位置が取れる」と田中。
 
 そして、56分、献身的なフォアチェックを見せていた髙瀬が、相手のパスを引っかけて田中へパスを送る。ボールを受けた時に「右へ切り込んで右足という選択肢もあった」(田中)が、立ちふさがる石川との位置関係を確認し、左に仕掛ける。

 駆け引きしながら一瞬のうちにコースを作り出し、ファーサイドへグラウンダーのボールを流し込む。I神戸が同点に追いついた。

 中央の髙瀬が存在感を増すことで、両サイドから、効果的なクロスも増え、浦和Lを押し込み始める。同点ゴールから15分間は、I神戸に多くの決定機が訪れた。

 63分、髙瀬と縦のパス交換から成宮が左足で放ったシュートは、福田史織がビッグセーブ。守屋のクロスに脇阪麗奈が合わせたシュートは、福田の横に入った石川が身体でブロック。小山史乃観のスルーパスに抜け出した成宮がキーパーの福田をかわしても、戻ってきたディフェンダーがカバーし、ゴールを阻む。

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 前節のベレーザ戦では先制を許し、この試合でも追いつかれたあとは、耐える時間が続いた浦和L。それでも、安易に土俵を割らない。

「(厳しい展開でも)『勝てる』『でも大丈夫』って思えるっていうメンタル。1点取っても浮かれたりせず、0−0と同じ気持ちで。1点取られても沈んだりせず、それまでと同じように」と清家。今季9連勝を重ねた、勝者のメンタリティはこの日も健在だった。

 そうするうちに、明暗を分けるアクシデントが発生した。70分、競り合いで接触した竹重が顔から出血し、ピッチに戻れなくなってしまう。約5分間、ピッチの横で治療を続ける竹重が抜けて10人となったI神戸の勢いが衰え、そこで浦和Lは息を入れて、立て直すことができた。

 そして76分、猶本に声をかけられて、中央寄りにポジションを入れ替えていた清家が「試合前から話し合って」狙いどころとしていた3バックの脇を突く。竹重の代わりに入ってきた筒井梨香を振り切り、折り返したところには、WEリーグ初代得点女王がいた。値千金のゴールを奪った菅澤は、大きく両手を広げた。

 3位のベレーザ、2位のI神戸との連戦を1勝1分で乗り切り、首位の浦和Lは大きく優勝へと近づいた。
 
「前節、先制されて、今回も追いつかれて、そういう時に逆転されずに、もう1点取ってリードできる力があるというのは、自分たちながら強いチームだなと思います。まだまだリーグは続きますが、一つひとつ勝っていきたい」と清家。

 上位3チームが残すのは4試合。首位に立つ浦和Lは、2位のI神戸まで勝点7差、3位のベレーザまで勝点9差となっており、最短で次節にも優勝が決まる(条件は浦和L○、I神戸●、ベレーザ△or●)。

 試合に勝ちうる時間帯があっただけに、I神戸の選手の落胆は大きかった。ただ、敗戦という結果はともかく、雨のなか、来場してくれた観客が納得して帰路につく内容の試合だった。

 優勝が厳しくなったこの状況下で、観客に何を届けることができるか。キャプテンの三宅も「ここから先が、自分たちに関わってくる」とその重要性を理解している。今節、WEリーグ記録となる1試合最多得点を奪ったベレーザ(ちふれASエルフェン埼玉に9−0)のような、プロとしての矜持を見せてほしい。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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