悔やんでも悔やみ切れない――。初の国際舞台で一生忘れられない苦い経験だった。

「最後の試合は絶対に勝たないといけなかった」

 イスラエル戦を振り返り、失点に絡んだプレーも含め、一夜明けてもDF高井幸大(川崎)は自責の念に駆られていた。

 コロナ禍の影響で2019年度以来の開催となったU-20ワールドカップ。大会直前で開催地がインドネシアからアルゼンチンに変更されるアクシデントに見舞われたが、U-20日本代表は地球の裏側でグループステージ(GS)の3試合を戦った。

 結果は1勝2敗のグループ3位。5月27日に行なわれたイスラエルとの最終戦は、引き分け以上でGS突破を確定させられる状況下だったが、先制しながらも、その後に2失点。

 相手は退場者を出し、数的優位のアドバンテージを活かせず、まさかの逆転負けで3位に転落。それでも、各組3位の上位4か国に与えられるノックアウトステージ進出の権利を手にする可能性がわずかにあった。

 しかし、現地時間28日の15時から行なわれたグループEのチュニジア対ウルグアイの一戦は、1−0で後者に軍配が上がった結果、日本のノックアウトステージ進出の可能性が消滅。U-20ワールドカップにおけるGS敗退は、2001年のアルゼンチン大会以来となった。
 
 情勢が決まるまで待たなければならないなか、U-20日本代表は28日の午前中にメンドーサ市内でリカバリートレーニングを行なった。敗戦から一夜明けた選手たちの心境は複雑だったに違いない。しかし、もう1試合戦えることを信じて汗を流した。

 そのなかで、GSの3試合すべてにフル出場を果たした高井は、前日のイスラエル戦を誰よりも悔やんでいた。本職はCBながら、チーム事情で慣れない右SBでプレーしたが、2失点に絡んだコロンビア戦に続き、イスラエル戦では逆転弾に関与してしまったからだ。

 1−1で迎えたイスラエル戦のアディショナルタイム。表示された7分間を守り切れば、2位でノックアウトステージ進出が決まる。しかし――。

 90+1分、ゴール前にボールが入ると、混戦からスタヴ・レヴィキンがヒールパスでGKの前にパスを入れる。これをオメル・シニアに押し込まれて逆転を許した。

 決まった瞬間、選手たちはオフサイドの確認で一様に手をあげたのだが、審判の判定は変わらず。VARで映像を確認されることもなく、そのまま試合が再開された。
 
 ゴールが決まった瞬間、オフサイドポジションにひとりだけ残っていた選手がいる。それが高井だった。そのシーンを振り返り、言葉を選びながらこう話した。

「相手が(チェイス・)アンリの裏に入ってくると思い、自分はラインを一度下げた。でも、そこから上げるのが遅く、ずっとボールを見ているだけになってしまい……。やられるべくしてやられたと思います」

 混戦状態でルーズボールに備えていたようにも見えた。しかし、どんな状況であれ、後ろにひとりだけ残っていた状況に変わりはない。高井は言う。

「1枚浮いていたので、ラインを上げるのが正解だった。本来と違うポジションで試合に出ていたのは関係ないし、とにかくサッカーIQを高めないといけない」

 Jリーグで出場機会を増やし、自信を持ってアルゼンチンにやって来た。しかし、海外勢に苦戦し、1対1でもやや軽い守備が目についた。
 
 初めての国際舞台は悔しさだけが残る。しかし、下を向いてはいられない。次の戦いは始まっているからだ。

「自信を失ったことはないけど、もっと圧倒的な存在にJリーグでならないと世界で戦えないと感じた」

 今大会で抱いた危機感を今後に活かさなければ、ワールドカップを経験した意味はない。アルゼンチンでの3試合を意味あるものにするためにも、高井にとって本当の戦いはここからだ。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

【PHOTO】U-20日本代表の出場16選手&監督の採点・寸評。及第点は強度の高いプレーで奮闘した髙橋のみ。2失点目に絡んだ高井は厳しい評価に