結果論では決して片付けない。びわこ成蹊スポーツ大の3年生守護神・倉原將の話を聞いていると、言葉の端々にこの強い意志を感じる。

 関西学生リーグ1部第7節・びわこ成蹊スポーツ大対阪南大の一戦で、倉原は何度もビッグセーブを連発した。圧巻だったのは1−2で迎えた残り10分間だった。DF巌真都利との1対1のシーンで臆することなく前に出てシュートストップしてCKにすると、CKから巌のドンピシャヘッドを横っ飛びセーブ。

 その後、右からのミドルシュートを浴びる。枠内に飛んだシュートは威力が弱かったが、逆にそれでタイミングを外され、かつ手前でバウンドするというGKにとっては難しいシュートだった。これを倉原は両手で相手がいないスペースに弾き、すぐに起き上がる時間を作ると、そこからMF横尾蒼人の右からの強烈な枠内ミドルを横っ飛びから右手一本でスーパーセーブ。

 チームは1−2で敗れたが、倉原のビッグセーブがなければ、ホームで大敗していた可能性もあっただけに、チームの覇気を落とさない意味でも重要なプレーの数々だった。

 それでも試合後、倉原は納得のいかない表情を浮かべ、自分のプレーに怒りすら覚えているようだった。さらにDFの選手に対して厳しい言葉を投げかけるなど、試合に対する強い思いや覇気を感じた。

「前半から自分たちのミスで落ちていくのが多くて、そこに対して僕はちょっと感情的になってしまったので、もっと見つめ直して冷静に対処するべきでした。もちろん周りに対してはもっと要求を強くしていかないと、その細部を怠ることで今日のように失点につながって負けという結果になります。スタンドで応援してくれている仲間たちに申し訳ないし、やるべきことをやらないといけないと思っています」
 
 怒りを滲ませながらも頭は冷静だった。この言葉を受けて、2失点の要因について聞くと、倉原はしっかりと分析してこう述べた。

「あの2失点は、僕が前に出て防ぐことは不可能だったので、周りを動かすコーチングが必要でした。ボールホルダーに対してディフェンダーを強く行かせることと、コース切りをしっかりとやって、かつ僕のポジショニングももう少し後ろにしていたら、ボールに反応できていたと思います。僕が前に少し行きすぎてしまったことで、角度が作れなくなったのも大きな要因となってしまいました」

 ただ周りに言うだけではなく、自分の行動もすぐに見つめ直せる。だからこそ、その言葉には熱量と説得力があった。4連続決定機阻止のスーパープレーに話が及んでも、分析力と熱量がこもったものがヒシヒシと伝わって来た。

「1本目の(巌との)1対1はカバーのディフェンダーが少しシュートコースを限定してくれていたので、あそこは僕が前に出なくても良かったのではないかと思います。止められたという結果だけを見たらいいように見えるのですが、あそこで僕がステイのポジションをとって、あのままディフェンダーをスライドさせて、相手に縦に運ばせたら、よりコースを限定される。

 止められる確率は上がったのかなと思いますし、中に味方が戻ってくることができたのかなと思います。3本目のシュートは、できればキャッチしたかった。両手で行ったのですが、こぼしてしまったら失点に繋がるので、セーフティに弾くことを選択しましたが、僕があそこでキャッチできる選手であれば、4本目の決定機は来なかった。反省が多いです」
 
 止められて良かったではなく、どうやったらもっと確実に止められることができたのか。自身のプレーへの探究心の強さが言葉に滲み出ていた。

「高校の時と違って体格も良くなって、チャレンジできるボールは増えてきたのですが、もっとそれを伸ばさないと、今日の失点シーンのようになってしまう。予測、足の運び方、身体の向き、手の出し方、ディフェンスコントロールと、もう全てにおいてもっと深いところまで追求していかないといけないと思っています」

 なぜここまでストイックなのか。その理由を倉原はこう口にする。

「僕は身長がない分、サガン鳥栖のGK朴一圭選手のように動き回って、その周辺の細かい技術で勝負していかないといけないタイプのGKなんです」

 倉原の身長は180センチちょうどと、GKとしては低いほうだ。朴も同じ180センチで、しかも鳥栖は倉原が高校まで過ごした場所。鳥栖U-18時代には中野伸哉、兒玉澪王斗、相良竜之介、福井太智らと共に、守護神として日本クラブユース選手権で日本一を達成。だがトップ昇格を果たせず、びわこ大にやって来た。
 
「いずれかは戻りたい場所」と話す鳥栖の守護神である朴を自分の姿と重ねながら、技術と質を追求する。そこに妥協という言葉は存在しない。

「今後はまずチームでタイトルを取りたい。個人としては、去年は補欠でデンソーカップチャレンジの関西選抜メンバーに入らせてもらったのですが、実力でそのポジションを勝ち取ったわけではないと思っているので、次こそは堂々とメンバー入りしたいし、全日本のメンバーにも入りたいと思っています。今の自分の実力ではJ1の高い壁は超えられないので、もっとステップアップしたいと思います」

 目先の結果ではなく、過程を重視する。結果論で片付けない強い意志がある限り、向上心は尽きることはない。なるべきGK像を持った倉原のこれからに注目していきたい。

取材・文●安藤隆人(サッカージャーナリスト)

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