[WEリーグ第21節]千葉L 0−1 I神戸/6月4日/フクダ電子アリーナ

 WEリーグ第21節は土曜日のゲームで、三菱重工浦和レッズレディースが大宮アルディージャVENTUSを4−0で破り、優勝を決めた。

 また、同日に行なわれたゲームで3位の日テレ・東京ヴェルディベレーザがAC長野パルセイロ・レディースと引き分けた。前節の時点で、ベレーザとの順位が変わらなかったINAC神戸レオネッサは、日曜日のゲームで勝てば2位が確定することになった。

 これを迎え撃つジェフユナイテッド市原・千葉レディースは、土曜日の試合が終わった段階で勝点20の8位。最終節は抜け番になるため、このゲームが今季最終戦となる。勝点3を取れば、勝点22の大宮Vまでをかわして、暫定5位まで順位は上がる。ユース出身の鶴見綾香の引退試合でもあり、モチベーションは高かった。

 試合は序盤から、千葉Lペースで流れた。I神戸は「4−4−2想定で向かった」(朴康造監督)が、千葉Lは3バックでミラーゲームを挑んできた。千葉Lの三上尚子監督は「ホームでの最終節で『ジェフらしい戦い方をしよう』と、前半からアグレッシブに、良い守備から良い攻撃を仕掛けようとした」。
 
 3バックの中央へ入った林香奈絵は「ミラーゲームでしっかりと勝負して、そこで勝ち切ることが多ければ、自分たちらしいゲームができるというのは分かっていた」と、この日のゲームが上手く運んだ原因を語った。

 林は、昨夏のE-1選手権のチャイニーズ・タイペイ戦での負傷から、シーズン終盤に復帰した。猿澤真治監督退任後、三上監督就任に伴い、4バック中心にシステムは変わっていたが「監督が代わって、やり方が変わることはありますし、出場したポジションで100%、120%を出すのが、自分の役目」。この日は、守備だけでなく、再三、攻撃の起点にもなり、3バックへの回帰にも柔軟に対応した。

 選手の身体に疲労の溜まるシーズン終盤の試合。湿度は50%を越え、強い直射日光もあって気温26.7度という以上に体感温度は高かった。そんななかでも、千葉Lの岸川奈津希は「自分たちが『走る』『戦う』というチームコンセプトでやっている以上、走り負けてはいけない」と言う。
 
 そしてサポーターへの謝意も述べた。「今日は本当に多くの方が来てくださったので、それも私たち選手を後押ししてくれたと思います」。開幕戦以来の2,000人超え(2,051名)も、チームの力になっていた。

「長いボールを蹴らされて、少し千葉選手頼みになってしまった」と前半を振り返った三上監督だったが、チャンスは少なからずあった。

 27分に千葉玲海菜の突破からのシュート。39分にも蓮輪真琴がフリーでシュートを放ち、プレーしている選手も「ゴール前まで行けているし、そこで点が取れれば違った展開になったかな、と」(岸川)自信を得ていた。

 しかし、ここで試合巧者のI神戸が、ワンチャンスをゴールに結びつけた。43分、3バックのセンターに入っていた土光真代が右サイドの守屋都弥を走らせる。今季のI神戸のストロングポイントになっている守屋のクロスに合わせたのは、千葉Lにも在籍していた成宮唯。抑えたシュートを、ゴールに流し込んだ。

 リードしてからも、不利な時間帯が長かったI神戸は、いくつかの決定的なピンチを、守護神・山下杏也加のセーブで凌ぐ。すると劣勢を悟った田中美南が、前線から中盤へ下りてきた。
 
 I神戸としては優勝を逃した以上、次の目標は「勝ってリーグ2位を死守」とともに「チームから得点王を出す=田中美に点を取らせる」ことだったはず。その田中美が、低めの位置でプレーするようになった。

「あのままなら、たぶん、失点をどこかで食らっていた。チームとしてもなかなか点を取れそうなシーンがなかった。しっかりと(成宮)唯が点を決めてくれて、(戦い方が)はっきりした」(田中美)。攻勢に出る千葉Lの選手と激しく球際で戦い、ピンチの芽を摘み取り、ビルドアップ時の受け手ともなった。

 いつもなら4−4−2と3−5−2の争いで生まれるミスマッチを、どこかで活かすI神戸だが、ミラーゲームでそれが作れず、苦戦の要因となっていた。朴監督も「ポジションを守っていたら、崩せない」と、選手に自主的なポジションチェンジを求めたそうだが、そこで得点王争いをしているエースが後ろに下がる選択をするとまでは思っていたかどうか。

「0−0だったら、自分も前に重心をかけて、1点取るか、食らうかの、もっと厳しい戦いになっていたかと思う。チームが勝てばいいんです。得点は自分のエゴで、2位(を守る)というのがチームにとって大きいので」と田中美。ゴールを決められなかった悔しさを顔に滲ませてはいたが、同時に、チームを救った充実感も漂わせた。
 
 内容的には優位な時間も多かった千葉Lだが、結果に結びつけられず、悔しい敗戦で今季を終えた。勝点20で足踏みし、暫定8位。最終節の結果次第で、7位〜9位までの可能性がある。

 林は「(I神戸からは)しっかりと点を取る勝負強さだったり、時間の使い方の上手さだったりを感じました。そのなかで自分たちもゴールに向かうシーンが多かったので、もっともっと上位に行けるなという手応えを感じられるゲームでもありました」。

 岸川は「前の年が良かったから、今季が良いというわけではないと学びました。今季、できるようになった部分もたくさんありますので、得点力のアップ、守り切る部分などを改善して、優勝争いをするビッグスリーに割り込んでいけるようにならなければいけない」と、前を向いた。

 苦しい試合をモノにしたI神戸は、これでリーグ2位を確定させた。残る興味は得点王争いということになる。現在、ベレーザの植木理子が14点でトップ。これをベレーザの同僚・藤野あおばと、浦和Lの清家貴子、そして田中美が3点差で追っている。楽ではない条件だが、可能性はある。
 
 田中美は、昨季も、3点差の菅澤優衣香を追った最終戦でハットトリックを達成し、一度はトップに並んだ。結局、同日の試合で、菅澤もゴールを奪ったため、得点王を逃した。

 リーグの表彰式でその心境を田中美に尋ねると、ベレーザの清水梨紗(現・ウェストハム・ユナイテッド)をチラリと見てから「(浦和Lの対戦相手であり、田中美の古巣でもある)ベレーザが最後まで抑えてくれれば……」と、ユーモア溢れる言葉を返してきた。

「去年は、最後まで体力が持たなくて、ヘロヘロになった。本当にしんどいですよ」と、諦めているかのようにふるまっていた田中美だが、最終節こそ「自分のエゴ」を前面に出してもいいだろう。この日、田中美の献身に救われたチームが、どんな後方支援をできるかにも注目したい。

取材・文●西森彰(フリーライター)

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