[J1第27節]川崎 1−0 FC東京/9月15日/等々力陸上競技場 

 試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、ガッツポーズとともに誰よりも熱い雄叫びを上げたのが背番号14だった。

 チームは長いトンネルに迷い込んでいた。天皇杯はベスト4に進出したものの、リーグ戦は2分4敗と6戦勝利なし。覇権奪回は非常に苦しい状況となっていた。

 クラブ伝統の14番を継承し、副キャプテンとして腕章を巻く試合も増えた脇坂泰斗も忸怩たる想いを抱えていだろう。もとより「チームを勝たせる存在になること」を自らに課してきた。勝利に飢えていたに違いない。

“川崎デビュー”となる38歳の元フランス代表バフェティンビ・ゴミスをCFで起用したFC東京戦、チームはスタートポジションこそ4−3−3も、守備時には両ウイングの家長昭博、マルシーニョが相手のダブルボランチをケアするように、4−3−2−1のように可変する新たな守備の形を採用した。

 脇坂が担ったインサイドハーフはウイングが中に絞る分、相手SBをケアするなど、より幅広いエリアのカバーを求められる。さらにアンカーとのバランス取りも重要だ。

 新たなタスクを担いながら、脇坂は54分には自陣の低い位置中央で左SB登里享平からの斜めのパスを受けると、正確なトラップとともに緩急を付けて相手を置き去りにし、前進。左サイドのマルシーニョへ展開すると、ブラジル人アタッカーは自慢のスピードとステップを生かして敵陣を切り裂き、決勝弾を挙げてみせた。

 そして1ー0のまま迎えたホームのサポーターの前での久々の勝利だ。直前には足を攣りながらも必死にプレーを続けていた脇坂は、ホイッスルの瞬間、すべてを出し切ったように喜びを爆発させた。

 前節のC大阪戦、ピッチに崩れ落ちるように誰よりも悔しさを表わしたのは脇坂だった。その姿とのコントラストが強い分、より心に響くシーンであった。

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 大阪での敗戦からリーグ戦は約2週間のインターバルが設けられた。その間、脇坂はより勝利の渇望を強めたはずである。

 さらに大きな刺激も受けたという。試合後に教えてくれた。

「2週間の間で代表戦もあって、そこに対する想いと言いますか、ドイツ戦は素晴らしいゲームを見せてもらいましたし、トルコ戦は伊藤(敦樹)選手と毎熊(晟矢)選手が、Jリーグの選手ができるということを見せてくれました。

 やっぱりそういった姿を目にして、自分もあの舞台でプレーしたいなという想いを持った2週間でもあったので、その意味でも気持ちの入ったゲームだったというのは個人的にありました」

 川崎への同期入団の守田英正、同じアカデミー出身の板倉滉、三笘薫、田中碧、川崎で昨季まで一緒に戦った谷口彰悟ら今の森保ジャパンには顔なじみの選手が多い。だからこそ、自分もとの気持ちもあるのだろう。

「(以前に)初招集として追加で呼んでもらった時から、声がかかっているのは、その土台に乗れているということだと思うので、そこを目指しつつも、やっぱり自分の課題に向き合いながらやっていくしかないと思います。

 見てくれている方は多いですし、その1試合1試合、一つひとつのプレーを無駄にしないようにやっていかないと、そういったところに入っていけないと思うので、まだまだだと感じますし、もっともっとやっていかなくちゃいけません」

 川崎の顔となり、さらに日本代表としての戦いも夢見る。彼の必死に戦う姿を目の当たりにしていると、その想いが結実する日が訪れてほしいと願わずにいられないのは、私だけだろうか。

取材・文●本田健介(サッカーダイジェスト編集部)

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