9月のインターナショナルマッチデーも終わり、15日から欧州各国リーグ戦が再開。オランダ1部も16日の第5節から新たな戦いが始まった。

 昨季王者で、今季もここまで無敗と好発進を見せたフェイエノールトは同日、本拠地デ・カイプにヘーレンフェーンを迎えた。19日からチャンピオンズリーグ(CL)のグループステージがスタートするため、彼らはここから過密日程を強いられる。ゆえに、いい形でこの試合を勝利し、先々に弾みをつけたかった。

 今季、フェイエノールトの基本布陣は4―2―3―1。この日は昨季15ゴールをマークし、今季も4戦4得点と気を吐くエースのサンティアゴ・ヒメネスが最前線に陣取り、トップ下にはアルネ・スロット監督がAZ時代に指導していた秘蔵っ子のケルビン・ステングスが入った。

 右MFのイゴール・パイシャオン、左MFのルカ・イバヌシェツも技術と打開力のある選手で、ボランチのマッツ・ヴィエフェルやクインティン・ティンバーが前線4枚に的確なパス出しを見せ、攻撃を組み立てていた。最終ラインも丁寧なつなぎを意識しており、サイドを効果的に使うなど、オランダらしいスタイルが印象的なチームだ。

 攻撃面で特に目立ったのが、ヒメネスがターゲットになり、その落としを3、4人が細かくつないで一気にフィニッシュに持っていく連携プレー。ヘーレンフェーン戦ではその強みが序盤から随所に出る。彼らは次々とゴールを重ね、20分で3点をリード。その後、1点を失ったが、後半にはようやくヒメネスにゴールが生まれ、4−1に。この時点で試合の行方がほぼ決まった。

 ここでスロット監督はCLを視野に入れ、ヒメネスを下げ、19歳のガンビア人FWヤンクバ・ミンテを投入。直後に彼が5点目を奪うと、スタジアムは大いに湧いた。これだけ大差がつくと、指揮官としてはさらに控え選手を積極的に試したくなる。そこで前線に24歳のチェコ人FWオンドジェイ・リングルを起用し、ミンテを右MFにポジションを移したが、そのリングルも6点目をゲットする。

「異なる3人のフォワードが揃って得点した」とスロット監督も6−1の圧勝を手放しで喜んでいた。
【動画】上田綺世、移籍後リーグ戦初ゴール!
 多彩なFW陣が活躍し、今季3勝目を挙げる傍らで、やはり気になるのが、今夏加入の日本代表FW上田綺世の動向だ。

 ご存じの通り、彼は9日のドイツ戦(4−1)に1トップで先発。決勝点となる2点目を叩き出しながら、左足を負傷。代表を離脱してしまった。その後、チームに戻って治療を続けていた模様だ。

 その上田がヘーレンフェーン戦を観戦するためデ・カイプを来訪。怪我の状態を尋ねた筆者に対し、「足は大丈夫です」と笑顔で話し、普通に歩いて中に入っていった。

 その様子を見る限りだと、そこまで大事には至らなそうだが、スロット監督は「彼はまだ室内練習をしていてピッチに出てきていない」と語っていた。

「近いうちにトレーニングに合流すると思うが、しっかりと確認する必要がある。復帰時期は明言できないが、10月4日のアトレチコ・マドリー戦には我々と一緒に戦っていることを望んでいる」と2、3週間程度の怪我だとも説明。今後の経過をしっかりと見極めていくという。
 
 上田は、CL出場のビッグクラブ入りを実現させ、8月13日のエールディビジ第1節フォルトゥナ戦(0−0)で新天地デビュー。そこから徐々に出場機会を増やし、9月3日のユトレヒト戦(5−1)で待望のオランダ初ゴールを挙げた。19日のCL初戦・セルティック戦に向かう矢先の怪我ということで、勢いを削がれた部分があるかもしれない。

 CLの序盤2戦はヒメネスが出場停止。ここで万全ならスタメンが確実視されている状況だっただけに、本人も悔しさを感じているはずだ。

「上田は天性のゴールスコアラー。足にボールが転がるたびに得点する。その確率は50パーセント以上、100パーセントにかなり近いかもしれない。彼はとても速く、ヘディングも両足のシュートも上手く、ゴールを確実に決める。我々にとって力強い新戦力だ。だからこそ、CL序盤の試合に出られないのは残念で仕方がない」と指揮官も大いに嘆いていた。

 そんなスロット監督は「上田がもっと強くなって戻ってくることを確信している。そしてヒメネスのビッグライバルになるだろう。順調にフィットしていけば、このクラブでプレーする数年間で素晴らしい成績を収めることになる。それに関しては疑いの余地はない」という絶大な期待も口にした。
 
 つまり、それだけ背番号9の復帰を切望しているということ。そういった高評価は上田にとって追い風。ここから確実にフィジカル面を引き上げ、合流後にはフェイエノールトの連動性、創造性の高い攻撃をけん引できるように、周囲とのコンビネーションを密にしていくことが肝要だ。

 昨季から大黒柱に君臨しているヒメネスは実績的に有利だし、屈強なフィジカルを生かしてDFを背負いながらタメを作る仕事には非常に長けている。だが、シュート技術に関してはやや物足りなさも感じられる。上田が彼を圧倒できるとしたらその点だろう。

 スロット監督が多彩な得点能力を称賛した通り、上田には類まれなフィニッシュの迫力と精度がある。それを新天地で遺憾なく発揮すれば、メキシコ人FWをしのぐ活躍はきっと叶う。そこは期待してよさそうだ。

 ヘーレンフェーン戦で途中から出てきたミンテはドリブラータイプで、リングルも175センチとそこまで高さはないため、前線のターゲットマンとしてはやや不十分ではないか。となれば、やはりスロット監督としてはヒメネスと上田の2枚看板で今季を戦い抜きたいという思惑があると見られる。

 そうなる日はいつなのか。まずは指揮官が期待する10月4日のCL・アトレティコ戦でスタメンを飾る上田の雄姿を見たいところ。そこからゴールを量産し、ベルギー時代のような成功を飾ってほしいところ。日本屈指のスケール感を誇る点取屋がサクセスストーリーを現実にするために、まずは左足の状態を万全にしてほしいものである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

「記者のポリシーがありますよね?」上田綺世がフェイエノールト入団会見でまさかの逆質問! 滲み出た“動き出しの極意”への矜持【現地発】

「雲泥の差ですね」上田綺世が蘭デビュー戦で体感したフェイエノールトと本拠地の“凄み”。「10人でもこれだけ戦えるんだと…」【現地発】

日本代表で最もシュートが上手いのは? 松井大輔の問いに守護神シュミットが回答!「本当にすげぇの来る。絶対取れないじゃん…」