スタジアムに取材に行くといろいな人に会う。知見の仲間もいれば、よく顔を合わせるが、ほとんど話したことがない人もいる。

 アムステルダムのヨハン・クライフアレーナで行われたヨーロッパリーグ(EL)グループステージ第4節のアヤックス対ブライトン戦でのことだ。

 階段を上ってスタジアム上部にある記者席についた僕は、一息ついた後そこからの眺めを堪能していた。試合開始を前にファンがざわざわしている。いい雰囲気だ。肩をトントンとされたので左を見たら、隣のジャーナリストに「パソコンに向かう自分の写真を撮ってほしい」とお願いされた。快く応じて写真を撮ったあと少し話をしたら、ロンドン在住ながらドイツ語を流ちょうに話すイタリア人だった。ドイツ語は学生時代にルクセンブルクで身につけたのだとか。いろんな人がいるものだ。

 そんな彼、アレッサンドロ記者が三笘薫について語りだしてきた。ブライトンの試合を数多く見ているという。

「ミトマは素晴らしい選手だよ。もちろんだ。昨シーズンのミトマは文句なしにすごかった。誰に聞いてもこれは異論がないだろう」

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「昨シーズンは」というワードが気になったので、「ということは?」と尋ねてみる。

「今シーズンもいいパフォーマンスなのは間違いないけど、あえて指摘させてもらうと、昨シーズンほどではないかもしれない。今季のパフォーマンスが昨シーズンと比肩しうるかというとそうではないと思うんだ。というのも、まず相手選手の対応が変わってきている。いかにミトマにやりやすい形で持たせないようにするべきか。どうやってその良さを消すべきかという研究を重ねてきているんだ」

 三笘のチャンスメイクとゴールメイク能力の確かさは相手チームにとって要注意項目の一つだ。スペースがある状態で前をもってボールを持たれる局面を極力なくすことが求められるし、そのための準備をして試合に臨んでくる。

 このアヤックス戦でも、三笘に対して激しいプレスの連続で、得意な形に持ち込まれないようにするシーンが多く見られた。そのままの勢いでファウルになったり、ボールアウトでスローインになっていく。
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 そんな相手のアグレッシブな守備に対してどう対処しようとし、どこに抜け道を見つけようかとしていたのだろう。そんなこちらの質問に対して、三笘は「もうちょい前の試合みたいに中に入ってプレーした方がよかったかなと思いますけど」と言いつつも、「前半と後半とで変えた部分などは?」という別の記者からの質問に「あんまり中に入らないようにした。なるべく裏のところを狙うようにはしていました」と答えていた。

 自身がプレスを外してパスを受けるためには中に入って相手の狙いを外した方がいいのだろうが、自分が外に立って相手守備をひきつけたほうがこの日のアヤックスに対しては効果的だったということだろう。

 事実、前がかりに人へめがけるプレスは外されると思わぬところにスペースがぽっかり空いてしまうものだ。そしてブライトンの2点目はそんな流れから生まれた。アヤックス守備ライン前のスペースが空き、そこでパスを受けたアンス・ファティは誰からも当たられず。センターへ気持ちが引き寄せられたアヤックス守備陣に対して、右サイドに流れていたシモン・アディングラが完全にフリーでパスを受けると、丁寧なシュートで重要な2点目をマークした。
 
 この日、試合を決定づけるアシストやゴールはなかったが、三笘は随所で好プレーを披露。自陣からボールを運んでマイボールのスローインやファウルを勝ち取るのもチームにとって非常に助かるプレーだし、後半は狙い通りカウンターからあと少しで追加点というシーンに絡んでみせた。

 サッカーには様々な状況があるし、それぞれの動きにはそれぞれの効果がある。相手の矢印の矛先を自分に向けておいて周りの選手がプレーする機会を効果的に作れると、回りまわって自分にもいい形でボールが流れてくるものだ。

 終盤にドリブルで持ち運び、時間とスペースを勝ち取った三笘のプレーにアレッサンドロ記者が拍手を送っていたのが印象的だった。チームへの貢献度が高いというのを彼だってよくわかっている。

取材・文●中野吉之伴

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