サウジアラビアのジッダで行なわれた北中米ワールドカップ・アジア2次予選のシリア戦は、日本が5−0で勝利。5日前のホームでのミャンマー戦と同じスコアで、2次予選でも難関の1つをクリアした。

 これで6月のエルサルバドル戦から8連勝となったが、年内の2次予選を連勝したことで、来年の元日に予定されるタイとの親善試合を挟み、3大会ぶりの優勝を目ざすアジアカップ、さらに来年3月に再開する2次予選に向けて、良い流れにつながる勝利と言える。

 終わってみれば実力差がそのまま表われるような結果となったが、ここからアジアでの試合を見ていくヒントになりそうなのが、32分に久保建英のゴールで先制した後の戦い方だ。

 アルゼンチン人のエクトル・クーペル監督が構築するシリアのディフェンスは堅く、1点目を取るまでは日本も一筋縄では行かなかった。ただ、森保一監督は事前に伝えた判断基準を頼りに、試合中に特別な指示は出していなかったという。

 強いて挙げるなら、試合が止まった時に名波浩コーチからパスの距離に関するアドバイスが選手に出されたぐらいだと明かしている。
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 そうした状況で生まれた1点目はやや強引ではあるが、狙いを持った攻撃が実った形だ。インサイドのポジションを取った左サイドバックの伊藤洋輝を起点に、反対サイドから中盤のインサイドに流れた菅原由勢がボールを受けて、右外の伊東純也に展開する。

 日本は上田綺世、浅野拓磨に加えて守田英正、さらには遠藤航までがボックス内に入り込むことで、シリアのディフェンスを押し下げた。右サイドでボールを持つ伊東にはイブラヒム・ヘサルとファハド・ユーセフの二人が付くが、それによりボックスの右手前にスペースができる。

 そこを久保が見逃さず、伊東から前向きにボールを受けるとインに踏み込んで、左足の強烈なシュートをゴール右に突き刺した。

 アウェーで待望のリードということもあり、そこから一度ゲームを落ち着かせる選択肢もあったはずだが、日本はたたみかけるように攻撃を仕掛けていく。ボールを失ってもシリアが前に運ぶ前に奪回して、ビルドアップから左右のサイドバックが高い位置に上がって、最前線の上田を起点に全体を押し上げて、立て続けのチャンスに繋げた。
 
 37分の追加点は、左の伊藤が高い位置で浅野からボールを受けて、クロスを伊東が折り返し、ゴール前で上田が合わせるという形。森保ジャパンが日々のトレーニングで積み上げてきたものだが、その流れを呼び込む象徴的なプレーが、遠藤と浅野による積極的なディフェンスだった。

 ゴールシーンから1分前に、左の伊藤によるクロスのシーンがあった。これはゴール前のユーセフにカットされたが、セカンドを拾ったタエル・クロマに遠藤がプレッシャーをかけて奪い切る。

 そこから右の伊東に渡ると、外側から追い越した菅原が上げたマイナスのクロスにニアから守田が飛び込んで合わせようとするが、敵ディフェンスに触られてファーに流れると、右サイドハーフのアブドルラフマン・ウエスにボールを拾われる。

 しかし、ファーサイドからボックス内に入り込んでいた浅野が、縦に運ばれる前に追い付いて後ろを向かせると、バックパスを受けた右サイドバックのアムロ・ジェニャトに浅野が前からプレッシャーをかけ、上田も連動する。

 そこから強引に蹴り出されたロングボールは、192センチのFWオマル・アルソマーに渡ることなく、谷口彰悟が勝利した。ここからの組み立てで生まれたのが上田のゴールだったのだ。
 
 その流れもGKの鈴木彩艶から谷口、守田、遠藤とつなぎ、縦パスを受けた浅野を伊藤が外側から一気に追い越す形で左足のクロスに結び付けた。ここまで早い流れだったにもかかわらず、ゴール前には上田、浅野、伊東、さらに久保の4人が入っており、シリアも攻守の素早い切り替わりに、守備が間延びしていた。

 そこから前半のうちに日本の3点目となる上田の2点目のゴールが三度、伊東のアシストによってもたらされると、後半にはリスタートからのミドルシュートで菅原由勢が4点目をもたらし、終盤にはパリ五輪世代のエース候補でもある細谷真大の代表初ゴールで、5−0の勝利を締め括った。

 森保監督はこの試合に勝つことだけを考えれば、違った戦い方があったことを認めつつ、ここから先の戦いを見越してプランを立てたという。

 そこには戦術的なオーガナイズと個々のタスクもあるはずだが、なるべく無失点で終えることは前提として、1点目を奪ったら2点目、3点目と畳み掛けていく姿勢を選手たちに求めたことが、ピッチ上のパフォーマンスに表われていた。

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 今回はカタールW杯後の第二次森保ジャパンに招集された経験のある選手に多くの怪我人が出て、活動中にも三笘薫、ミャンマー戦にスタメン起用された鎌田大地が離脱するなど、決してベストメンバーと呼べる陣容ではなかった。

 それでも、今いるメンバーがベストというマインドと、チャンスをもらった選手たちがパフォーマンスで応えるという好循環が生まれている。主力や常連メンバーのアクシデントが良いことではないが、このシリーズだけでもシリア戦でのスタメン抜擢に応えたGKの鈴木や多くの選手が評価を上げたと見られる。

 もちろん、そうしたチームを力強く支えるのは、シリア戦でMOMを受賞したキャプテンの遠藤を筆頭に、カタールW杯を経験した選手たちだ。
 
 W杯の拡大により、アジアに8・5枠が与えられることが決まっている。世界一を目標に掲げる森保ジャパンにとって、2次予選、アジアカップ、最終予選と続く2年弱の期間は親善試合もなく、同じく世界一を目ざすような列強国と試合を組むことができない。

 そうしたレギュレーションの縛りがあるなかで、どういったテーマを持って、本大会までのラスト1年に繋げていくのか。

 ここから試合が読めないアウェーの北朝鮮戦などもあるだけに、2次予選で呼吸を楽にしていく意味で、最初のシリーズを2連勝で終えたことも大事だが、観る側も結果に一喜一憂するだけではないスケールの展望をしていくヒントになるゲームだった。

文●河治良幸

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