1月31日に、いよいよ日本の決勝トーナメントが始まる。ラウンド16の相手は中東のバーレーンだ。負けたら終わり。ここからが、まさに本当の戦いだ。

 グループステージで日本は苦しい戦いを強いられたが、第3戦のインドネシア戦(3−1)では「初心」を取り戻し、積極的な姿勢で勝利した。セットプレー(ロングスロー)から失点する課題は残ったものの、チームとしてどう戦うべきか、という原点回帰ができた点で評価できる。

 インドネシアはグループ内で最弱だったが、インドネシア戦勝利の最大の価値は、イラク戦の敗戦によって生まれたチームの悪い雰囲気を払拭できたことだ。

 悪い流れを断ち切る一番の特効薬は、メンバー交代だ。

 実際、日本はイラク戦からスタメンを8人、入れ替えて挑み、強度の高いプレスと攻守の連動性でインドネシアを圧倒した。パスミスこそ多かったものの、この試合では日の丸を背負って必死に戦うという最低限の姿勢をみんなが見せてくれた。

 インドネシア戦で「今日の日本は違うな」「必死さが伝わるな」と最も感じさせた選手が、堂安律だ。

 1、2戦目とも途中出場で、3戦目で初スタメンとなったが、10番を背負う立場からすれば、「最初から俺をスタメンで使ってくれ」と思っていたに違いない。

 その感情をぶつけるかのように、前線から激しいプレスを繰り返して守備に貢献。攻撃では、開始2分でカットインから上田綺世へのスルーパスを送って、上田のPK獲得をお膳立て。51分にも中村敬斗とのパス交換から抜け出して、ゴール前へクロス。上田の2点目をアシストした。
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 プレー以上に、試合後のコメントからも気持ちが伝わってくる。

「戦術どうこうじゃなく、球際だったり、気持ちの部分だと思っていた」
「エンブレムを持って戦っているので、誇りを胸に戦った」

 たとえそれがパフォーマンスだったとしても、チームが悪い状況で自ら奮い立たせて、先陣を切ってチームを鼓舞した姿勢を高く評価したい。そういう意味で、インドネシア戦ではプレーとメンタルの部分で「これぞ10番」の責任を全うした彼がMVPだ。

 選手交代によって断ち切れたのは、チームの悪い雰囲気だけではない。右サイドバックの課題も解消されたことは大きい。

 ベトナム戦でもイラク戦でも、右サイドバックの菅原由勢の軽率なプレーが目立った。この問題が解消されなければ、日本の優勝はありえないと思っていた。それだけに、インドネシア戦で初スタメンの毎熊晟矢がしっかりと安定したパフォーマンスを見せてくれて、正直ホッとしている。

 サイドバックのセオリーは、まずは守備から入ること。何度も言うけど、サイドのバック(=ディフェンダー)は、無闇にボールのあるラインから前に上がってはダメだ。

 常にボールを前で見る、たとえ上がってもボールより前に行かない。センターのバック(=ディフェンダー)がカウンターのリスクを考えず、何でもかんでも上がっていくことを想像すれば、分かりやすいだろう。

 毎熊は菅原よりもポジショニング感覚に優れ、守備意識も高いから、戻りが早い。元々フォワードの選手ということもあって、前の選手がどこで、どのタイミングで欲しいのか理解しているから、パスの精度も良い。オーバーラップを仕掛けるタイミングも菅原より良い。

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 インドネシア戦の35分、毎熊の良さが出た。右サイドから久保建英との連係からエリア内に侵入。ジャンピングキックでクロスを上げた。中村のシュートは惜しくもポストを叩いてアシストにはならなかったが、「ポケット」に入り込む毎熊の判断力とスピードが光った。

 日本代表だけではなく、プロの世界は競争だ。インドネシア戦で巡ってきたチャンスを掴んだ毎熊を、次のバーレーン戦でもスタメンで起用すべきだ。

 菅原にしてみたら、ずっと掴んできたレギュラーの座を外されたら、大きなショックを受けるだろう。そう考えると、2人の人生が懸かっているとも言える森保さんの次の一手はすごく重い。

 しかし、選手はずっと“勝ち負け”でサッカー人生を歩んでいる。一度スタメンから外されたことで、メンタルが強くなってさらに成長していくケースもある。

 ただ、選手が成長することとチームが勝つことは別の話だ。現状、チームが勝つには菅原ではなく、毎熊を選ぶのが最適解だ。

 次のバーレーン戦は、インドネシア戦から中6日で挑む。リフレッシュもできた。戦う姿勢も取り戻したし、右サイドバック問題も解消した。負けるイメージはない。

 グループステージで苦戦したとはいえ、アジアの中では、日本が一番強いと思われているはずだ。2位通過になったこと自体が恥ずかしい事象ではあるが、優勝してこの汚点を消したい。
 
 今一度、「強い日本」を示すためにも、ベストメンバーで戦うべきだ。私が監督ならば、バーレーン戦のスタメンはこうなる。

GK:鈴木彩艶
右SB:毎熊晟矢
右CB:板倉滉
左CB:冨安健洋
右SB:伊藤洋輝
右ボランチ:守田英正
左ボランチ:遠藤航
右MF:伊東純也
左MF:堂安律 
トップ下:久保建英
FW:上田綺世

 三笘薫が怪我から復帰していれば、様子を見て後半から起用する。その場合、2列目のメンバーを入れ替えたい。三笘が左MFに入って、トップ下は久保、右MFは堂安となる。右サイドの一番手は伊東かもしれないが、同時起用によって生きる久保と堂安のセットを優先したい。

 バーレーン戦のノルマは「失点ゼロ」。グループステージの全試合で失点しているが、この課題も払拭して、その後に対戦する可能性が高いイラン、カタールとの決戦に臨むのが理想のシナリオだ。

 インドネシア戦後での堂安の言葉どおり、ここからは「気持ちがすべて」。最終的には、メンタルの強いチームが優勝するはずだ。アジアカップで気持ちの強さを出して勝ち上がらなければ、ワールドカップで勝てるわけがないのだから。

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なお、本田泰人氏のインドネシア戦の採点は以下のとおり。
※採点は10点満点で「6」を及第点とし、「0.5」刻みで評価。

GK
23鈴木彩艶/5.5

DF
16毎熊晟矢/7
22冨安健洋(82分OUT)/6
(→24渡辺剛/6)
15町田浩樹/5.5
19中山雄太/5
 
MF 
6遠藤航/6
20久保建英(82分OUT)/6
(→26佐野海舟/6)
17旗手怜央(68分OUT)/6.5
(→8南野拓実/6)
10堂安律(86分OUT)/7 MOM
(→14伊東純也/6)
13中村敬斗(68分OUT)/6
(→25前田大然/6)

FW
9上田綺世/6.5 

監督
森保一/6

【著者プロフィール】
本田泰人(ほんだ・やすと)/1969年6月25日生まれ、福岡県出身。帝京高―本田技研―鹿島。日本代表29試合・1得点。J1通算328試合・4得点。現役時代は鹿島のキャプテンを務め、強烈なリーダーシップとハードなプレースタイルで“常勝軍団”の礎を築く。2000年の三冠など多くのタイトル獲得に貢献した。2006年の引退後は、解説者や指導者として幅広く活動中。スポーツ振興団体『FOOT FIELD JAPAN』代表。