三笘薫が待望の戦列復帰を果たした10日のプレミアリーグのトッテナム戦。日本代表のエースのフル出場もむなしく、ブライトンは1−2で逆転負けを喫した。

 前半に、ペナルティエリア内でダニー・ウェルベックが倒されて獲得したPKをパスカル・グロスが決めて先制するも、後半途中にパペ・マタル・サールのシュートで被弾。さらに試合終了間際に途中出場のブレナン・ジョンソンに決勝ゴールを奪われ、スパーズ(トッテナムの呼称)に勝点3を献上した。
 
 善戦したシーガルズ(ブライトンの愛称)にとっては残酷な結果になった一方で、日本代表の一員としてアジアカップに参戦し、さらにそれ以前からの怪我の期間を含めると1か月半以上チームを離脱していたウインガーの溌溂としたプレーは、ブライトン首脳陣にとって朗報となったのは間違いない。

 アウェーでのこの試合では、序盤からシーガルズは積極的に定位置の左サイドに配された26歳の走力を活用する。10分には、過去6週間にわたって見ることのできなかった衝撃のシーンをブライトンサポーターは目の当たりにする。

 自陣にいたDFルイス・ダンクからのクリアともロングパスともいえるボールが前線に放り込まれると、三笘は見事にファーストタッチで足もとに収め、敵のDFデスティニー・ウドジェのファウルを誘発した。
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 22番の特徴として、ファーストタッチが良い時は、そのほかの面でも調子が良い傾向がある。ピッチ上にいたのは、フレッシュでデンジャラスな三笘。それこそが、直近のリーグ戦18試合で4勝しかしていないチームに必要な存在である。

 21分には再びパスが送られ、この際にも簡単にボールを処理して、左サイドバックのぺルビス・エストゥピニャンに渡した。ここでは好機を作れなかったものの、このエクアドル代表との連係プレーは、チームに欠かせない重要なコンビネーションだ。今季のエストゥピニャンは前半戦の大半を怪我で棒に振ったが、三笘の調子が上がらない要素の一つとして、彼がいなかったことが挙げられる。

 エストゥピニャンがオーバーラップしてディフェンダーを引き付け、その間に三笘がマジックのようなプレーを繰り出す。もしくは三笘がダミーの役割をこなし、ボールを持った背番号30がそのまま左ウィングを駆け上がる場面もある。2人と対峙するディフェンダーたちはどのようなプレーが飛び出すか迷い、翻弄されるのである。

 迎えた29分、三笘の唯一のシュートシーンが訪れる。アダム・ララーナからのスルーパスに反応した三笘がボックス内に持ち込み、右足のアウトサイドでシュート。だが相手GKグリエルモ・ビカーリオの好セーブに阻まれて追加点とはならなかった。
 前半の三笘は攻守にチームに貢献し、秀逸なパフォーマンスだった。しかし後半になると、スパーズ守備陣を崩す機会が減少する。ディフェンダーを困惑させようとインサイドに走ったり、サイドラインに張ってみたりしたものの、なかなか好機を作り出すことができなかった。逆にアンジェ・ポステゴグルー監督が率いるチームは、ブライトン攻撃陣を抑え込み、自陣に踏み込ませることを許さない。

 61分には、ついにスパーズが同点ゴール奪取に成功する。だがここから三笘は一つギアを上げて、トッテナム守備陣に迫っていく。同点弾の数分後には、敵の右サイドバック、ピーター・ポーロを抜いて中央にクロスを送ろうとしたものの、精度が低く味方には渡らなかった。

 さらに72分には、グロスからのスルーパスで前線に飛び出し、再びポーロを置き去り。完璧なカットバックを中央に送り込んだが、途中出場したアンス・ファティのシュートは惜しくもポスト右へと外れた。その2分後にはポーロの股を抜きスタジアムを沸かせたが、好機を演出することは叶わなかった。
 
 この試合では、ブライトンのダグアウトにロベルト・デ・ゼルビ監督の姿がなかった。歯の治療のために自国のイタリアに帰っており、歯科医から「絶対安静」というお達しがあったため、試合が行われた時点ではイングランドに戻れなかったのである。

 指揮官を欠いたブライトンのコーチングスタッフだったが、難敵トッテナムを相手に勝利は叶わなかったものの、勝点1を獲得できれば御の字と考えていたはずだ。

 しかしながら、激しい戦いの末に目前まで迫った1ポイントは、シーガルズの手中のなかからするりと抜け落ちていく。アディショナルタイム6分、ソン・フンミンを中心とした切れ味鋭い速攻からブライトンの守備を崩して、ウェールズ代表のジョンソンが決勝点を奪うのである。
 
 受け入れがたい結果で、なんとも厳しい現実である。それでも、だ。この試合のチームには、ポジティブな面が多かった。

 今季は波に乗り切れない三笘は、彼が持つクオリティを誇示し始めており今後が楽しみになってきた。左サイドでは、長期離脱から復活したエストゥピナンとうまく連携が取れており、さらにファティの復活も吉報である。

 三笘が「一緒にプレーしやすい好選手」と認めるスペイン代表の気鋭。ファティとは、特にシーズン当初は力強いパートナーシップで、見ているものをワクワクさせてくれたものだった。さらに、ここにきて、けが人のリストは大幅に短いものになっている。

 次節シェフィールド・ユナイテッドで勝利を収めることができれば、それを契機に一気に順位表を駆け上がる可能性も十分にある。目標とするチャンピオンズリーグ出場権獲得も、まだ諦めてはいない。

取材・文●リッチー・ミルズ(ブライトン番記者)
翻訳●松澤浩三

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