これまでのレポートで指摘してきた通り、タケ・クボ(久保建英)がアジアカップから帰還した後も、レアル・ソシエダがゴール枯渇から回復しなかったのは尋常なことではなかった。

 モダンかつ勇敢、アグレッシブかつ攻撃的なソシエダのサッカーはチャンピオンズリーグ(CL)グループステージで炸裂し、欧州を驚かせた。タケは競争力を維持しながらも、自身のいない間に突如として魔法を失ってしまったチームが本来の姿を取り戻す大きな希望だった。

 その尋常でない攻撃面での失速は、クラブ史上ワーストに並ぶ公式戦5試合連続無得点という記録に象徴されている。だからこそ、マジョルカ戦でチームのこの長い砂漠の旅に終止符を打ったのが、他でもないタケだったのは決して偶然ではないはずだ。
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 タケはソシエダでこれまで公式戦73試合に出場し、16得点をマーク。不思議なことにその全てはラ・リーガでのもので、15試合に得点している。さらに特筆すべきはそのほぼ全てがチームの勝利に結びついていることだ。

 かつて通算試合出場数とゴール数で外国人としてクラブの歴代最多を誇るダルコ・コバチェビッチが得点すると、ソシエダがほぼすべての試合で勝利を収めるというジンクスが存在した。タケの場合も同様で、彼が得点した15試合のチームの成績は14勝1分け。勝点45点中43を獲得している。決定力に磨きをかけることを目標に掲げてソシエダに加入したタケは、フィニッシュの局面でもチームに欠かせない選手になっている。

 逆にマジョルカは以前所属していた選手が古巣のホームスタジアムに帰還すると、得点するケースが多いというサッカー界に横たわる「元選手ルール」の犠牲になった。ソシエダにとって開始早々に先制を許す最悪の立ち上がりになっただけに、まさに値千金のゴールだった。

 序盤からタケは攻撃を引っ張った。12分、相手DFを引きつけ折り返したが、マルティン・スビメンディのシュートはGKプレドラグ、ライコビッチに阻まれた。35分、相手選手に囲まれながら、高速ドリブルで中央を脱け出すも、ボックス内に進入したところで止められチャンスは潰えた。
 
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 待ちに待った瞬間が訪れたのは、その3分後だった。イゴール・ズベルディアからボールが渡るとそのままドリブルで加速。ボックス内に入り込み左足を振り抜くと、低弾道の鋭いシュートがGKプレドラグ・ライコビッチの手を弾いてゴールネットに突き刺さった。

 ソシエダにとって実に512分ぶりのゴールだった。古巣のファンに配慮し、タケはゴールを祝わず謝罪した。
 
 後半もタケは積極的にボールを要求したが、包囲網が強まり、チャンスを作り出す機会は減った。そんな中でも、82分、スペースにボールを出してボックス内へ侵入しようとしたところをマティヤ・ナスタシッチに手で止められるファールを受け、イエローカードを誘発。そのファーサイドに蹴り込んだFKは、アンドレ・シウバに合わなかった。アディショナルタイムにはゴール左隅を狙う美しい弧を描くシュートを放ったが、わずかに枠を外れた。

 その直後の93分にミケル・メリーノが均衡を破り、ソシエダはアウェーで貴重な勝点3を獲得した。コバチェビッチにまつわるジンクスは継承された。タケが得点すると、ソシエダは勝利を手にし続けている。

取材・文●ミケル・レカルデ(ノティシアス・デ・ギプスコア)
翻訳●下村正幸


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