すったもんだの挙句にセビージャは、主戦ウイングのビトーロをアトレティコ・マドリーに引き抜かれた。これにより大幅な戦力ダウンを余儀なくされたのは言うまでもないが、他にもホセ・マリア・デル・ニド・カラスコ副会長が引責辞任に追い込まれるなど、フロントは混乱に見舞われている。

 事の顛末はこうだ。まずは7月4日、スペイン各紙により、アトレティコがかねてから獲得に向けて動いていたビトーロと個人合意に至ったと報じられ、7日になって「移籍が決定的」という言葉が一斉にメディアの見出しを飾った。

 周知の通り、アトレティコは未成年の選手登録における規則違反により、FIFAから今夏の補強禁止処分を言い渡されている。ただし、禁じられているのはメンバー登録で、獲得自体は可能。そのため、契約後に出身クラブのラス・パルマスにレンタルに出し、来年1月に合流させるという手筈で話をまとめつつあった。

 一連の報道により加速したのが、セビージャのビトーロとの契約延長に向けての動き。かねてからホセ・カストロ・カルモナ会長が「交渉には応じない。獲得を望むなら契約解除金(3570万ユーロ=約45億7000万円)を用意する必要がある」と明言していたように、クラブにとって不可欠な戦力だったからだ。

 そして10日、セビージャは「ビトーロとの契約を22年まで延長する」と発表。ホセ・カスロト会長は喜びを隠さず、こう語ってみせた。

「ここ数日、彼が新シーズンに着るユニホームの色について様々な話があった。そして彼は白と赤のそれを着ることになった。合意に至って本当に嬉しく思う」

 これで一件落着と思われたが、事態は急展開を迎える。翌日になって、交渉決裂の可能性が『マルカ』紙や『ムンド・デポルティボ』紙などに報じられるのだ。そして迎えた12日、アトレティコがビトーロと5年契約を締結したことを正式発表した。

 実は10日のセビージャの声明は、翌日に予定されていたビトーロ本人の正式サインを待たずしてのフライングでの発表だった。ここに付け込んだのがアトレティコで、契約解除金を工面(現地メディアはビトーロ自身が支払ったと報じているが、後にアトレティコが工面する模様)するとともに、高額の年俸(800万ユーロ=約10億円との報道も)を提示し、一気に交渉をまとめ上げたのだった。13日にはラス・パルマスへの半年間のレンタルも正式に決定した。

 ホセ・カストロ会長はビトーロに対して怒り心頭の様子で、「彼は私にメッセージを送って合意すると伝えてきた。代理人、父親とも合意していた」と明かすとともに、「クラブとファンへの敬意を欠いた」などと痛烈に批判した。

 また、ビトーロの契約延長を担当していたデル・ニド副会長は、騒動の責任を取る形で辞意を表明。デル・ニドといえば、2002年から13年まで会長を務めた父親のホセ・マリア・デル・ニド・ベナベンテらとともに、クラブの発展に尽力してきた功労者のひとり。それだけに、クラブ関係者やファンの間には衝撃が走った。

 主力選手を手放し、副会長まで失うなど混乱に見舞われたセビージャ。新シーズンの開幕を約1か月後(8月17日)に控えたこの時期のゴタゴタがチームに与える影響は、小さくないかもしれない。そんなセビージャは、7月17日にセレッソ大阪、22日に鹿島アントラーズと親善試合を戦うため間もなく来日する。

文:ワールドサッカーダイジェスト編集部

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