マンチェスター・ユナイテッドやチェルシー行きが本命視されてきたハメス・ロドリゲスだが、まさに“大穴”のバイエルンへの電撃移籍が決まった。


 レアル・マドリーで居場所を失い、ブラジル・ワールドカップで得点王に輝いた当時の勢いを失っていたアタッカーは、初参戦するブンデスリーガで復調を遂げられるのか。
 
 その一歩目のステップとして待ち受けているのが、マドリー時代同様に熾烈を極めそうな定位置争いだ。
 
 カルロ・アンチェロッティ監督が「中央でもサイドでもプレーできる」と評するハメスと得意なポジションが重なるのは、トーマス・ミュラー、アリエン・ロッベン、フランク・リベリ、チアゴ・アルカンタラ、キングスレイ・コマンだ(新戦力のドイツ代表MFゼルジュ・ニャブリはレンタルが濃厚)。
 
 昨シーズンの基本フォーメーションである4-2-3-1を継続採用した場合、ハメスを含む計6人が、2列目の3枠を争う構図になる。マドリーでルカ・モドリッチやトニ・クロース、ガレス・ベイルの陰に隠れていたMFが、すんなりとレギュラーの座を奪える保証はない。
 
 定位置確保の可能性がグッと高まるのは、指揮官が4-3-3に再チャレンジした場合だろう。
 
 機能性がいまひとつ高まらず、昨シーズン途中にお蔵入りになった経緯はあるものの、このシステムなら、中盤センターは1アンカー+2インサイドハーフという構成になる。つまり、4-2-3-1のボランチ1枠を削れる分、前述6人によるスタメン争いの倍率が低下するわけだ。
 
 チアゴを2ボランチの一角に据え、ハメスをトップ下に配する手もあるが、崩しと仕掛けの局面で輝く前者を、相手ゴールから遠い位置で使うのは得策ではない。そのことは、智将アンチェロッティが百も承知だろう。
 
 ハメス本人は「どこでもプレーする」と意気込むが、サイドに生きる道を切り拓くのは難しいかもしれない。
 
 確かにハメスは、アンチェロッティが指揮を執っていた2014-15シーズンのマドリーで、サイドハーフを何試合か務めた経験を持っている。しかし、当時のシステムは4-4-2で、タッチライン際を縦に突破する打開力はさほど求められなかった。
 
 一方、バイエルンのウインガーは違う。攻撃に幅と奥行きをもたらす役割を担い、このポジションでは長らく一騎当千の高速ドリブラーが重宝されてきた。
 
 純粋なスプリント能力に関しては特筆すべき点のないハメスが、重鎮ロッベンやリベリを押しのけてまで新たなウイング像を構築するとは考えにくい。
 
 むしろ現実味があるのは、2シャドーの一角としての起用だ。
 
 ドグラス・コスタのユベントス移籍に伴い、現在のバイエルンには生粋のウインガーが3人しかいない。老いてなお盛んとはいえ、ロッベンとリベリに年間を通してのフル稼働は期待しにくく、コマンに関してはパフォーマンスのバラつきという課題を抱えている。
 
 日程が過密になった際に、アンチェロッティがウイングそのものを撤廃し、4-3-2-1や4-3-1-2を導入してもおかしくないだろう。この場合、ハメスはチアゴ、もしくはミュラーとの2シャドーを組み、バイエルンの攻撃に新たな側面をもたらしそうだ。
 
文:遠藤 孝輔