エースストライカーの爆発が止まらない。
 
 プリンスリーグ北信越で帝京長岡と熾烈な首位争いを繰り広げる富山一。その最前線で存在を示しているのが坪井清志郎だ。
 
 柳沢敦(現・鹿島アントラーズコーチ)、中島裕希(現・町田ゼルビア)、高橋駿太(現・ザスパクサツ群馬)、西村拓真(現・ベガルタ仙台)ら歴代のエースたちが背負ってきたナンバー10を担い、なにかから解き放たれたようにゴールを量産している。
 
 7月15日、プリンス北信越・10節の新潟西戦。リーグ自体は11節まで消化しており、この日のゲームは未消化分。この地元開催のゲームで勝利すれば、帝京長岡を抜いて首位に躍り出る状況だった。
 
 これまでの10試合すべてでゴールを決め、14ゴールを叩き出している坪井。ラッシュの口火を切ったのはやはりこの男だった。19分、DF松本楓太のスルーパスに抜け出すと、角度のない位置から、左足のコントロールショットをファーサイドに蹴り込んだ。
 
 エースの一撃で勢いを得た富山一は、36分にMF小森颯がPKを決めて追加点。40分には右CKから小森颯のキックをファーサイドで坪井がヘッドで折り返す。これをFW大竹将吾が強烈なダイレクトボレーで叩き込み、前半で3点のリードを奪って試合を決定付けた。
 
 後半に入っても攻撃陣は容赦ない。49分、左サイドでボールを受けた坪井がカットインから右足でミドルシュートをねじ込むと、62分には大竹が決めて5−0。74分に新潟西の1年生FW釜田恒太朗に1点を返されるも、87分に右CKから坪井が落として、途中出場のFW鈴木登夢が決めて突き放した。
 
 そして締めは、やはり坪井だった。後半アディショナルタイムにドリブルシュートから加点し、ハットトリックを達成。7−1の大勝で首位浮上を果たした。
 
 試合後、坪井は大勝にも浮かれることなく、はっきりとこう口にした。
 
「今年はプリンス開幕前に30ゴールというノルマを自分に課しました。全18試合で1試合1点はもちろん、それプラスということで、30点にしました」
 
 11試合終了現在で、17ゴール。ノルマ達成まであと7試合で13ゴール。いまのペースなら十分に達成可能だ。




 みずから設定した目標が大きいからだろう。坪井はゴール量産にも満足感は得ていない。むしろ危機感を抱いている。
 
「正直、もし相手が強豪と呼ばれるチームが相手だったら、ここまで点が取れているかは分からない。だからこそ、次のインターハイは初戦(1回戦)の日章学園戦をはじめ、勝ち上がれば勝ち上がるほど、全国の強豪と戦える。そこで自分の現在地を確かめたい」
 
 宮崎の日章学園はプリンスリーグ九州で目下3位につける実力校で、2回戦にプレミアリーグWESTを戦う米子北が待ち受ける。ここを突破したとしても、次はプリンスリーグ関西4位の京都橘、さらにその先には青森山田、東福岡、前橋育英といった強豪と当たるかもしれない。かなりの激戦ブロックに組み込まれたのだ。坪井のみならず富山一にとっても真価が問われるトーナメントとなる。
 
 プリンス北信越では10勝1敗。43得点はリーグ最多で、8失点は同じく最小だ。攻守両面で全国レベルのクオリティーを維持している。本大会でも大いに期待が持てる。
 
「選手たちには常に『選手権で優勝をしたチームと比べたら、まだまだ』と言い続けています。あの時のチームは全員の守備に関わる意識が高かったし、動き直しを繰り返しながら、二重三重の攻撃を仕掛けられた。それにどんな相手に対しても全員が集中して戦っていた。今年のチームはまだまだその基準に達していない」
 
 そう語るのは、大塚一朗監督だ。
 
 見据えるのは、あくまで全国での躍進。指揮官とエースに慢心はなく、それは他の選手たちも同じだ。北信越の雄は万全を期して、宮城の地を踏む。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)