はじめまして、東京ヴェルディの橋本英郎です。
 
 これから不定期ではありますが、『サッカーダイジェストWeb』のほうで連載をさせていただくことになりました。編集部の方には「好きに書いてください」と言われてまして、とくに連載タイトルはなく、テーマも毎回フリーです。文章はあまり得意ではありませんが、僕なりの言葉で、サッカー観を知ってもらえればと思います。よろしくお願いします。
 
 まず第1回ですが、僕の本職である「ボランチ」について書いてみたいと思います。
 
 スタジアムで観戦する際、みなさんはどんなふうに「良いボランチ」を見定めますか? これはあくまで個人的な見解なんですが、僕なりの見極め方をお伝えしたいと思います。
 
 サッカーではよく、グラウンドを3つのゾーンを分けて考えます。
 
 1つ目は、自分たちのゴールのエリア、点を取られないように守るゾーン。これを『ゾーン1』とします。
 
 2つ目が中盤エリア、真ん中のゾーンを指します。『ゾーン2』。
 
 で、3つ目が相手のゴール前。『ゾーン3』です。
 
 この各ゾーンにおいて、「これができれば巧いボランチ、頭を使っているボランチ」と言えるプレーがあります。それぞれのゾーンごとに分けて、説明したいと思います。
 
 それでは『ゾーン1』から見ていきましょう。
 
 このゾーンでは相手が点を取りに来るため、守備力が求められます。観客として観て分かりやすいのは、球際のところであったり、1対1でボールを持っている選手と対峙した場合、そのボールを奪えるかどうかのプレーになります。
 
 例として挙げるなら、セレッソ大阪の山口蛍選手のプレーが大変分かりやすいと思います。彼はボールホルダーに対して素早くアプローチをし、1対1の状況を作るのが得意で、相手との距離を上手く詰めることによって、ボールを奪いやすくしています。
 
 このゾーンにおける僕なりの名ボランチの定義はこうです。サイドから上がってくるセンタリングに対して、センターバックがクリアできない場合、そこにしっかり対応できているか。あるいはキーパーが取りにくいミドルシュートのコースや、クロスを上げられたくないゾーンを事前に察知して、未然に防ぐ動きができているか。その意識が高い選手が、良質なボランチだと思っています。
 
 簡単に言えば、センタリングが上がってきた際にセンターバックではなくボランチがクリアしている。サイドバックやウイングバックが交わされたあと、クロスを上げられそうになった時にしっかりボランチがブロックしている。そんな時に僕は、「お、いいプレーだな」と感じます。
 
 加えて、ボール奪取したあと、カウンターアタックに移る切り替えのところで、攻撃の起点として1つ目のパスの選択肢を多く持っている、ゴールに直結できるプレーができれば、なお質の高いボランチだと思います。
 
 次に『ゾーン2』。
 
 よくボランチは「ポジショニングが大事だ」と言われますが、そもそも良いポジショニングとはどういうものなのでしょうか。
 
 名ボランチは、攻撃時にサイドや前線に、効果的にボールを散らします。このプレーが得意なのが、ガンバ大阪の遠藤保仁選手。誰が見ても分かりやすいと思います。守備においてボランチに問われる資質は、前線からのプレスを促し、ディフェンスラインと前線との距離感をコンパクトにまとめられるかどうかです。ともに的確なポジショニングがなければ、実現しません。
 
 試合を観ていて、『ゾーン2』のエリアでボールがよく奪えている時。たとえボランチの選手がボールを奪っていなくてもサイドバックやウイングバック、前線の選手が上手くボールが奪えているなら、それはボランチがしっかり仕事をこなしている証です。ボランチの良い声掛け、良いポジショニングがあればこそなのです。
 
『ゾーン3』で観るべきは、相手ゴール前ですから、決定的なパスを出せる、またはミドルシュート、前線への飛び出し、などが挙げられます。この点は、普段観戦されてる方なら分かる内容だと思います。
 
 なので視点を少し変えて見てみましょう。相手が自チームの攻撃を防いで、カウンターアタックに打って出る際、こちらのボランチはどう対応すべきかです。しっかりと攻撃の芽を摘めるか。ここも良いボランチにとっては重要なポイントです。
 
 この部分ではバルセロナのセルヒオ・ブスケッツ選手や、長野パルセイロの明神智和選手の対応が素晴らしいですね。守備範囲の広さも求められますが、それ以上に相手がどこからカウンター攻撃が仕掛けようとしているのか、攻撃から守備への切り替えのところで、相手チームのクリアやパスを繋ごうとする位置を事前に察知できるかどうかが、大事になります。
 
 以上、3つのゾーンに分けて考えてみましたが、いかがだったでしょうか。
 
 今度スタジアムで観戦する際は、少しボランチの動きにも注意して観てもらえればと思います。新しい楽しみ方が発見できるかもしれません。
 
橋本英郎
 
 
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PROFILE
はしもと・ひでお/19795月21日生まれ、大阪府大阪市出身。ガンバ大阪の下部組織で才能を育まれ、1998年にトップ昇格。練習生からプロ契約を勝ち取り、やがて不動のボランチとして君臨し、J1初制覇やアジア制覇など西野朗体制下の黄金期を支えた。府内屈指の進学校・天王寺高校から大阪市立大学に一般入試で合格し、卒業した秀才。G大阪を2011年に退団したのちは、ヴィッセル神戸、セレッソ大阪、長野パルセイロでプレーし、今季から東京ヴェルディに籍を置く。日本代表はイビチャ・オシム政権下で重宝され、国際Aマッチ・15試合に出場した。現在はJリーガーとして奮闘する傍ら、サッカースクールの主宰やヨガチャリティー開催など幅広く活動中。Jリーグ通算/425試合・21得点(うちJ1は339試合・19得点/2017年7月18日現在)。173センチ・68キロ。血液型O型。公式ブログは、http://pakila.jp/hashimoto/